ガバナンスとは?ESGの”G”ガバナンス(企業統治)を徹底解説!

ガバナンスという言葉を聞いたことがありますか?

聞いたことはあるけれど、実際に何を意味するのかわからない、定義はわかるけれどガバナンスを改善するとはどうすればいいのかわからない、という人が多いのではないでしょうか?

環境Environment)」、「社会Social)」、「ガバナンス企業統治)(Governance)」へ配慮している企業に積極的に投資するESG投資の流行によって、ガバナンスという言葉を耳にする機会が増えてきたと思います。

この記事では、

      • そもそもガバナンスとは何か?
      • ESG投資において、ガバナンスをなぜ改善するべきなのか?
      • 「ガバナンス」の指標にはどんなものがあるのか?

という疑問にこたえていきたいと思います。

目次

  1. ガバナンスとは?
  2. ESG投資とは?注目されている理由は?
  3. ESGの中でガバナンスの位置づけ:日本企業はこれから本格化?
  4. 「ガバナンス」の評価項目事例
  5. まとめ

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1. ガバナンスとは?

一般的なガバナンスの定義

ESG投資における「ガバナンス(企業統治)」の詳細に入る前に、簡単にガバナンスという言葉についてみていきましょう。

ガバナンス(英語ではGovernance)とは、Governという「統治する、支配する、管理する」という動詞から派生している名詞です。知事のことをgovernorといいますね。同じ語源です。

ガバナンスは意味が広く、人が集まってできている集団・組織の統治、支配、管理の意味で使われます。組織内では、どのような方法であれ、個々人の動きを統率しなければいけません。統率が取れている状態のことを「ガバナンスが効いている」などと表現したりします。

企業におけるガバナンスの定義

企業の文脈では、経営者や取締役会、株主など、企業内の様々なグループについて、その権利役割責任定める枠組みを提供するものを、ガバナンスと呼びます。

ちなみに、企業におけるガバナンスは、コーポレート・ガバナンス企業統治)とも呼ばれ、日本証券取引所グループ(JPX)は、

“会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み“

と定義しています。

参照資料:
JPX「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~ 」2018/6/1

“ガバナンス” と “コンプライアンス” の違い

似た概念としてコンプライアンスという言葉がありますが、違いは何でしょうか?
コンプライアンスは、法令順守と訳されることが多いですが、企業が法律や社会的規範に違反しないこと、規則を守ることを意味します。
ガバナンスは、企業が法律を順守する違反しないような管理体制をつくることを指します。つまり、ガバナンスがしっかりしていれば、おのずとその企業はコンプライアンス違反を犯さないという関係になります。

参考資料:
ガバナンスとコンプライアンスの定義と活用法
情報ガバナンス研究室、2018/11/15

2. ESG投資とは?注目されている理由は?

ESG投資の「G」は今日のテーマの「ガバナンス企業統治)(Governance)」です。残りの「E」「S」はそれぞれ「環境Environment)」、「社会Social)」を意味しています。

財務情報だけでなく、これら3分野へ配慮して経営することを「ESG経営」と呼びます。今、機関投資家や個人投資家のあいだで、ESG評価の高い企業に投資をふりむける「ESG投資」が注目を集めています。

ESG投資が注目される理由

ではなぜESG投資が注目されるのでしょうか?いくつか挙げられますが、主要なものは下記3点でしょう。

リスク低減

ESGの3分野に取り組むと、経営における様々なリスクが低減し、長期的な成長が担保されると言われています。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義成長の持続性など優れた企業特性を持つと考えられているからです。

財務リターン

ESG投資の財務的リターンについては諸説あり、一般的な投資と変わらない という研究結果もあれば、高いリターンを得られるという研究もあり、まだ評価が定まっていないのが現状です。

経済的利益以外への関心の高まり

しかし、パンデミックの後押しも受けて、企業が経済的利益さえ追求していればよいという風潮はすたれ、今後、企業の社会的責任への関心がどんどん強まっていくと考えられています。その先駆けとして、ESG投資が注目されているのです。

ESG投資の市場規模、日本における流行の兆し

注目されている、流行していると言われても漠然としていますよね。具体的に数字や公的機関の動きをみていきましょう。

ESG投資の市場規模、通常投資との比率

世界におけるESG投資の市場規模は、欧州及び北米を中心に、かなりの勢いで伸びています。Global Sustainable Investment Alliance(GSIA, 世界持続的投資連合) によれば、2018年のESG投資総額世界約31兆ドルと2016年比で34%増加 しています。 日本では231兆円で2016年時点から306%増で、後追いで増加傾向が加速していると言えます。
2018年時点で、投資額全体ESG投資占める割合は、オーストラリア/ニュージーランドで63.2%、欧州及びカナダで50%前後、米国でも25.7%になっています。日本では2016年の3.4%から18.3%へと2年間で約15ポイント上昇しています。

