ESG投資に不可欠、格付機関3社+αを徹底解説!

ESG徹底解説シリーズ第2弾へようこそ!
第1弾の記事「ガバナンスとは?ESGの”G”ガバナンス(企業統治)を徹底解説! 」もご覧ください。

ESG経営ESG投資について調べていると格付機関がキーになっていることに気が付くと思います。

現在、世界全体では31兆ドル日本でも231兆円(2018年時点)がESG投資に資金流入しています(Global Sustainable Investment Report 2018, GSIA)。ESG投資というシステムを支える根幹ともいえる、ESG評価とそれを付与する格付機関についての知識は、今後ビジネスパーソンにとって必須と言えるでしょう。

この記事では、

      • 主な格付機関はどこか?
      • 各格付機関はどのようにESG評価をおこなっているのか?
      • 各社のESG評価の結果は、どのように確認できるか?【事例で解説】

という疑問にこたえていきたいと思います。

この記事は、格付機関を説明することを目的としているため、そのシステム自体の問題点には触れません。ESG格付の課題について詳しく知りたい方は以下の記事へどうぞ!

「ESG格付」「ESGランキング」の課題とESGコンサルタント

目次

  1. ESG格付とは?
  2. 主要なESG格付機関3社事例+α
  3. まとめ

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1. ESG格付とは?

ESGとは?

ESGの「E」は「環境(Environment)」、「S」は「社会(Social)」、「G」は「企業統治(Governance) 」をそれぞれ意味しています。

財務面だけでなく、これら3分野へ配慮して経営することをESG経営と呼びます。機関投資家や個人投資家のあいだで、ESG評価の高い企業に投資をふりむけるESG投資が注目を集めています。

ESGに格付機関が不可欠な理由

ある投資家が、ESG評価が高い企業に投資したい!と思っても、実際にどの企業どんな取り組みをしているのか、個別に調べるのは大変な作業です。個別に調べるのは効率が悪いですし、限界があります。

加えて、例えばESGの「E(環境)」への取り組みも、プラスチック包装などを使用する最終消費財の企業と、SNSサイトのようなテック企業では、取り組み方法もその影響も全く違い、直接比較が難しいですね。

このような業種による差異の調整等を通して、多様な企業を同じ尺度で点数付けする格付があると便利です。そこで、投資家が簡便に投資判断にESG要素を取り入れることができるようにするツールとして、ESG格付が開発されたのです。

いまのところESG評価の共通基準は存在せず、各格付機関が、独自の評価方法や分析方法、情報網を使って、格付評価を付し、格付結果を公開したり販売したりしています。

ESG格付と信用格付の違い

格付と聞くと、信用格付を思い浮かべる方もいるかと思います。投資家がそのポートフォリオ構成を検討する際に参考にするという意味でESG格付と信用格付は同じ機能を持っています。しかし、格付結果の利用方法が違います。

信用格付は、債券等の投資先リスクの高低を、様々な要件から「意見」として格付会社が評価するものです。リスクと利回りは基本的に相関していて、高リスク高リターン(格付では低評価)低リスク低リターン(格付では高評価)です。投資家の投資への姿勢によって、どの評価の債券を購入するかが決まってきます。

ESG格付では、基本的にESG評価高い企業がリスク低い「良い」投資先と考えられています。ここでいうリスクは、高リターンとセットになっている訳ではありません。ESG格付結果が、信用格付の結果と同様にAAAやCCCと表示される場合もあるので、誤解しないようにする必要があります。

信用格付とESG格付は、その方法においては共通する部分もあり、実際に、信用格付を提供する大手機関が、ESG格付にも参入しているケースが多いです。本記事でご紹介する格付機関もルーツが信用格付機関であるものが多いです。

ESG格付は利用されているのか

それでは、投資家は実際に投資判断の際にESGを考慮にいれているのでしょうか?

