ロナルド・コーエン卿「インパクト投資が資本主義を永遠に変えうる」

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

記者:Marina Gerner @RACONTEUR
URL:https://www.raconteur.net/finance/responsible-investment-2020/sir-ronald-cohen
掲載日:2020年8月9日

オピニオン内容

    • ロナルド・コーエン卿は、英国のベンチャーキャピタルの父であり、社会的インパクト投資のパイオニアとして知られている。現在75歳のコーエン卿は、「2000年に英国財務省から、貧困の問題をベンチャーキャピタル的視点で取り組むことが可能か、という電話を受けたときから、社会的インパクト投資家としてのキャリアが始まった。」という。
    • ピーターバラ刑務所で再犯率を下げることに成功した世界初のソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)が彼の功績として有名だ。この事例の核心は、事業の社会的成果(アウトカム)に基づく財務的成功のために、投資家が社会的事業に投資することだ。この投資は、社会的に意義のある成果を達成できてこそ、リターンが生まれる仕組みだ。
    • 「それは世界が向かう方向を示していた。」とコーエン卿は言う。ビジネスの世界では、リスクとリターンに基づく事業評価から、リスクとリターン、そして社会へのインパクトに基づく評価へとシフトしている、というのだ。
    • 大恐慌の前、企業はそれぞれ独自の会計原則を用いていたが、1933年に米国政府は企業が一般に受け入れられている会計原則に従って口座を更改し、監査を受けることを義務付けた例を引きつつ、「私たちは今、1929年と同様に歴史的な岐路に立っていると思う。」とコーエン卿は言う。すなわち、企業が、その事業がもたらす社会的インパクトを報告・開示するよう、政府による義務付けを行うべきだというのだ。新型コロナウイルス感染症によって人々の価値観が揺さぶられている今、そうした転換を行うために歴史的な時期であり、それを実現する決意が必要だと、コーエン卿は締めくくった。

トークンエクスプレス社のひとこと

コーエン卿は社会的インパクト投資の分野では著名なリーダーです。2000年前後から貧困地域限定の社会的インパクト投資ファンドを立ち上げています。彼は、2018年のイベントで、2020年に社会的インパクト投資の転換点がやってくると予想していました。(参考資料:笹川平和財団ウェブサイト

まさかその年に感染症の世界的流行が発生するとまでは予想していなかったでしょうが、確かに今年はインパクト投資にとってチャンスの年、または期待を失望に変えないための試練の年になると、私は感じています。

彼の意見では、政府の規制整備がキーになるとしていますが、私は異なる意見を持っています。行政による規制というのは市場において具体的実例が多く存在し、多数の人々が必要と考える規制のイメージを共有している状態になったところで整備されるものですので、現時点でインパクト投資普及のキーに行政の規制を位置付けてしまうのは悪手だと感じています。それよりも実例を積み重ね、市場に熱狂的な「ファン」を作り上げ、エネルギーを充填する活動にリソースを割くべきでしょう。

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気候変動に偏りがちな環境問題、生物多様性も重要

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

記者:Billy Nauman @ Financial Times
URL:https://www.ft.com/content/100f0c5b-83c5-4e9a-8ad0-89af2ea4a758
掲載日:7月29日

オピニオン内容

    • 森林やサンゴ礁を含む生態系への被害は、世界経済に多大な影響を与えると予測されている。環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)への投資が金融業界全体に広まっているが、ESGの「E」は気候変動を緩和する試みとほぼ同義語となっている。しかし、気候だけでなく生物多様性の損失や生態系の破壊に起因する重大な財務リスクを注視する必要がある。
    • 世界自然保護基金(WWF)によると、森林、草原、サンゴ礁などの生態系への損傷、およびそれに伴う生物多様性の損失により、2050年までに世界経済が約10兆ドル損失する可能性がある。損失は、作物収量と漁獲量の減少、洪水やその他の自然災害のリスク増大に起因する。
    • 投資家や企業は、自然界から得られる利益に値段を付けることにたびたび失敗する。それは主にデータと測定基準の欠如に起因する。気候変動は、「二酸化炭素(CO2)換算」など温室効果ガス排出を定量化する標準方法があるが、生物多様性に関しては、同様の測定基準がない。
    • 私たちは生態系の生物多様性からさまざまな方法で恩恵を受けているが、これらの利益にお金を払っていないため、価格を設定する習慣がない。現在、マイクロソフトなどの企業や、国連環境計画の金融イニシアチブ(UNEP FI)などの組織が、人間や企業が自然界から受ける価値を定量化するプロジェクトを立ち上げている。また、UNEP FIは、英国やスイスの政府、WWFなどと協力して、自然関連の財務情報開示に関するタスクフォース策定を発表しており、今後、自然の価値設定や財務関連の指標設定が進んでいく可能性がある。

