グリーンボンド ― ESGにとりくむ企業の打ち手

ESG投資」という言葉を聞いたことがありますか?

ESG投資の「E」「S」「G」はそれぞれ、「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「企業統治(Governance)」の頭文字を意味しています。
ESGに配慮する企業に投資することをESG投資と呼びます。

この記事では、ESGのうち「E」(環境)に特化し、ESG投資を受ける企業の目線で、

      • どうやったらESG投資を呼び込めるの?
      • 具体的なESGの取り組み事例を知りたい!
      • ESG評価を上げるための、取り組みやすい方法はないの?

という疑問にこたえるため、「グリーンボンド」の発行という打ち手を、世界と日本の事例を交えてご紹介していきます。

ESG投資がこれから主流になるらしい・・・とは聞くけれど、漠然としていて自社ビジネスでどのように活かせばいいのかわからない、という方に読んでいただきたい内容です。

目次

  1. ESG投資とグリーンボンドの市場規模
  2. ESG経営としてのグリーンボンド発行
  3. 投資家は何を見ているのか?
  4. まとめ

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1. ESG投資とグリーンボンドの市場規模

グリーンボンド(英語でもGreen Bonds)とは、環境配慮事業に使途を限定して発行する債券のことです。この章ではまず、ESG投資グリーンボンドそれぞれの市場規模はどれくらいなのか?今後の成長が見込めるのか?について説明します。

ESG投資の市場規模

少し前の2016年時点の情報になりますが、世界全体の投資額26.3%ESG投資に分類されています
2016年以降も順調に拡大してきたESG投資。新型コロナウイルス感染症の広がりでESG投資はさらに注目を集めていますので、世界的にこれからどんどん伸びていくでしょう。

では、なぜ世界でESG投資が流行し、急拡大しているのでしょうか?
そもそもESG投資とは何なのか、その魅力を少しだけ振り返りましょう。

ESGの各項目に真剣に取り組む企業、ESG評価が高い企業は、企業経営、事業運営における様々なリスクが低減するため、長期的な成長において優れた企業特性を持つと言われています。そうした企業に投資するESG投資は、長期的な経済的リターンが大きい投資と言われます。

欧米においては、新型コロナウイルス感染症流行前からESG投資は流行の兆しを見せていました。しかし、コロナ流行後においてその人気はさらに拍車がかかっています。
これは、ESG関連銘柄や投資商品が、他の一般的なものに比べて、新型コロナ流行に伴う値下がり、いわゆるコロナショックの影響が少なかった、とする調査結果が数多く発表されたためです。(ただし、ESG関連とそれ以外でパフォーマンスに差はないという、反対の調査結果もあります。)

ESG投資は長期的リターンが大きいという見方が、コロナショックの影響の少なさで裏付けられた、と考えた投資家が多かったのです。
そのため、ESG投資への資金流入は今後さらに増えていくものと考えられます。

新型コロナで見えたESG投資の強さ / 企業経営者は何をすべきか

グリーンボンド市場規模推移

日本国内のグリーンボンド発行件数・総額の推移 (2014-2019)

次に、グリーンボンドについてご紹介します。

日本国内の企業等が発行するグリーンボンドは、2017年頃から発行件数及び発行総額、双方について急激に伸びています。2019年時点で、58件、総額約8,232億円のグリーンボンド債券が発行されています。

グリーンボンド発行プラットフォームの情報をもとに筆者作成。

世界のグリーンボンド発行総額の推移 (2007-2019)

世界では、2013年頃から発行総額が徐々に増加しています。2019年時点では、総額2,575億米ドル (1ドル=105円換算で、約27兆円)のグリーンボンド債券が発行されています。

グリーンボンド発行プラットフォームの情報をもとに筆者作成。

ESG投資とグリーンボンド、どちらの市場もかなりのスピードで成長していて、今後も拡大を続けていること、企業にとっては無視できない資金獲得方法になっていくことを理解して頂けたかと思います

2. ESG経営としてのグリーンボンド発行

前章では、ESG投資もグリーンボンド市場も、かなりのスピードで成長していることを感じてもらえたかと思います。本章ではいよいよ、自社へESG投資を呼び込む手法としてのグリーンボンドを、より具体的に解説していきます。

      • グリーンボンドとESG経営の関係?
      • グリーンボンド発行の事例って?【事例6社紹介】
      • グリーンボンド発行のデメリットは?

という疑問に、こたえていきます!

グリーンボンドとESG経営の関係?