日本では2018年からGPIFが採用

日本におけるESG投資の火付け役は、年金積立金管理運用独立法人(GPIF) といえるでしょう。GPIFが2015年に「責任投資原則(PRI) 」に署名したことで流れが変わりました。

GPIFは実際、2018年以降、S&Pダウ&ジョーンズのS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数シリーズ 、MCSIのジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 および日本株女性活躍指数(WIN) 、FTSEのBlossom Japan Index の指数を順次採用し、パッシブ運用としてそのポートフォリオに組み入れています。

金融庁が機関投資家の行動規範にESG要素の勘案を導入

加えて、金融庁も機関投資家へ、非財務情報をしっかりと把握することを求めています。2017年には『責任ある投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」を改訂 し、機関投資家に、投資先企業のESG要素を含む非財務情報等の状況を的確に把握することを義務付けました。

このコードの副題が、「投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために」となっていることからもわかる通り、財務的リターンのみで投資先判断をすることは時代遅れになりつつあります。金融庁は今年2020年3月に同コードを再改訂 し、持続可能性(サステナビリティ)への配慮について更に踏み込んで言及しています。

このように、今後の流れは、確実にESG投資に向いていると言えます

3. ESGの中でガバナンスの位置づけ:日本企業はこれから本格化?

「ガバナンス」を最重要視する投資家は約8割

Russel社の調査結果で、82%投資家が自身の投資判断において、「ガバナンス」を最も重要視していることが明らかになりました。この調査では、日本を含む世界中のアセット・マネージャー400名を対象にアンケート調査を実施しています。
「環境」が13%(2019年比4ポイント増)、「社会」が5%(2019年から変化なし)で、新型コロナウィルスの流行により、「社会」の重要性が高まってきた と言われるにも関わらず、ガバナンスが他を大きくつきはなしてトップを占めています。

2020 Annual ESG Manager Survey のデータに基づき筆者作成。

「ガバナンス」が「環境」「社会」に比べて後回しにされやすい理由

投資家がガバナンスに注目しており、企業にその改善期待があることはご理解いただけたと思います。とはいえ、「企業を健全に経営し不正などのリスクを避ける」といわれても、イメージがわきにくいと思います。具体的には「何」をすればガバナンスが改善されたといえ、ESG的に評価されるのでしょうか?

この想像しづらさが、ESGの他の2分野である「環境」や「社会」に比べて、ガバナンスが後回しにされがちである理由のひとつだと思います。ESG経営に積極的な日本の大企業の経営者でも、「ガバナンス面では何に取り組んでいますか?」という質問には、返答に窮してしまうことがあります。

ESG総合評価は☆☆☆なのにガバナンスのみ課題ありとされる大企業3社

ESG要素の開示に積極的に取り組み、とても高い総合評価を受けている日本企業はいくつかあります。
しかし、その中でもガバナンスだけは低い評価を受けている企業があります。以下に、総合評価は素晴らしい(FTSE及びMSCI)にも関わらず、残念ながらコーポレート・ガバナンスだけ評価が低い企業の例をご紹介します。(MSCIのみ個別評価を一般公開)

銘柄コード 企業名 FTSE総合評価 MSCI総合評価※※ MSCIコーポレート・ガバナンス※※※
9437 NTTドコモ※※※※ 4.2 AAA
6367 ダイキン工業 3.9 AA
8267 イオン 3.7 AA

FTSEの総合評価 は、0-5の絶対評価。評価結果は2020年6月時点。
※※MSCIの総合評価 は、同じ業界に属する企業との相対評価でCCC, B, BB, BBB, A, AA, AAAの7段階相対評価。評価結果は2020年6月時点。
※※MSCIのコーポレート・ガバナンス評価は、緑、黄色、赤の3段階絶対評価。評価結果は2020年10月アクセス時点。
※※※※NTTとの合併発表前の情報。

