ピンチをチャンスに!日本企業がSDGsに取り組むメリット3選

2020年7月、三菱UFJフィナンシャル・グループに続いて、みずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループが石炭火力発電所の新設事業への融資停止を発表しました 。気候変動への早急な対策が叫ばれる中で、この決断は関係者の予想よりも踏み込んだものでした。

なぜ大手銀行は融資停止に踏み切ったのでしょうか?それは日本のビジネスシーンでもよく目にするようになったSDGsSustainable Development Goals持続可能な開発目標の観点の広がり が影響している と考えられます。なぜ企業がSDGsに取り組むようになってきたのでしょうか?そのメリットは何でしょうか?

この記事で、日本企業がSDGsに取り組む3つのメリットを一緒に見ていきましょう!

目次

  1. SDGsに取り組まないリスク、取り組むチャンス
  2. ミレニアル世代の優秀な人材確保
  3. パフォーマンスを高めるSDGsへの取り組み
  4. まとめ

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1. SDGsに取り組まないリスク、取り組むチャンス

SDGsとは?

SDGsとは2015年に国連によって定められた、持続可能な社会の実現のための17の目標です。その特徴は、貧困削減や飢餓の撲滅など主に低所得国に関係する項目の他に、ジェンダー平等や気候変動など先進国も含めた世界全体が取り組むべき項目が取り入れられていることです。

※出典:SDGsポスター(国連広報センター)

「持続可能な社会の実現への貢献」=当たり前、という潮流

皆さんもCMや雑誌など、社会のいたるところでSDGsを目にするようになったのではないでしょうか?SDGsは2030年までの目標を定めたものですが、その後も新たな目標が設定され、世界は引き続き気候変動などの社会問題に取り組んでいくことになるでしょう。持続可能な社会の実現 を重視する兆候は一過性のものではなく、今後ますます強まっていくものと言えます。

では、日本の一般的な企業はどうするべきでしょうか?持続可能な社会への貢献や社会問題解決を重視しつつある時代の変化を先読みし、それに合わせたビジネスを展開する必要があります。SDGsへの取り組みは生き残り戦略の1つとも言えるのです。SDGsの本質をとらえ、長期に渡ってコミットすれば、それが会社の強みとなり、安定的な経営優秀な人材の確保、そして業績アップにもつながります。

世界全体がSDGsに取り組んでいる中で、この世界的に大きなトレンドを無視し、それに逆行するようなビジネスを行うことは、大きな経営リスクとなり得ます。企業の評判が下がったり、融資を受けられなくなったり、消費者が商品を購入してくれなくなったりする可能性があります。

さらには、SDGsの理念に沿うような法的規制が設けられた場合に、今まで行えていた原料調達や海外工場での生産活動を行えなくなるなどのリスクもあります。
このサプライチェーン管理面での経営リスク低減方法はこちら記事をご参照ください。

サプライチェーン管理を経営に活かす – SDGsを入口に

児童労働や劣悪な工場環境でイメージ悪化

例えば、海外では20年以上前にナイキ児童労働をさせていたとして大きな批判を受けました。サッカー関係の衣類やアクセサリーを生産するインドネシアやパキスタン、ベトナム、中国の工場で、必ずしも現地の法律に違反していなかったにも関わらず、子どもを雇用していたことが批判の的となりました 。

その後も服飾、特にファスト・ファッション業界のサプライチェーンは悪い意味で注目され続け、ZARAH&Mなどの大手ファスト・ファッションメーカーは発展途上国の下請生産工場における待遇の悪さなどを批判され続けています

今では、特にヨーロッパでは、消費者も商品を選ぶ際の基準として、エシカル(倫理的)かどうかが視野に入れるようになっています。原料調達や生産がエシカルに行われているかどうか、それを開示しているかどうかが、消費者が商品を選ぶ際の1つの目安になっています。一度アンエシカル(倫理的でない)イメージがついてしまったファスト・ファッション業界は対策を講じていますが、生産スピードと価格競争のなかで、国際的に広がるサプライチェーンの末端までエシカルであることを徹底することは、容易なことではありません 。

ピンチをチャンスに!持続可能なパーム油の利用を目指す「ヤシノミ洗剤」

ピンチをチャンスに変えた企業もあります。日本の衛生用品のメーカーであるサラヤはかつて、ロングセラー商品の「ヤシノミ洗剤」パーム油が含まれていたことから、「環境に優しい」という同社の打ち出すイメージとは逆に、批判を受けたことがあります。東南アジアの熱帯雨林の破壊とそこに住む野生の象への悪影響の一端を担っているという批判です。