ESG経営で無視できないESG評価、その評価基準とは?

ESG投資を呼び込むためのESG経営の基準として「ESG評価」というものがあります。ESG評価が高い企業には、ESG投資が集まります。
では、ESG評価はどのような基準で評価されているのでしょうか?環境対策の点では、CO2排出量の削減などが最初に思いつくかもしれませんが、評価基準はそれだけではありません。

現在のところ、全世界でESG投資が成長しているにもかかわらず、どのようにESGに取り組む企業を評価するのかについての統一基準はありません。大手の格付機関が独自に決定して発表する評価に左右されてしまっているのが現状です。
しかも、格付機関はそれぞれの評価基準を公開しておらず、各機関の格付結果の相関性は6割程度にとどまるという研究もあります。
この現状を憂いて、統一された評価基準の必要性が叫ばれていますが、道のりは平坦ではないでしょう。

ESG投資の世界では「リンゴとオレンジ」の比較に苦労

グリーンボンドはESG経営の手法のひとつ

他方、グリーンボンドは、グリーンボンド原則に則って、様々な情報を公開しなければなりません。しかし、その原則さえクリアしていれば、何が「グリーン」なのかの定義プロジェクトの内容については発行者が自由に規定できることになっています。

そのため、グリーンボンド原則にのっとって設計し、環境面をアピールすることによって、以下のような幅広い分野のプロジェクトをグリーンボンドの対象にすることができます。

グリーンボンドとして認められるカテゴリ例
      • エネルギー
      • 建築
      • 輸送
      • 水管理
      • 廃棄物管理と汚染防止
      • 土地利用、農業、林業などの自然資産
      • 産業とエネルギー集約型の商業
      • 情報技術と通信(ICT)

上記に限らず、環境への負荷低減や環境にポジティブなインパクトを与えるような事業であれば、自社事業の中で自由度高く定義できるのです。

グリーンボンドは、企業がESGに取り組む手段として着手しやすい

上記のとおり、ESG投資にはまだ統一された評価・格付基準がありません
それに対して、グリーンボンドは、「グリーンボンド原則」というかなり細かい規則によって、その透明性を担保する仕組みが整っています。
投資家がESG投資をしたいと思っても、格付機関が発表する企業のESG評価を信用できない場合、既にある程度の信頼性が確立され、リターンも定義されているグリーンボンド債券の購入を選択する可能性は高いといえます。
あとで説明するとおり、手続き的なコストはかかりますが、正当に評価される手段が整っているグリーンボンド債券の発行は、企業経営者にとってESGを経営に取り入れる手段として手軽で有効なものだと言えます。

グリーンボンド発行は効率的?

グリーンボンド発行が、ESG投資を呼び込むための手段として取り組みやすそうであると感じていただけたでしょうか?
ここからは具体的に、国内外における発行事例グリーンボンドのデメリットを見ていきましょう。大企業だけでなく中小企業にとっても、グリーンボンド発行がESG経営の一つの打ち手として効果的・効率的であるとを感じてもらえるかと思います。

グリーンボンド発行事例

グリーンボンドの発行事例を調べると東京都の例がよく出てくると思います。しかし、国や地方自治体の事例は、企業にとってはあまり自社ビジネスへの応用が効きませんよね。
ここでは、企業によるグリーンボンド発行事例をご紹介します。

国内大企業による数十~百億円単位のグリーンボンド発行事例
    • 日立造船
      規模:50億円
      使途:CO2排出量の削減効果が認められるごみ焼却発電施設にかかる資材購入等の費用としての運転資金
    • 三菱地所
      規模:200億円
      使途:「東京駅前常盤橋プロジェクト」A棟建設に関連する支出
国内中小企業における数億円単位のグリーンボンド発行事例
海外事例
    • (米)Starbucks
      規模:5千万米ドル (2016年発行時)
      使途:スターバックスの環境・社会基準を満たしたコーヒー豆の調達、農家への融資等
      ※現在スターバックスは、グリーンボンドに代わり、サステナビリティ・ボンドを発行。
    • (仏)HSBC France SA
      規模:0.38億ユーロ
      使途:エネルギー効率関連事業(ボイラー、ラジエーター、給湯器、太陽熱、コージェネレーション、再生可能エネルギー等)

ひとめで環境対策とわかりやすい使途だけでなく、三菱地所の例のように、あるプロジェクトの環境対策関連支出だけに使うこともできます。スターバックスの例では、原材料の調達にすら利用しており、自社ビジネスの根幹に関わる支出も、設計の仕方次第ではグリーンボンドの対象にできることが分かります。

このように、資金使途は割と自由であること、さらには意外と小規模でもグリーンボンドを発行できることがお分かりいただけましたでしょうか?