いかがでしょうか?誰もがよく知る大企業ですが、このあとご紹介する評価指標ではガバナンス体制に課題ありとされてしまっています。

コーポレート・ガバナンスは、企業の体制そのものです。変更するのに多額のお金はかかりませんが、組織が大きくなればなるほど、利害関係者の調整が難しいのでしょう。逆に言えば、「E」や「S」の改善に大々的にリソースを割くことが出来ない比較的中規模の企業にとっては、経営層の決断さえあれば取り組むことが出来る、ねらい目の分野とも言えるのです。

実は取り組みやすい?客観的な指標で示しやすいガバナンス

次の章で見るガバナンスの指標は、委員会などの組織の設置、人事や報酬に関係するものが多いです。経営者さえやる気になれば、取り組みやすく、結果が出るのも早く、客観的な数値でも示しやすいという利点があります。

例えば、「社外取締役の割合」「女性幹部の割合」といったものは、●%という数字が1つ出てきて、解釈の余地がありません。「幹部の報酬の計算方法の開示」も、経営者がやると決めれば今すぐにできますね。

例えば「環境」では、「CO2排出量の削減」が分かりやすい指標の事例です。これに取り組むには、サプライチェーンの洗い出し、どの段階でどれだけ削減できるかの調査、実際に削減するプロジェクトを企画・実行など、着手してから結果がでるまでに数年、十数年単位で時間がかかる可能性があります。特にこれまで対策をとってこなかった企業がいきなり取り組むにはハードルが高く、結果が出るまでにより長い時間がかかってしまうでしょう。

もちろん時間がかかるからといって取り組まなくてよいわけではありません。その対応策として、「環境」や「社会」の比較的時間がかかる項目を改善する取り組みと並行して、「ガバナンス」で結果を出し公表することで、自社がESG経営に積極的に取り組んでいることを早期効率的アピールすることが出来ます

4. 「ガバナンス」の評価項目事例

避けては通れないESG格付

それでは、実際にESG投資を引き付けるためには具体的にどんな項目を改善すればよいのでしょうか?
それを知るためには、ESG格付とは何か、どのような格付機関がどのように各企業のESG評価をつけているのかを理解する必要があります。

ESG格付とは

投資家が、ESGの各分野に積極的に取り組んでいる企業に投資をふりむけたいと思っても、個別企業の取り組みをいちいち調べることは出来ません。そこで、ESG格付機関が登場します。主に財務情報に基づく企業の信用格付を行っている会社が、ESG格付という別の格付体系を用意し、企業の取り組みをそれぞれの評価軸にもとづいて評価しています。その評価結果は公表あるいは販売され、その格付に基づいたインデックス投資商品も存在します。

ESG格付機関とは

日本にもESG格付を実施している機関はありますが、基本的には欧米大手信用格付会社が、ESG格付に参入し、その結果を用いたインデックス投資商品などを販売しているのが現状です。

ESG評価結果は信用できるのか

上述の通り、各格付機関が、独自の手法でESG評価を付与します。計算根拠自体は公開されていることも多いですが、計算のもとになるデータの収集は、機械的なものもあれば、担当者によるインタビューなど主観が入る手法もとられています。
複数の格付機関の評価結果を比較し、結果が6割程度しか相関していない とする調査もあり、ESG評価手法の統一の必要性が叫ばれていますが、実現は長い道のりでしょう。

ESG格付の課題についてより詳しくは、こちらの記事参照 。

「ESG格付」「ESGランキング」の課題とESGコンサルタント

課題含みのESG格付、それのみを自社の取り組みの判断基準にするのは本末転倒ですが、各評価項目をみていくことで、自社ガバナンスの改善のヒントを見つけることはできます。

そこで本記事では、代表的な大手ESG格付機関が、「ガバナンス」項目を評価する際に実際に使用している小項目をご紹介していきます。

ESGの「ガバナンス」評価小項目例【海外の格付機関3社】

次の節で日本の格付機関の例もとりあげますが、やはり主流は海外の格付機関です。今回は、数多くある格付機関の中でも、GPIFが採用しているMSCIとFTSEに加えて、トムソン・ロイター系のRefinitivの3社が実際に利用している評価小項目をご紹介します。

FTSE

      • 腐敗防止
      • 企業統治
      • リスクマネジメント
      • 税の透明性

MSCI

      • コーポレートガバナンス
          • 取締役会構成(Board diversity):監査委員会独立性、取締役会出席率、報酬委員会独立性、多様性(性別)、独立した取締役会議長
          • 報酬(Executive pay)
          • オーナーシップと支配(Ownership and control):単年の取締役選任期間、持ち合い株、1株1議決権(OSOV)、ポイズンピル
          • 会計リスク(accounting):限定付き監査意見
      • 企業行動
          • 企業倫理(Business ethics)
          • 公平な競争(Anti competitive practices)
          • 租税回避(Tax transparency)
          • 汚職と政治不安(Corruption and instability)
          • 財務システムの安定性(Financial system instability)

