欧州委員会が着々と進める「持続可能な投資」規制と懸念の声

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

記者:Julie Becker @DELANO(ルクセンブルクのメディア)
URL:https://delano.lu/d/detail/news/esg-reporting-funds-far-and-fast/210598
掲載日:5月29日

ニュース内容

    • 新型コロナウイルスの危機は、持続可能な成長アジェンダへの投資を推進するというEUの意思決定者の欲求を高めたようだ。彼らの望みは、様々なレベルの持続可能性報告を課すことで、企業や投資家に環境に優しく、より社会的に有益な意思決定をするように刺激することである。
    • 2018年以降、EUの非財務報告指令(Non-FinancialReporting Directive, NFRD)を通じて、500人を超える従業員を抱える企業に、環境、社会、企業統治(ESG)の課題への対処・管理方法についてさまざまな開示を行うことを求めてきた。同様のアプローチが、持続可能な金融情報開示規則(Sustainable Finance Disclosure Regulation, SFDR)の下で金融ビジネスと金融商品にも適用されている。ここでも、500人を超える従業員を抱えるすべての資産運用会社と年金基金は、ESG投資戦略がない場合でも、組織レベルのESG開示を行う必要がある。SFRDは現在パブリックコメント中であり、欧州委員会はこれらの規則と技術基準を12月に最終決定する予定で、第1フェーズの実行は2021年3月10日に予定されている。
    • 2022年には、現在欧州委員会が取り組んでいる投資分類システムまたは「分類体系」の登場により、さらに高度なレイヤーが追加される予定だ。 ESG投資戦略を持つ資産運用会社は、この分類体系に適合する投資の割合を開示するか、ファンドがこれらの要因を監視していないことを示す免責事項を発行する必要がある。また、ESG投資のベンチマークとランキングシステムがどのように作成されるかについて開示するための低炭素ベンチマーク規制もある。
    • 一方で、グローバルな業界を代表するオルタナティブ投資管理協会は、持続可能性が重要であるとしつつも、それが常に最も重要な懸念ではないことを警告し、「オルタナティブ投資戦略の多様性と異質性を考慮に入れるべきです」と述べた。言い換えれば、投資市場は起業家がアイデアを実現するために必要な資金を提供する際、ESG政策の過度の関与がこのプロセスを妨げる可能性があるとしている。

トークンエクスプレス社のひとこと

勢いに乗る欧州委員会の持続可能投資の推進

持続可能な投資(Sustainable financing)の推進に関し、行政がアクションを起こすのに今ほど好都合なタイミングはありません。欧州(EU)は以前から持続可能投資の推進に取り組んできましたが、新型コロナウイルスの流行をもって世間がESG投資への関心を高める中で、欧州委員会(欧州連合(EU)の中の政策執行機関)は進んだ価値観をもって先進的な取り組みをしている行政機関として、ソフトパワー(軍事力や経済力とは異なる、文化や価値観、政策の魅力で国際社会からの信頼や発言力を獲得する力のこと)を高めています。

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(本ブログ5月12日記事)

本日ご紹介した記事では、その欧州委員会の取り組みの軌跡と今後の方向性や論点について上手くまとめられています。

民間側の懸念の存在

記事の中で私が注目したのは、世界的な組織であるオルタナティブ投資管理協会(*)が、持続可能性に配慮した投資が重要だと認めつつも、それが常に最重要な懸念ではなく、「オルタナティブ投資戦略の多様性と異質性を考慮に入れるべき」と意見表明をしたことです。オルタナティブ投資は、伝統的な株や債券への投資とは異なり、多様な投資対象や投資アプローチを取るものなので、ESG投資が正義、というような価値観とその勢いに対し懸念の表明をしたのでしょう。

大企業と金融への開示規制は政策意思を実現する宝刀

欧州委員会は大企業や大規模な投資主体に対して、開示義務を設けることで、持続可能な投資を促進しようとしています。情報開示ルールの規制というのは、行政側にとっては、自らの財政を傷めることなく社会を行政にとって好ましい社会を実現することができる手法です。持続可能投資に対して追い風が吹いている今だからこそ、その力の使い方に慎重になる必要があります。

持続可能投資のうち、特にESG投資には、非財務面での投資先のリスク対応状況を、投資時に考慮すべきという考え方がありますが、そのリスク対応の方法として多様性の確保を善とする思想があります。そうした中で前述のオルタナティブ投資管理協会が出した声明は興味深く、勢いに乗る欧州委員会の持続可能な投資の推進が、ESG投資こそ是であるという、特定の価値観に固執した強引なものになるのではないかという心配を市場プレイヤーに与えているという、多様性を善とする政策理念と矛盾するような、皮肉な状況が生まれつつある実態を示してます。

(*)オルタナティブ投資:上場株式や債券といった伝統的資産と呼ばれるもの以外の新しい投資対象や投資手法のこと

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