トークンエクスプレス社のひとこと

何かを評価する際、特に複数の選択肢の比較を不特定多数に示す必要がある場合に、定量化された指標が必要になります。この指標化において、金銭価値は、万人に価値を伝えるために有効な指標です。

気候変動においては、温室効果ガス排出量、特に二酸化炭素の排出量がその比較検討によく用いれられます。これは、さまざまに存在する事業のほとんどで二酸化炭素を排出するため、各事業が気候変動に与える影響を比較するのに二酸化炭素の排出量が便利だからです。

本日ご紹介した記事のテーマである「生物多様性」については、そうした指標が今後出てくるでしょうか?

私は、生物多様性全般を横断的に評価する指標を定めるということが意義のあることなのか、疑問に感じます。生物多様性においては、その課題も多様であり、各課題の重要度、解決策の甲乙の付け方も多様であるといえます。こうした場合には、指標もそれを利用する個々人の価値観によって大きく異なる可能性があります。

生物多様性においては、横断的な指標を用いることよりも、各課題に対して問題意識を持つ人たちに「刺さる」個別指標を、わかりやすく「デリバリーする」ことが重要であり、そのための「情報開示の標準化」の方が重要だと考えます。

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小売りとブロックチェーン:製品の安全性と偽造の防止

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

本日は、海外有識者のオピニオンをご紹介します。

有識者:Michelle Ann Gitlitz, Cheryl A. Falvey & Justin Porter @crowell&moring
URL:https://www.retailconsumerproductslaw.com/2020/07/blockchain-the-retail-industry-product-safety-and-counterfeiting-use-cases/
掲載日:7月24日

オピニオン内容

    • ブロックチェーンは製品の安全性の向上、リコール費用の削減、偽造品との闘い等で小売業者のリスク管理と顧客保護に貢献可能だ。製品の安全性を高めるためにサプライチェーンのトレーサビリティを高めることは、長い間、米国連邦規制当局の目標であった。「より安全な製品を製造するためのCPSCハンドブック」(2006年)内で禁止されている材料の不注意な使用を防ぐために、原材料、完成品、半製品の明確な識別とラベル付けがコンプライアンスを確保するために不可欠であるとしている。
    • 例えば、リコールが必要な不良品が発生した場合、不良品の特定、製造業者が影響を受ける製品のバッチの特定、サプライヤーの特定、部品の交換等の計画立案、リコール開始が容易になる。これにより、リコールに関係する製品のみを即座に分離し、迅速な対応が可能になるため、リコールの影響とコストを最小限に抑えることができる。廃棄物の削減とコストの削減にもつながる。ブランドの評判は保護され、リコールの悪影響は最小限に抑えることができる。
    • ブロックチェーンとIoTの組み合わせで、偽造も防止できる。サプライヤーとメーカーが単一のブロックチェーンプラットフォームに参加し、「スマートタグ」(一意の暗号識別子)を使用することで、正規の検証済みタグと製品のみがブロックチェーンに入力され、タグ付けされた各アイテムまたはバッチを、製造、出荷、流通、および販売の各段階で追跡可能になる。スマートタグは製品の完全な来歴を記録しているため、複製するのが困難となる。

トークンエクスプレス社のひとこと

規制が動くとき、産業が動きます。産業発展の方向を変える必要があるときの手段の一つが規制ともいえます。トレーサビリティにおけるブロックチェーン技術の持つ可能性は既に広く認識されていますが、そのトレーサビリティがBetter to have(あるとより良い)から、Must have(なければならない)になるために、規制の変更は有効な手立ての一つです。

小売り分野は、消費者保護のために多くの規制がありますが、それでも完全ではありません。一方で、規制が動くためには、優れたユースケースが世の中に提示されて、社会や行政(政府等)が、そのユースケースが一般になるべきだと考えるほど、そのユースケースが広く認知されることが必要です。

すなわち、企業等が中心になって、実例を一つでも多く作っていくことが、現時点では最も重要です。

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ルクセンブルグの社会的責任投資リーダーの視点

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

有識者:Nathalie Dogniez of PWC in Luxembourg @DELANO
URL:https://delano.lu/d/detail/news/green-finance-systematic-consideration-sustainability-risks/211130
掲載日:7月24日