パーム油とは、アブラヤシの実から採れる油で、主に菓子類やインスタント食品など日常のあらゆる生活用品に使われています。しかし、原料名には「植物油脂」などと表示されており、パーム油が商品に含まれていること、それが東南アジアの生態系破壊に繋がっていることはあまり知られていません。

批判を受け、サラヤはパーム油製造に伴う無秩序な森林伐採の悪影響を食い止める活動に乗り出すこととしました。その結果サラヤは、業績を右肩上がりに伸ばすほどに、環境保全持続可能な社会づくりに貢献する企業としてのブランドを取り戻すことに成功しました。

経済を活発にし、雇用を生み出すSDGs

企業がビジネスを通じてSDGs に取り組むことは、企業の存続基盤を強固なものにするとともに、いまだ開拓されていない巨大な市場を獲得するためのチャンスでもあります。新技術や新たなビジネスモデルを生み出す、大きな変革の波に一番初めに乗った企業が将来、市場の成長牽引することにつながります。

国連はSDGsを達成した場合、2030年までに世界経済に12兆米ドル(1ドル105円換算で、約1,260兆円 )の価値をもたらし、38億もの雇用を生み出すと予想しています 。具体的には、SDGs達成への取り組みを通じて、世界の低所得層の生活水準が底上げされたり、新たなビジネスモデルの創出が見込まれます

2. ミレニアル世代の優秀な人材確保

2つ目に注目するべきなのは、若い世代の価値観の変化です。今後、いわゆる「ミレニアル世代 」が消費者・従業員として、投資家として、起業家として、企業をとり巻く ステークホルダーの中心となってきます。ミレニアル世代とは1980年代から2000年代初頭までに生まれた世代を 指します。

若者の環境保全意識の高まり

若者の環境意識を象徴する存在として、スウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリ氏がいます。彼女は15歳だった2018年に、気候変動への対策を取らない大人への抗議のために、学校を休んでスウェーデン議会の前に座り込む「学校ストライキ」を開始しました。その後、運動は世界中に広がり、トゥーンベリ氏が登壇した2019年の国連気候行動サミットに合わせて開かれた「グローバル気候マーチ」には、世界各地で何百万人もの人々が参加しました。

最近では、「プラネット・アース」などの環境ドキュメンタリーシリーズを手掛ける94歳のイギリスのキャスター、デイビッド・アテンブローグ(David Attenborough)氏のインスタグラム史上最速開設後4時間44分100万フォロワーを超えた ことが話題になりました。これは、インスタグラムを使いこなす「デジタル・ネイティブ」のミレニアル世代が、いかに環境生態系保全関心が高いかを示していると言えます。

意識の変化は企業の採用活動や働き方にも!

ミレニアル世代の価値観の変化は企業の活動にも大きく影響を及ぼしています。例えば、経済産業省の資料によると、ミレニアル世代は仕事上の利益のみならず、働く目的をよく考えており、社会課題の解決企業選びにおいて重要な価値の1つになっています 。

さらに経済産業省によれば、ミレニアル世代の人たちは会社のコミットメントバリューが以前からどうだったということを詳しく見ているようです。そのため、儲かるという証拠がそろってからSDGsに取り組むのでは手遅れであり、「社会貢献の価値をアピールできない企業は投資家の資金も引き寄せられず、ミレニアル世代優秀人材採用できないという時代が来ているのではないか」と結論づけられています。

実際に、デロイトトーマツが2018年にミレニアル世代を対象に行った調査によると、「事業の成功は財務上のパフォーマンス以外でも測定されるべきだ」と考える人が83%を占めました。「企業が達成すべきこと」に関する質問では、ミレニアル世代は、「地域社会の改善」「環境の改善と保護」なども重要と考えている一方、雇用主が「収益の創出」や「効率性の追求」などを優先事項と考えていると見ており、大きなギャップが見てとれます。

※デロイトトーマツ「2018年デロイトミレニアル年次調査」より抜粋

社会貢献も重視する価値観へ

世の中の企業に向ける目線の変化を示す例として、コモンズ投信の「コモンズ30ファンド」と「コモンズSEEDCap」を紹介します 。2008年のリーマンショック直後に誕生したコモンズ投信は、「こどもたちの時代をより良い社会にしていく持続可能な社会を創る」という理念のもと、30年の長期投資の目線をもつ「コモンズ30ファンド」を提供しています。