Russel Investment社が行った、全世界(含む日本)のアセットマネージャー400名対象のアンケート調査 では、75%PRI(責任投資原則)署名という形で、ESG要素投資判断に取り入れることを表明しています 。さらに、アセットマネージャーの42%MCSIという格付機関の評価を、37%Sustainalyticsの評価を利用していることが明らかになりました。各機関については次の章でご説明します。

別のESG評価の利用方法として、インデックスファンドの運用における活用があります。インデックスファンドとは、一定のルールに基づいて計算された「指数」と同じ値動きをするように運用される投資信託のことです。ESG投資を行いたい投資家からみれば、ESGの観点から問題がない、もしくは優れたESG経営をしている企業群に投資をしてくれる投資信託があると便利です。その投資家の需要にこたえるために、ESGの観点も取り入れた投資信託が多く組成されていますが、その銘柄選定においてESG格付 が利用されます。

例えば、日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立法人) が2018年以降、S&Pダウ&ジョーンズのS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数シリーズ 、MCSIのジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 及び日本株女性活躍指数(WIN) 、FTSEのBlossom Japan Index の指数を順次採用 しています。

S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数は、東証一部上場企業全社のうち、同業種内で炭素効率性が高い(「温室効果ガス排出量/売上高)が低い)企業と二酸化炭素排出量などに関する情報開示を行っている企業の投資比重(ウエイト)を高めています。MSCIは、MSCIジャパンIMIを構成する企業のうち、時価総額上位500銘柄を親指数とし、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数では、ESG格付結果に基づいて総合的に選別(252社)したり、日本株女性活躍指数(WIN)では、性別多様性指数 を個別に評価した結果をもとに銘柄選別をしています(208社)。FTSEの場合は、FTSE All World Japan Indexの構成銘柄509社のうち、ESG評価結果と業種を勘案して総合的に指数を構成しています(149社)

2. 主要なESG格付機関3社事例+α

この記事では、もともと信用格付を提供していた大手で、ESG格付に参入したような格付機関をご紹介しますが、AIなどのテクノロジーを利用してまったく新しい方法でESG評価 を提供する新しい会社もあります。
ESGにおけるAI技術の利用について詳細を知りたい方は下の記事 もどうぞ!

ESG投資で存在感を増すAIの事例

MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)

沿革・一般

アメリカ合衆国。1998年設立。金融サービス業全般。MSCI指数(世界70ヵ国以上の株式市場をカバー)を、多くの機関投資家や投資信託がベンチマークとして採用している。米大手資産運用会社BlackRockも採用 。ESG評価の付与実績は18年前から。

格付方法

情報源は、政府やNGO等のデータ、企業自身の公開情報、メディアによる報道、企業への聞き取り調査。37のキー・イシューについて、リスクの大きさ(リスク・エクスポージャー)と管理体制の2つの視点から(相対値ではない)絶対的点数を付与。産業カテゴリ(インダストリー)ごとに、考慮するキー・イシューや重み付け(ウエイト)が異なる。同じ産業カテゴリに所属する企業の中での順位によって相対的評価を7段階で付与(AAAからCCCまで)。

格付結果の公表状況

2800社以上の企業のESG格付 について、総合評価及び一部個別評価結果をWebサイト上で公開。各指数 の構成銘柄については、総合評価と重み付け(ウエイト)を公表。MCSIのジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄はESG総合評価及びウエイトを、日本株女性活躍指数(WIN) では、構成銘柄の性別多様性スコアとウエイト を公表。

MSCIのWebサイト 上で、銘柄コードあるいは企業名を入力するとESG格付 が表示されます。

例えばSONYと入れてみると、「ソニー(銘柄コード:6758)」のESG評価AAAと経年変化が表示されます。さらに、同じ家庭用耐久消費財業界カテゴリに所属する企業27社のなかで、上位4%に位置していることが分かります。家庭用耐久消費財業界で重要視されているキー・イシューのうち、「コーポレートガバナンス」及び「化学物質安全性」については緑(平均以上)、労務管理、疑義のある資源調達、「電気電子機器廃棄物」については黄色(平均的)、サプライチェーンにおける労働基準については赤(改善の余地あり)に分類されていることが分かります(2020年10月28日アクセス時点)。

格付結果の購入方法

MSCIでより詳細なESGデータを購入するには、MSCIにお問い合わせ する必要があります。(MSCI Tokyo インデックス関連の問い合わせ先 Index queries: +81 3 5290 1555、被格付企業による問い合わせ先: +81 3 5290 1560)

