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SDGsの隠れ重要テーマ「金融包摂」と信用金庫

日本でもたくさんの企業がアピールを始めている”SDGs”、あなたの会社では上手く取り組めていますか?

いまや多くの日本企業が、SDGsに貢献する活動を実施し、17のゴールのいずれかに当てはめながら、自社のアピールに使っています。

そのようななか、銀行信用金庫信用組合などの金融業に携わる方々が知っておきたい、国連機関が認める、金融のプロ向けのSDGsテーマがあるのをご存知ですか?

金融機関は、このテーマを使えば、毎日の通常業務の成果を、大きなSDGs貢献として、効率的にアピールできます!本業に関係のない地域ボランティア活動を、自社のSDGs活動として無理にこじつけなくても大丈夫!本記事ではその方法をご紹介します。

目次

  1. 一部の人しか知らないSDGs隠れテーマ「金融包摂」
  2. 「金融包摂」を起源とする金融機関:信用金庫
  3. 信用金庫のSDGs取り組みのあるべき姿
  4. まとめ

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1. 一部の人しか知らないSDGs隠れテーマ「金融包摂」

SDGsとは?

SDGsとは、「持続可能な開発目標」のことを指し、2015年9月の国連サミットで定められた国を超えた世界的な目標です。2030年までに、誰一人取り残さずに、持続可能でよりよい世界にしよう、と掲げており、17のゴールが設定されています。

参考資料:
SDGsとは?(外務省ウェブサイト)

SDGsの17のゴール

17 goals SDGs logo

実は、この17のゴール以外に、国連が重視する隠れテーマ「金融包摂」が存在するのです!

SDGsの隠れテーマ「金融包摂」とは?

金融包摂とは、英語ではFinancial Inclusionと言い、以下のように説明されます。

“持続的で責任ある正規の金融機関によって提供される広範な金融サービスに、個人やビジネスがアクセスできる機会を有し、また、利用することができる状態”
(出典:CGAP, New Funder Guidelines, September 2015)

日本は比較的、金融包摂が実現している国です。

日本では、一般的に誰でもゆうちょや銀行で口座をもつことができ、貯蓄ができます。地域の共済や郵便局で入れるかんぽ(簡易生命保険)なども含めて、誰でも保険に入りやすい仕組みがあります。事業を始めたい時などは、いくつか満たすべき要件などはありますが、正規の金融機関からお金を借りる仕組みもあります。

このような状態を、金融包摂が一定程度実現できている状態と言います。

国民の半数以上が金融機関に口座を持てない国は世界に61か国以上

日本とは異なり、世界には一般の人の金融サービスへのアクセスが難しい国が多いです。例えば、15歳以上の国民が金融機関で貯金口座を持っている割合で、その国の金融サービスへのアクセスの簡単さがわかります。日本はその割合が98.2%ですが、統計がとれている範囲でその割合が50%未満の国は、61か国あります。20%未満の国は、南スーダンや中央アフリカ共和国など、6か国あります。統計が取れていない国は17か国以上あります。(世界銀行調べ。)

金融包摂が実現できていない国では、サービスの価格が高すぎたり(銀行口座を開くのに50万円以上の預金を維持することを求める銀行もあります。)、銀行は一般市民が行くところではないと考えられていたり、保険サービスに対する信用がとても低い、などといった状況があります。(そもそも正規の金融サービスが存在できないほど、政情が不安定な国もあります。)

なぜ金融包摂はSDGsの隠れテーマなのか?

金融サービスは、人々の生活にとってとても重要な「社会インフラ」です。金融包摂は社会生活のうえで必須です。それにも関わらずSDGsのゴールの一つになっていないのはなぜでしょうか?
それは、金融包摂が、17のゴールの複数にまたがって関係する社会課題だからです。国連は、その公式ページの中で、「金融包摂はSDGsの8つのゴールにまたがる重要テーマ」と述べています。

参考資料:Financial Inclusion and the SDGs(UDCDF)

17のゴールに含まれていないので、日本においてはあまり知られていない社会課題ですが、特にSDGsに取り組む日本の金融機関は、金融包摂は知っておきたいテーマと言えるでしょう

2. 「金融包摂」を起源とする金融機関:信用金庫

中小企業も市民も融資サービスが受けられるように

日本に様々な金融機関がある中で、信用金庫は、金融包摂の考え方を起源として始まりました。明治時代、日本は資本主義による急速な産業化が進みましたが、その中で株式組織の銀行は、地方で集めた資金を都市部の大企業や土地投機に集中的に運用したため、地域の中小零細企業や市民は自分達の預けた資金を利用できず、地域社会は衰退し、貧富の差が拡大しました。こうした中で、特に融資サービスにおいて金融包摂を実現する組織として信用金庫の前身組織たちが設立されるようになりました。

参考資料:城南信用金庫ウェブサイト

現在の信用金庫のSDGsへのアプローチ

現在、信用金庫(信金)はそれぞれSDGsにどのように向かい合っているのでしょうか。金融包摂の視点は取り入れられているのでしょうか。

2019年3月末における信金の総資産ランキング(出典:週間エコノミストOnline)の上位10信金のSDGsに関する取り組みをウェブ上の情報からまとめると以下のようになります。