「コモンズSEEDCap」はコモンズ30ファンドの信託報酬の1%相当を、選抜された社会企業家に寄付するプログラムです。今年で11回目(11年目)を迎えます。

コモンズ30ファンドへの投資家は、コモンズ投信に支払う信託報酬の一部の寄付を通して社会企業家を育て、間接的に社会問題の解決に貢献することができます。この取り組みが11年も続いていることは、少なくとも投資家が企業に期待するものとして、従来の金銭面での価値提供金銭リターン)に加えて、持続可能な社会づくりへの貢献も重要視されてきたことを表しているとも言えるでしょう。

ミレニアル世代の価値観は投資においても大きく反映されています。調査 によると、上の世代と比べて、より多くのミレニアル世代ESG投資について財務専門家に相談したことがあると答え、81%ミレニアル世代が、投資を通じて、金銭的に得をするだけではなく、精神的な満足を求めていると答えました。

(ESG投資とは、 「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「企業統治(Governance)」に配慮する企業への投資行動を指します。ESG投資の具体例等は弊社の 別記事 をご覧ください。)

3. パフォーマンスを高めるSDGsへの取り組み

経済産業省は、日本企業がSDGsに取り組むべき理由として、財務パフォーマンス の向上を挙げています。学術的なコンセンサスはいまだ得られていないものの、SDGsを積極的に経営に取り込む企業は、他社と比べてパフォーマンスが高い傾向があると結論付ける研究も存在しているようです。

森林を守りながら、企業利益向上

例えば、ドイツの香料メーカーであるシムライズSymrise)は、倫理的なビジネスを行う民間企業が加盟する国連グローバル・コンパクトに参加しており、2012年と2019年には「ドイツ・サステナビリティ・アワード」を受賞するなど、持続可能な社会への貢献に配慮した事業運営が高く評価されてきました。

シムライズはマダガスカルバニラのバリュー・チェーンにおいて、ユニリーバやネスレ、ケロッグなどの世界有数の衛生用品メーカーや食品メーカーと「バニラ・アライアンス」というコミュニティを発足しました。これは、マダガスカルの教育保健森林保護などを重視し、持続可能なバニラ調達を行うイニシアティブです。

そのおかげか、シムライズのCEOは2019年ハーバード・ビジネス・レビューの「最も功績をあげたCEO」ランキング35位に選ばれ、さらにはコロナ禍にも関わらず、2020年上半期のシムライズの売り上げ前年度比7.6%上昇しました。持続可能なバニラの調達は売り上げ向上 に大きく貢献したと考えられています。

SDGsへの取り組みと企業パフォーマンスの関係は、特に日本において研究が進んでいないので立証は難しいです。しかし、製品の原料調達地環境保全を行わなかったり、製造過程の工場が適切な労働環境でなかったりすれば、いずれ企業活動が行えなくなり、存続が危うくなる可能性については、すでに述べたとおりです。

日本企業の例を挙げると、明治持続可能なチョコレートの原料カカオ豆生産のためにラテンアメリカや東南アジア、アフリカの計8か国でカカオ農家支援活動を行っています。

具体的には、収穫量を増やすための栽培方法や病虫害の管理方法などについて学ぶ勉強会を開催したり、栽培に必要な苗木の供給センターをつくったりしています。また、当社独自の発酵法を実践してもらい、高品質のカカオ豆を得られるような取組も行っています。さらには、井戸の整備や学校備品の寄贈、環境への配慮をした農法の応援など、カカオ農家やコミュニティの生活を支援する活動も行っています

まとめ

日本企業SDGs責任ある企業活動に取り組むメリットについてご説明しました。SDGsに取り組もうとする会社においては、地域でのボランティア活動やNPO団体への寄付 にとどまったり、SDGs推進の部署のみが盛り上がり、他の部署と具体的な連携ができていないなどの事例が散見します。

本来は社会に対して責任をもった企業活動の理念企業全体で共有され、中心に据えられるべきものです。もしあなたが「ウチも会社全体で取り組むべきだ!」と思いつつ、社内で理解を得られない場合には、ぜひこの記事や記事内の参考資料をご活用ください。

会社が世のため人のために存在するという考え方は、「三方よし」渋沢栄一道徳経済合一説にもあるように、日本では広く受け入れられ、脈々と受け継がれています。SDGs、広く言えば社会の諸課題の解決に取り組むのは、日本企業にとって決して突飛な挑戦ではないのです。

資料集はここから

国連グローバル・コンパクトに加盟している海外・日本企業の持続可能な社会づくりに関する報告書(サステナビリティ・レポート)(日本企業の場合は日本語あり)はここ から閲覧可能です。

さらに、グローバル・コンパクトのページには英語の資料集 があり、自社ビジネスの構造に沿って貢献できそうなSDGsの目標を選ぶ方法や実際に取り組む手順のヒントを得ることができます。日本語でのまとめ資料 にもアクセス可能です。

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