オピニオン内容

    • PwC(訳者注:PricewatherhouseCoopers、ロンドンを本拠とする世界4大会計事務所の一つ)のルクセンブルグのパートナー社員であり、持続的投資分野のリーダーでもあるNathalie Dogniez女史は、20年以上前にマイクロファイナンス(訳者注:発展途上国を中心に広がっている、低所得者層向け小口金融のこと)に出会い、持続的投資分野に関わることとなった。まず彼女は社会的責任投資(Social Responsible Investment、SRI)に関して関心を寄せ、そこから派生したESGアプローチ(環境、社会、企業統治の側面に配慮した投資手法)のうち特に環境面において自身の信念に基づいた活動を行うようになった。彼女はルクセンブルグ投資業協会(the Association of the Luxembourg Fund Industry)に対して、SRIワーキンググループを立ち上げるよう提案し、自身がその議長となった。
    • 彼女は今、持続的投資にかかる真の革命が眼前で起こっており、投資における非財務的要素とそのリスクに係る体系的な検討が真剣になされているという。彼女はよく「ESG準拠」の判断根拠となる定義について問われるが、「ESG」と「準拠(予め定められた物事に追従・迎合すること)」は相矛盾する用語と言い、世界共通のESGの定義と手法は存在しないという。投資家の価値観を反映した投資となることが、標準的な定義や手法に則ることよりも重要だというのだ。例えば、生態系の保護に関心のある投資家は、アルコール産業への投資の是非について関心を持たない可能性があり、それが否定されることではない、という趣旨である。持続可能性の概念は、個人的な概念であるとし、その投資の責任は個人が負うべきであって、それはすなわち、金融商品の持続可能性へのアプローチ方法にかかる透明性(説明責任)が重要な要素であることを示す、としている。

トークンエクスプレス社のひとこと

私が社会的責任投資(SRI)という言葉に出会ったのは8年ほど前だったかと記憶しておりますが、当時は全くマイナーな言葉であり、ごく限られた一部の理想主義的な人々の夢、というような扱いだったと記憶しています。それが実は20年も前からあった概念だったというのは驚かされました。

マイクロファイナンスは1970年代から存在しています(有名なグラミン銀行が融資を開始したのは1976年です)。1990年代頃からマイクロファイナンスへの原資の出し手が、開発金融機関(途上国の社会開発・経済開発に取り組む金融機関)から社会投資家や資本市場に移行しました。その後、ビル・ゲイツと世界銀行が協力し、マイクロファイナンスの提供者と各国の市場環境に関する世界的な調査を実施しました。この標準化された指標に基づいた世界レベルの調査によって、国境を越えるマイクロファイナンス投資が加速しました。

本日ご紹介したNathalie Dogniez女史同様、私も2013年から2016年までエジプトでマイクロファイナンスの実務に関わる中で、営利と両立する社会的責任投資の可能性に目覚めました。ルーツが似ているため、ESG投資・評価に関する彼女のスタンスに共感できるのかもしれません。

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ブロックチェーン技術、ケニア農村部での電力取引をアップデート

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

本日は、海外有識者のオピニオンをご紹介します。

有識者:LEOPOLD OBI & FAUSTINE NGILA @ Daily Nation
URL:https://www.nation.co.ke/kenya/business/technology/blockchain-technology-boost-power-access-1762064
掲載日:7月14日

