ESG投資過熱が招きうるマクロ経済への弊害

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

記者:David Tuckwell @ETF STREAM
URL:https://www.etfstream.com/news/11591_esg-etfs-promote-job-killing-and-winner-takes-all-capitalism-study-finds/
掲載日:5月28日

ニュース内容

    • ESG ETF(訳者注:環境、社会、企業統治の面で評価の高い企業に広く投資する投資信託)はここ数年で好成績を残しており、多くの倫理的投資家が自身の仮説の正しさを検証されたと感じている。高潔であると同時に株式市場で金持ちになることができると、最近の数字は示唆しているようだ。
    • しかし、ESG投資の好成績は、雇用の削減に積極的な企業(訳者注:多くの雇用を抱えない、という文意の過激な書き方と解せられます。)への投資に拠っているということが、INTL FCStone社(Fortune500の米国企業リストのノミネート企業)の調査で指摘された。
    • この傾向は、ESG ETFでよく用いられる、雇用に関するネガティブ・スクリーニングに起因するという。例えば、ESG ETFでは、女性に対して男性と同等水準の賃金を支払っていない場合や、労働組合に対する公正な扱いができていない場合など、労働基準面でのネガティブ・スクリーニングが広く採用されている。このスクリーニングによって、大雇用主が投資先から外されてしまう傾向がある。INTL FCStone社のマクロ経済研究責任者であるVincent Deluard氏は、「従業員がおらず、ロボットとアルゴリズムによって生産が完了しても、ジェンダー間での賃金格差はありません。少数の博士号取得者が研究開発するバイオテクノロジーラボからは二酸化炭素が排出されません。」「ESG投資は意図せずポスト工業化経済の負の側面を拡大する可能性があります。それは、勝者総取り資本主義、独占寡占経済、そして中間層の雇用の喪失です。」「ESGの美徳への固執は人類の怠惰な性質とそぐいません。天使とロボットだけが罪を犯しません。ESG投資家は不本意ながら、人間の居場所がない完璧な世界への道を歩んでいます。」と指摘している。

トークンエクスプレス社のひとこと

ESG投資の加速と衝突

大変興味深い視点の記事でした。興味深いというのは、この記事の内容に賛同しているという意味ではありません。ESG投資の発展の過程において避けては通れない議題を指摘していると感じました。

2つの論点を見出しました。一つは、ネガティブ・スクリーニングに過度に依存した評価手法は、その評価の目的を正しく達成できず、むしろ部分最適に陥って目的達成の弊害となる可能性がある点。もう一つは、雇用は人間の生活の営みと直結する複雑な社会課題であり、単純化された指標のみで取り扱うことができないという点です。

ネガティブ・スクリーニングのみでは評価目的を達成できない

ネガティブ・スクリーニングだけでは環境、社会、企業統治面で優れた取り組みをしている企業を見つけ出せません。また、今現在取得しやすい定量的な数値だけを利用した評価では、これからの「変化の期待値」を読み取ることができません。評価はその利用目的があるはずであり、ESG投資の場合には今後の伸びしろを持つ企業に、ESG投資によってリソース供給をすることが目的であるべきではないかと私は考えます。それには、現状の達成度の評価、それもネガティブ点のチェックだけでは不十分です。

雇用は数字の問題ではない

雇用の問題は、それが単なる数字の問題ではなく、その数字の裏側に人間の尊厳や労働への価値観等、社会の根源的な課題があるために単純に取り扱うことができません。国家の富の指標としてGDPを取るか、雇用量を取るかという論点は、経済政策検討、例えば企業の国際展開に係る政策を検討する上において、答えの出ない問いです。本日ご紹介した記事は雇用量に最大の価値を置き、生産性には次点をつけています。しかし、雇用が多くあっても、生産性の低い仕事に就かざるを得ない人がいる社会は、果たして幸福な社会と言えるでしょうか。

本日ご紹介した記事は、昨今注目を集めるESG投資の今後の発展において避けることのできない論点を提示しているという意味で、価値ある記事だと思います。

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