FTSE Russell

沿革

ロンドン証券取引所(LSE)の子会社。以前は、FTSE4Good指標という名称であったが、現在はFTSE Russell’s ESG Rating。

格付方法

350のインディケーターに対する採点に基づき、14のテーマスコア(各テーマにつき10-35のインディケーター)を設定。テーマスコアに基づきESGの3分野のスコア及び総合スコアを付与。すべて0-5の絶対評価。

格付結果の公表状況

ESG関連インデックスの構成銘柄のみ総合評価及び該当インデックス内でのウエイトが公表。FTSEのBlossom Japan Index の構成銘柄はこちら から。

格付結果の読み方

例えば、MSCIではAAAに分類されていたソニーは、FTSEでは3.9の評価が付されています。FTSEのBloosom Japan Indexで、ソニーは3.4%のウエイトを占めているようです。構成銘柄の表(PDF)では銘柄コード順に並んでいるので、探すときの手がかりにしてみてください。

格付結果の購入方法

FTSEは現在、各Index商品を構成している会社の総合評価しか公表していません。各社の詳細や、Index商品に入っていない会社のデータへアクセスするには、購入 する必要があります。必要なデータ量によって金額が異なるので、FTSEにお問い合わせする必要があります。(FTSE Tokyo + 81 (3) 4563 6346)

Sustainalytics

沿革

本社はオランダ。1992年設立。Morningstar系列。STOXXやMorningstarの株価指数作成に活用されている。

格付方法

「リスクへのエクスポージャー(Exposure、リスクの大きさのこと)」と「どの程度リスクを管理できるか(Management)」を勘案した総合評価を0-100でレーティング。0-10ほぼリスクなし、10-20が低リスク、20-30が中リスク、30-40が高リスク、40以上を重篤なリスクと分類。「管理可能にもかかわらず管理できていないリスク(Management Gap)」も勘案。ストライキやリコール等企業業績にとって「重大なリスク」となりうる項目(Controversy Rating)も随時モニタリングし勘案。

格付結果の公表状況

Webサイト上で総合評価、一部詳細を公開。Exposure(高・中・低)とManagement(強・平均・弱)の3段階評価、同じ産業カテゴリ(インダストリー)に所属する企業内で何番目か、過去の「重大なリスク」となりうる項目の重度を5段階で表示。産業カテゴリ毎にリスト表示も可能。

格付結果の読み方

例えば、ソニーでは、総合評価が13.4低リスクで、同じ耐久消費財業界では203社中7番目。業種混合の13,182社中では469番目にリスクが低い企業と評価されています。類似企業数社とも比較してくれます。日本企業だと、パナソニックが38.4と高リスクに分類されています。

「リスクへさらされている度合(Exposure)」は低・中・高の3段階のうち、低に分類され、「リスクを管理している度合(Management)」についても、強・平均・弱の3段階のうち、強に分類。さらに、ESG項目のうち、ソニーにとって重要(マテリアル)だと認識されているのはコーポレートガバナンスや人的資本などであることも分かります。

最後に、ソニーの「重大なリスク」になり得る過去の出来事のうち、最も重大な出来事でも中程度のリスク(5段階中2番目)であったことが左側に示されています。競争原則に反し、顧客にとって不利になるような事案、サプライチェーンの社会的側面として、従業員の人権が問題になるような事案などが過去にSustainalyticsによって捕捉されていることも分かります。

格付結果の購買方法

Sustainalyticsは、Webサイト上でもかなり詳細な情報を提供していますが、より詳しいデータをAPIなど様々な形態で提供しています。(Sustainalytics Tokyo (+81) 3 4510 7979)

その他の格付機関8選

CDP

2000年設立。イギリス拠点。上記3社と違い、営利企業ではなく国際NPO環境面に特化。各社に送付したアンケートへの回答結果を用いてレーティング。質問項目はすべて公開 。気候変動、水資源、森林保全の3分野についてAからDマイナスの8段階でランク付け。環境面では非常に影響力を持つ。世界525機関投資家運用資産額約96兆ドル)がCDPの、温室効果ガス対策等の情報開示を進めるイニシアチブに賛同。2019年時点で、世界8,400社(内日本企業356社)が回答し、回答企業の時価総額は全世界の時価総額5割を超える。CDP自体はインデックス商品を持たないが、STOXXがCDPのA評価企業で構成される指数を設定している。回答結果は年次レポートで公開。
例えばソニーは、最上クラスのA分類(CDP気候変動レポート2019:日本版 )。