オピニオン内容

    • Hivos East Africa(環境と再生可能エネルギーのNGO)と地元のテクノロジー企業Bithub社は、共同でブロックチェーン技術を用いたスマートグリッドソーラーテクノロジーを用いて、ソーラーパネルを所有する村人が余剰電力を隣人に売却できるシステムを、ケニア共和国の村でパイロット実施中。
    • ブロックチェーン技術を用いて、このマイクログリッドシステムを通じた配電、購入に関する全データを記録・保持しハッキングまたは変更操作を防止。すべての売り手と買い手はシステムに登録され、このミニグリッドは、監視コンピューターに接続される。電話で短いコードをダイヤルすることにより、販売あるいは消費したした電力量、1か月の売上金額、消費金額を確認できる。
    • ユーザーは大きな資本コストなしでクリーンエネルギーにアクセスできるようになる。農村地域全体にとって電力アクセスが向上。ブロックチェーン技術で太陽光発電をトークン化を自動化できるため、ユーティリティの必要性を否定し、低価格を実現。本パイロット事業が成功すれば、同モデルをケニア人の70%が住む農村地域に応用可能。
    • ブロックチェーンベースの電力市場では、すべての電力生産主体が、全生産電力に紐づけられたデジタルIDを受け取る。エネルギーと石油の規制当局がエネルギーの規制を集中管理している現況とは対照的に、システムは分散化され、不当な電力価格の変動、カルテルによる汚職および管理ミスなどを最小限に抑えることが出来る。
    • 大規模な電力アクセスギャップがあるアフリカにおいて、ブロックチェーンを用いた電力共有を可能にするモデルは、農村経済を開拓するための最も潜在的なソリューションといえる。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 電気は蓄電池等を活用した貯蔵も可能ですが、ロスが大きいため、生産された瞬間に発電場所の周囲に存在する需要を満たし、その価値の提供分を別の形で回収することができると理想的と言えるでしょう。別の形での回収というのは、電力料金としての収入などです。大きな系統であれば当然ながらそうした仕組みが備わっていますが、アフリカの農村のソーラーパネルといった極小の発電設備でもそうした仕組みを、一定の信頼性のある形で、ブロックチェーンを使って提供可能だという記事です。
    • アフリカの農村で個人が設置するソーラーパネルなど極めて小規模なものですから、ブロックチェーンを用いた仕組みといっても、電力提供量の記録機能以上のものにはならないと考えられますが、もう少し大きな規模で考えると社会へのインパクトがある可能性を感じます。すなわち、数メガワット規模の村落規模の発電設備、もしくは数十メガワット規模の町レベルの発電設備等での電力取引が記録でき、その取引実績に基づいて利用料金の支払いや社会生活上のサービスの提供等が行われると、積極的に発電事業を営もうとする主体が現れる可能性があります。その動きが広がっていけば、中央集権的な電力市場に対する分散型の電力市場が、時間をかけて形作られていくかもしれません。
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ブロックチェーンが貢献しうる、政府腐敗の対策5分野

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

本日は、海外有識者のオピニオンをご紹介します。

有識者:Rachel Davidson Raycraft & Ashley Lannquist @World Economic Forum
URL:https://www.weforum.org/agenda/2020/07/5-ways-blockchain-could-help-tackle-government-corruption/
掲載日:7月13日

オピニオン内容

ブロックチェーンは、耐改ざん性、永続的なデータベースと記録保持の特性によって、世界中の民主的ガバナンスと持続可能な開発に重大な影響を与えることができる。具体的には、透明性、説明責任、市民の関与の向上という価値を提供できる。

腐敗は、ブロックチェーンだけで防ぐことはできず、法的枠組みおよび構造と組み合わせる必要がある。特に必要となるのが、一貫した法執行機関、正確な情報入力、適切な技術的ノウハウ、協力的な政治家、および社会的善意である。一方で、実装コストや拡張可能性、十分な情報を得ていない政策立案者等は障壁となりうる。

(1)公共調達、(2)土地所有権登録簿、(3)デジタル投票、(4)企業所有権レジストリ、(5)助成金支給の5分野における政府腐敗への対策にブロックチェーン技術導入をもって取り組んだ場合の、それぞれのメリットとその限界を以下に記述する。

(1) 公共調達

《メリット》ブロックチェーンベースのプロセスは、改ざん防止トランザクションの監視を容易にし、スマートコントラクトで客観性と均一性を向上可能。トランザクションとアクターの透明性と説明責任を強化。

《限界》ブロックチェーンプラットフォームへのアクセスが容易であるほど、悪用に対する脆弱性が高まる。攻撃は、システムに無用または悪意のある情報を溢れさせる。また、オフラインで共謀、贈収賄等が発生し続ける場合、ブロックチェーンベースの腐敗防止の実効性が薄れる。

(2) 土地所有権登録簿

《メリット》ブロックチェーンベースの土地登記簿は、個人が自分の土地への権利を明確に証明できる、安全かつ分散化され、公に検証可能で不変の記録システムを提供できる。

《限界》土地登記が存在しない、不完全であるような国では、ブロックチェーンベースの土地所有権登記簿が機能する前に、これらの情報を収集、クリーニング、デジタル化するプロセスを経る必要がある。

(3) 電子投票

《メリット》ブロックチェーンによって分散性、透明性があり、暗号化され不変性を確保することで、選挙の改ざんを最小限に抑え、民主的プロセスへの信頼と参加を高めるのに役立つ。

