米国労働省の従業員年金給付制度新規制、議論の深まり

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、弊社の最近の考えをご紹介します。

発端から3ヶ月弱経過

本ブログでも3回ほど取り上げてきました、米国労働省の退職基金の運用に係る新規制案。ESG投資が盛り上がる中での新規制で、また近く大統領選挙もあるなかで、共和党保守派に支えられるトランプ政権による政治的意向を汲んだ動きなのではないかという想像に基づく疑いの目を向ける人も多く、ウェブメディアを賑わしています。

関連記事
米国労働省の年金基金運用新規制:規制反対派の意見(SSGA)
(本ブログ8月3日記事)

労働省従業員給付保障局ニューヨーク地方事務所が、いくつかの退職基金に調査の意向を伝えたのが本年5月22日。そこから3ヶ月弱が経過し、本件に関する議論も深まってきました。この議論はとても興味深く、注目されるESG投資の課題と論点を示し、今後の方向性を暗示してくれるものです。特に、スタンフォード大学や、ハーバード大学等が積極的に考えを表明しており、その道の専門家たちの視点を得ることができて知的興奮を得ることができます。

最近見た中で、いくつかの論点について網羅的に示されていると感じたのは、以下のブログ記事です。

関連外部記事
ERISA AND ESG INVESTING
記者:Bernard S. Sharfman
掲載日:8月17日

「ESG投資」という言葉も分類可能

上記のSharfman氏の記事の中で紹介されていて、私が興味深いと感じたのは、Stanford Law ReviewにてMax M. SchanzenbachとRobert H. Sitkoffが提唱した、「付帯的利益のためのESG投資(”Collateral benefits” ESG)」と「リスク-リターンに基づくESG投資(”Risk-return” ESG)」という分類です。

この分類において、SchanzenbachとSitkoffは、「リスク-リターンに基づくESG投資」である限りにおいて、退職基金運用者がESG投資を行うことは認められるという立場を取っています。

ESG投資がもたらすリスクの例

Sharfman氏の記事の中でもう一つ興味深かった視点は、昨今のESG投資の盛り上がりにおいて、ヘルスケア産業およびテクノロジー産業への投資が過大評価される傾向にあるが、こうしたESG的に優れた(もしくはESG的にネガティブ面の少ない)分野への投資の集中は、ポートフォリオの多様化の欠如が生じ、逆にリスク-リターンを悪化させる可能性がある、という点です。

こうした納得感のある論点を提示しつつ、Sharfman氏は、本事案について関係者は労働省の規制変更意図を冷静に読み取り、これまで組み上げられてきた法規制の精神を尊重すべきだと訴えています。

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