Refinitive

      • 経営陣
          • 組織体制
          • 独立性
          • 多様性
          • 委員会
          • 報酬
      • 株主
          • 株主の権利
          • 敵対的買収への抵抗 (Tekeover defense)
      • CSR戦略
          • CSR戦略
          • ESG報告及び透明性

日本におけるランキング発表

日本独自の格付といえば、東洋経済社が発表しているCSRランキングESGランキング があります。しかし、この結果に基づいてインデックス・ファンドの構成が変わるわけではないので、影響力はそこまで高くないでしょう。

しかし、就職活動をしている学生などが参考にする 情報のひとつとなるので、優秀な人材を採用したい会社は、東洋経済が何をもとにESGスコアを算出しているのか知っておいて損はありません。

東洋経済CSRランキング評価項目

      • 中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念
      • ステークホルダー・エンゲージメント
      • 活動報告の第三者の関与
      • CSR
          • CSR活動のマテリアリティ設定
          • 担当部署有無
          • CSR担当役員の有無
          • 同役員の担当職域
          • CSR方針の文書化の有無
          • 国内外のCSR関連基準への参加等
      • 内部通報・告発
          • 内部通報・告発窓口(社内・社外)設置
          • 内部通報・告発者の権利保護に関する規定制定
          • 内部通報・告発件数の開示
      • 摘発・不正
          • 公正取引委員会からの排除措置命令等・他
          • 不祥事などによる操業・営業停止
          • コンプライアンスに関わる事件・事故での刑事告発
          • 海外での価格カルテルによる摘発
          • 海外での贈賄による摘発
      • 情報開示
          • 政治献金等の開示
          • 相談役・顧問制度の状況についての開示
      • 企業倫理
          • 企業倫理方針の文書化・公開
          • 倫理行動規定・規範・マニュアルの有無
          • 汚職・贈収賄防止の方針
      • 内部統制
          • 内部統制委員会の設置
          • 内部統制の評価
      • 関連部署の設置
          • IR担当部署の有無
          • 法令順守関連部署の有無
          • 内部監査部門の有無
      • 情報システム
          • セキュリティポリシーの有無
          • セキュリティに関する内部監査の状況
          • セキュリティに関する外部監査の状況
      • プライバシー・ポリシーの有無
      • リスクマネジメント・クライシスマネジメント体制
          • 基本方針
          • 対応マニュアルの有無
          • リスクマネジメント・クライシスマネジメント体制の責任者
          • BCM構築
          • BCP策定
          • リスクマネジメント・クライシスマネジメントの取り組み状況

※東洋経済公表資料より、カテゴリ筆者作成。

そのほかにも、点数をつけることが目的ではありませんが、経産省の「価値共創ガイダンス」 、東京証券取引所の「コーポレート・ガバナンスコード」 、KPMGの「日本企業の統合報告書に関する調査2019」 などが、ガバナンス改善に有用な視点をそれぞれ公開しています

まとめ

いかがでしたでしょうか。
まだ世の中に整理された情報が少なく、取り組もうにも何から手を付ければいいのかよくわからないESGGガバナンス(企業統治)について、格付機関が利用している小項目事例を紹介しました。自社の取り組みへの糸口を見つけられましたか?

格付機関からの評価の向上目的として経営改善を行うのは本末転倒です。そうではなく、自社の経営を持続可能なものにするという目的のために経営改善を行い、結果として、ESG格付機関から高評価を得ることが理想的です。あくまで持続可能な経営の実現のためのヒントとして、格付機関が使う評価項目を参考にしてください。

格付機関によって評価項目や手法がバラバラになりやすいESG格付の中でも比較的共通する部分の多いガバナンス」は、実は取り組みやすい分野だと言えるでしょう。ESGの視点をヒントにして、ぜひチャレンジしてみてください。

ガバナンス改善を収益に結びつけるためには…

ガバナンス改善は、企業の経営層(取締役会など)における改善です。重要なものですが、それだけでは収益は増加しません。収益向上には、経営層「現場」とのつながりの強化、および現場の業務オペレーション「見える化」強化も必須です。ガバナンス改善と同時に現場を強くし、経営層との距離を縮める。トークンエクスプレス株式会社はその具体的な打ち手をご提案できます。ご関心ある方はぜひ「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。