《限界》サイバー攻撃やその他のセキュリティの脆弱性が問題。投票操作、紙の証跡消去、または選挙の混乱を引き起こす可能性がある。顔認識などの生体認証を使用する場合、有権者の識別で偽陽性・偽陰性が起こりうる。

(4) 利益関係にある企業所有権データベース

《メリット》利益相反と犯罪活動を追跡するため、利益関係にある企業所有権に関するデータベースが開発されているが、改ざん防止機能があり、広くアクセス可能なブロックチェーンベースのものは、非常に高い透明性を提供できる。

《限界》企業所有権データベースは一般的ではなく、他の関連データベースは適切な検証システムを欠いている。包括的で検証可能な企業所有権に係るブロックチェーンベースのデータベースの採用には、政治家、弁護士、銀行、および大企業からの賛同が必要だが、彼らは必ずしも賛同していない。

(5) 助成金の支払い

《メリット》ブロックチェーンは、人々の信頼を向上させることができる。助成金の授与、支払い、および管理に関与する主体の数削減、プロセス合理化、コスト削減等につながる。

《限界》受給者がブロックチェーンベース助成金の支払いを管理するのは困難。技術に精通していなかったり、リソースが不足でシステムを使用できなかったりする場合、助成金の支払いプロセスから差別または除外される可能性がある。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 政府の腐敗というのは様々なパターン・経路がありますが、そのなかでブロックチェーンが対策に貢献しうる5分野についての記事です。基本的にはデータの改ざんや不透明性が腐敗の温床になりうる分野が挙げられているといえます。
    • 耐改竄性のあるデータベースや情報の透明性の向上そのものは、そのデータベースの管理者が社会的信用を有しており、かつ、しっかりとした業務遂行のプロセスを定めていれば、従来型のデータベースでも問題なく実現できる可能性を持っています。問題は、政府の腐敗を管理するためのデータベースの管理者が民間企業である場合、そうした情報を管理するに足るほどの社会的信用を当該企業が保持することができず、かといってそれほどの信用を持つ主体は、腐敗の被監視主体である政府くらいしかいない、という点です。
    • ブロックチェーンの、特定の管理主体を持たずともデータ管理を行うことができる仕組みが、まさにここに活きてくることになります。特定の管理者がいないということは、特定の管理者がいる場合よりも、システムとしての信用力を持ちうる、ということです。
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ブロックチェーン、ESGをより意味のあるものにするか?

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

本日は、海外有識者のオピニオンをご紹介します。

有識者:Sean Stein Smith @ Forbes
URL:https://www.forbes.com/sites/seansteinsmith/2020/07/08/blockchain-could-be-the-key-to-making-esg-reporting-more-meaningful/#13c4d4a339d2
掲載日:7月8日

オピニオン内容

    • 環境、社会、企業統治(ESG)に関してのレポーティング需要は急速に増加。テクノロジーと持続可能性は必ずしも密接に関係しているわけではないが、暗号通貨の領域を超えて急成長しているブロックチェーンの台頭は、ESGレポーティングの改善に貢献できる可能性がある。
    • デジタル化及び自動化、それ自体は新しいトレンドではないが、ブロックチェーンはおそらく、過去10年ほどの中でこれらのトレンドの中で最も有力といえる。ブロックチェーンは、暗号資産市場が低迷しているにもかかわらず、財務報告及びさまざまな証明のツールとして急速に変化。持続可能性やコーポレートガバナンスへの注目も、新しい傾向ではない。しかし、どちらもゆっくりと着実に組織運営とレポーティングに浸透してきている。
    • ESGや他のサステナビリティ情報に関するレポーティングの課題は、グローバルに適用される統一基準がないこと。例えば、炭素排出問題に関するフレームワークやガイドラインは、確立しようとしても、激しい反発にあうことが多い。財務報告でいえば会計原則(GAAP)や国際財務報告基準(IFRS)という基準があるが、ESGにはないのである。ブロックチェーン技術がもつレポートフレームワークと標準化の適用で、透明性と一貫性を向上させ、この情報の有用性を高めることができる。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • ブロックチェーンが持続可能な社会づくりに貢献できる技術であるという上記有識者の視点は、まさに弊社の信念と近しいものであり、興味深い記事だと感じました。
    • 上記の記事は、大量の市場資金を持続可能な社会づくりのために活用させる可能性を持つESGレポーティングの標準化と、ブロックチェーンの活用を結び付けています。上記記事ではブロックチェーンを用いれば、システム上に構築する様式の強制力と、ブロックチェーン上のデータの可視性から、ESGレポーティングの様式の標準化が可能だという論旨です。
    • しかし、システム上でESGレポーティングにかかるフレームワークを構築することと、そのデータに可視性をもたせることは、ブロックチェーンでなくても、従来のデータベースでも可能なことです。この記事の説明振りだけでは、なぜブロックチェーンを用いる必要があるのかという、ブロックチェーン推進派がよく直面する厳しい問いに答えられないでしょう。
    • ブロックチェーンは、多様な主体がデータを共同で管理できる点に強みがある技術です。そのため、各社のESGレポーティング情報を特定の限定的な企業や組織ではなく、世界全体で共同管理することが合理的だと言える場合に初めて、ブロックチェーンの活用を前提としたESGレポート管理の議論が可能となると考えます。
    • ESGレポートとブロックチェーンの関係でいえば、その様式の標準化のための活用よりもむしろ、ESGレポーティングの根拠となる情報収集等において幅広くブロックチェーンの活用余地があると、弊社は考えます。
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ブロックチェーン技術でバッテリーのサプライチェーンを可視化