総資産順位 信用金庫名 都道府県 SDGsに係る情報掲載 金融包摂をテーマとした言及
1 京都中央 京都 〇(宣言と複数のゴールに紐づけた重点項目の提示) ×
2 城南 東京  〇(ゴール6以外の全てのゴールに具体的活動を紐付け) ×
3 岡崎 愛知 × ×
4 大阪 大阪 〇(宣言と複数のゴールに紐づけた重点項目の提示) ×
5 埼玉県 埼玉  〇(ゴール8,9,11についての具体的活動を例示) ×
6 多摩 東京 × ×
7 尼崎 兵庫 〇(宣言と複数のゴールに紐づけた重点項目の提示) ×
8 京都 京都 〇(SDGs宣言の掲載) 〇(具体的取組についての情報なし)
9 城北 東京 〇(宣言と複数のゴールに具体的活動を紐付け) ×
10 浜松いわた 静岡 〇(宣言と複数のゴールに具体的活動を紐付け) ×

 

上記の表をご覧いただくとわかりますとおり、総資産順位でトップ10のうち、8つがSDGsに関してなんらかウェブ上で公開しています。SDGsの浸透度合いはかなり高いです。

現状の信用金庫のSDGsへの向き合い方としては、

      1. SDGsに取り組むという組織的な宣言を行う
      2. 既存の地域貢献活動 or 今後取り組む活動をSDGsゴールに紐づける
      3. ウェブ上で公表する

というスタイルが一般的だとわかります。

一方で、信用金庫の根源的な役割であった金融包摂という視点を持っている信金はトップ10内には1つしかありませんでした

3. 信用金庫のSDGs取り組みのあるべき姿

closeup.business partners signing a new contract.

本業の役に立つSDGs

信用金庫のSDGs検討において金融包摂がほとんど取り上げられていないのは、単に金融包摂という概念が知られていない可能性が高いです。

しかし、信用金庫の業務の多くの部分で金融包摂の価値観を「再発見」することが可能だと考えます。金融包摂というテーマでSDGsをとらえなおせば、通常業務を行う中でSDGsの8つのゴールにアプローチできる可能性があります。

例えば、金融包摂においては、「誰でもサービスを利用しやすい」という価値が重視されます。都会ではなく地方部を営業範囲とする信用金庫にとっては、物理的にアクセスしづらい地域が営業範囲に含まれている可能性があります。そうしたアクセスしづらい地域にも、支店を置いたり、出張所を設けたりしてその地域の金融基盤を支えている信用金庫もあるでしょう。そうした営業努力は、SDGs上も重要な取り組みであり、積極的に発信すべきです。さらに、もしそうした地域で高齢化に伴う人口減少などが社会課題となっており、既存の拠点の維持が難しくなっている等の経営課題があるならば、デジタルの活用や他拠点からの定期的な訪問への切替等の取り組みを行い、それをSDGsとして積極的に発信していけばいいのです。

また、世界的には、女性や資本を持たない人々が金融サービスを享受しづらいという点も、金融包摂の課題として挙げられることがあります。信用金庫が、女性が経営する地元企業に積極的に融資を行っているのであれば、それもSDGsの成果としてアピールできます。経営者が若い企業への融資でも同様でしょう。

このように、信用金庫にとっても、金融包摂という視点を中心にSDGs戦略を再検討することは、自らの社会的な価値を外に上手にアピール可能となると同時に、経営の質の向上を再点検できるなど、取り組む価値あることだと思います。信用金庫の間で金融包摂という概念がもっと広まってほしいと感じます。

今後さらに重要な金融包摂

また、現状日本では金融包摂は実現されているといえますが、少子高齢化が進行し、格差の拡大が問題視される日本において、金融包摂が今後も維持されるのかには大きな疑問符が付きます。

信用金庫が金融包摂の視点で自らの取り組みを見直すことは、SDGs文脈のみならず、信用金庫の事業の根源価値を再度磨きあげることに直結するものとなりえるのです

まとめ

SDGsにおける国連機関公認の隠れテーマ「金融包摂」についてご紹介しました。そのうえで、この金融包摂の理念を起源とする金融機関の代表例として信用金庫を取り上げました。

信用金庫のうち、総資産規模トップ10のSDGsの取り組みを俯瞰したうえで、SDGsの中でも金融包摂が重視されていることが、まだ信用金庫間でそれほど広まっていない現状について確認しました。

少子高齢化や格差の拡大が問題になっている現代日本においては、金融包摂の観点で社会を見つめ直し、取り組みを見直すことが求められています。信用金庫においては自らの事業が提供する価値を増やし、かつSDGsの観点でアピール可能な要素を獲得する、一石二鳥の成果を獲得できる可能性を指摘しました。

金融機関が顧客提供価値を増加しつつSDGs的にもアピーリングな取り組みを行うには…

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