Refinitiv

トムソン・ロイター系。400以上のデータポイントから70種類以上のKPIを算出。環境、社会、ガバナンスの各スコア算出後、ESG不祥事を勘案後、総合評価算出。スコアは0-1で、格付は、A+からD-まで12段階。格付 結果はWeb上での一般公開は無。情報源は、企業自身が発表する情報に加え、NGOや報道機関提供の情報、取引所の開示情報。更新は年に1回。

Bloomberg

他の格付機関が、内容をもとに評価しているのに対し、ブルームバーグESG開示スコアは、情報を開示しているかどうか自体を評価するBloomberg ESG disclosure socreを提供。スコアは一般非公開。既存プラットフォーム「ブルームバーグターミナル」上にESG評価結果 表示機能が追加

ISS-Oekom Corporate Rating

ドイツ拠点。800以上のインディケーターからESGの各ピラーを評価 。各インダストリーでキー・イシューを5つ選定。同じ産業カテゴリに所属する他企業との比較でレーティング。2格付は、A+からD-まで12段階。

Robeco SAM Corporate Sustainability Assessment

スイス拠点。評価結果一般非公開。E「環境」5項目、S「社会」9項目とED「経済」(Economic Dimension)9項目の3分野で評価。一般的にG「ガバナンス」に含まれる項目は、ED「経済」に含まれる。

Vigeo Eiris Sustainability Rating

フランス及びイギリス拠点。330のインディケーターから、41のサブセクターを評価。セクター毎に関連性に応じて重みづけし、6分野(環境、地域社会への貢献、ビジネス行動、人権、ガバナンス、人事)にグループ化。総合評価は、A-Eの5段階評価。評価結果を用いて銘柄構成する指数も作成。評価結果は非公開 。

EcoVadis CSR Rating

フランス拠点。情報源は企業自身の公開情報、オンラインアンケート回答結果に加えて、NGOや政府機関、CDPの評価結果等を利用。4分野(環境、社会、倫理、持続可能な調達)21項目で評価。産業カテゴリによって、21項目のうちどの項目を評価するかが異なる。4分野の重みづけは、産業カテゴリ及び企業規模に応じて異なる。総合評価結果は0-100で表示。

RepRisk

スイス拠点。1998年設立。情報源は、公的機関の公開情報及び利害関係者インタビュー。企業自身が発信する情報は分析対象外。AI及び機械学習を取り入れて格付を構成。主要顧客はAllianzJP Morgan Asset Management。総合評価はAAAからDまで10段階。企業ごとの評価結果表示のサンプル はこちら。

3. まとめ

いかがでしたでしょうか。
様々な格付機関が、それぞれ独自の方法で企業のESG要素評価格付していることが分かっていただけたでしょうか?
結果を一部公表している機関も少しですがあります。ぜひ自社や取引先企業の評価結果を確認してみてください。

取引先のESG評価が高い場合、将来的にサプライチェーン内にいるあなたの企業へ、ESG要素へ取り組むことを要請してくるかもしれません。逆に低い場合も、今後改善していく取り組みの中で、取引先へも改善要請があるかもしれません。

ESG格付は、その評価基準の統一が叫ばれつつ、なかなか進んでいないのが現状です。ESG格付で高い評価を得るために経営戦略を寄せていく必要はありませんが、自社の経営方針持続可能なものにしていくための取り組みが、きちんと格付機関からも評価されたらいいですよね。そのために、主要な格付機関がどのように評価を付けているのか理解しておくことは重要です。

ESG格付の課題について詳しくはこちらの記事もどうぞ。(再掲)

「ESG格付」「ESGランキング」の課題とESGコンサルタント

ESG格付を上手く経営に活かすには…

ご紹介したとおり、ESG格付は格付機関ごとにバラバラに実施されています。そのため、ESG格付を経営に有利に活用しようとするときには、ESGの概念を自社の文脈で解釈し、格付にとらわれずに「社会的価値」を追求することが近道と言えるでしょう。そのためには、経営レベルがコミットする一貫した戦略が必要です。トークンエクスプレス株式会社はその具体的な打ち手をご提案できます。ご関心ある方はぜひ「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。