グリーンボンド発行のデメリット

これまで、グリーンボンドのメリットをみてきましたが、デメリットはなんでしょうか?

まず、あたりまえですが調達した資金は調達時に計画した「グリーンプロジェクト」にしか使えません。そして、グリーンボンドの発行及び管理には追加コストがかかります。

グリーンボンドを発行するためには、上述したグリーンボンド原則(GBP)を遵守する必要があります。それには、事務手続きや、外部評価、外部報告などのコストがかかります。

ESGの取り組みを行っていることを簡単にアピールできるメリットとこれらのコストをどう判断するかで、グリーンボンド発行に手を付けるか分かれるところでしょう

3. 投資家は何を見ているのか?

ネガティブ・スクリーニング

ESG投資において、ESG投資の適格性を評価する統一基準はないと説明しましたが、それでは投資家はどのようにESG投資をおこなうのでしょうか。

ESG投資にはいくつかの基本的なアプローチはすでに存在します。
中でも、ネガティブ・スクリーニングは必ず行われるといっても過言ではありません。ネガティブ・スクリーニングは、たばこ、アルコール製品、ポルノ、ギャンブル、動物実験、化石燃料、原子力発電などに関連している場合に、投資対象外にするものです。
つまり、企業としては、どんなにESG対策に取り組んでも、上記要素がある場合にはESG投資を呼び込むのが難しくなってしまいます。

財務リスクとグリーンボンド

投資家目線では、気候変動による中長期的な財務リスクに対し、グリーンボンド投資を行うことでリスクヘッジにも繋がると考えられています。また、グリーンボンドは債券ですから、評価基準と投資リターンがはっきりしているため、ESG投資の中では納得感をもって投資しやすいです。グリーンボンドはプロジェクトベースで発行されるため、経済状況や株式市場との価格連動性が低いという考え方もあります。

したがって、分散投資によるリスク低減策としても有効と言えます。自身のポートフォリオの中長期的なリスクを抑えたいと思っている個人・機関投資家はグリーンボンド債券を積極的に評価するのです。

グリーンボンドを取り扱う際の留意点

グリーンボンドは取り組みやすいといいましたが、注意しなければならない点もあります。

グリーンウォッシュという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

実際は環境配慮型ではなかったり、調達資金が適正に環境事業に充当されていなかったりするグリーンボンド債券をグリーウォッシュ債券と呼びます。

軽視できないESG投資の「グリーンウォッシング」:韓国の事例

グリーンボンド原則の一部に定められている「グリーンボンドガイドライン」は自主的で、法的拘束力や罰則はありません
そのため、環境対策のための活動のための債券として募集しておきながら、実際にそうではない活動に資金を使うといった事例もでてきてしまいます。

自社がグリーンボンドを発行した場合、グリーンウォッシュをしていないと外部に示し信頼を得るためには、発行時の外部評価結果だけでなく、対象事業の進捗状況など、投資家が安心できる材料を、ウェブ上などで高頻度タイムリーに発信することが重要です。

報告書関連は年刊のことが多いですが、低コストで頻繁に発行できるプレスリリースなどを活用して情報を提供することで、よりタイムリーに自社の取り組みを評価してもらえます。
その際、うまくいっていない部分についても公開し、更新するたびに改善しているという変遷を見せることで、長期的目線で検討している投資家によりアピールできます

まとめ、もっと知りたい人は…

ここ数年で急拡大しているESG投資市場に流れている資金を、自社に取り込むための手段の一つとしてグリーンボンドを紹介しました。

ESG評価に比べて、使途とリターンがわかりやすいグリーンボンドは、環境対策を簡単に始めたい企業にも、ESG投資を行いたい機関投資家にとっても利用価値のある手段といえます。

もっと詳しく知りたい方には、以下のウェブサイトが有益です。

環境配慮を含む、事業の社会的価値を向上させるには

グリーンボンド発行においては、事業における環境負荷低減の見込みの算出や、既存の取り組みにおける効果の測定、およびそうした情報の合理的でわかりやすい開示が必要となります。トークンエクスプレス株式会社では、新たな業務負担なくそれらを実現する方法をご提案できます。ご関心ある方はぜひ「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。