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

本日は、海外有識者のオピニオンをご紹介します。

記者:PV Magazine(Alexander Preston@SAFE)
URL:https://www.pv-magazine.com/2020/07/04/the-weekend-read-adding-blockchain-to-battery-supply-chains/
掲載日:7月4日

オピニオン内容

    • 携帯電話、電気自動車、および代替エネルギーの需要が増加し続けているため、バッテリーのサプライチェーンは重要なテーマ。エンドユーザーが、バッテリーの原材料調達、加工、製造過程で環境、人道、および社会へ与えた影響を追跡することはほぼ不可能だった。ブロックチェーン技術の実装により、バッテリー材料の来歴に可視性を与えることができるようになる。
    • サプライチェーンのトレーサビリティは、責任ある調達に関する投資の観点からも重要。サプライチェーン上の多様なアクターがそれぞれ独自に記録を保持しているため、非効率で、セキュリティの問題が発生する傾向にある。しかし、ブロックチェーン技術の適用し、単一データベースにすべてを記録することで、エラー減少、リスク軽減、ビジネスプロセスの簡素化、仲介者の減少による取引コスト減も見込まれる。例えば鉱物の追跡にブロックチェーン技術を使用した成功例の1つは、ダイヤモンド業界。De Beersは、Tracr(ダイヤモンドの採掘時にデジタルバージョンが作成され、鉱山の起源から最終顧客まで追跡するシステム)を独立した企業として設立し、業界に普及。
    • ある時点のサプライチェーン関連書類は膨大。例えば、国、倉庫、港湾、処理業者等の間で材料が移送されると、相互に依存する大量の書類が作成される。手動のやり取りでは、常にエラーや破損のリスクが存在する。ブロックチェーン技術適用により、各トランザクションが瞬時にブロックチェーンに保存され、エラーがすぐに表示されるようになる。さらに、書類間の関係をすべて公開で検証することができ、ドキュメントの改ざんは事実上不可能となる。
    • ブロックチェーン技術の適用を通じて、すべての利害関係者が、あらゆる材料のライフサイクルの信ぴょう性に関する標準化されたデータへリアルタイムにアクセスできるようになる。これにより、コンプライアンスを確保のためのコスト削減や情報漏洩のリスク軽減にもつながる。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • あらゆるモノにサプライチェーンは存在するものの、サプライチェーンの「重要性」、すなわちどの製品のサプライチェーンが特に管理を必要とするのかは、原油や軍事利用製品等、極端に重要性の高い物品を除いて、普段ほとんど意識することがないでしょう。これはサプライチェーンを「可視化」することが、これまでの技術ではとても実現できなかったからだと考えます。目の前にあるのは製品だけであり、その来歴は目に見えないからこそ、そのサプライチェーンが重要性などには思考が至らないのです。
    • しかし、ブロックチェーンという技術の誕生により、サプライチェーンの可視化が可能になりました。結果として、ブロックチェーンに載せて管理しようとする対象になったサプライチェーンが、社会的・経済的に重要なサプライチェーンなのだとわかるようになりました。これはとても興味深いことです。
    • 一方で、技術的に管理が可能になったとしても、その実践にはまだ大きなコストがかかります。多くの関係者を巻き込んでサプライチェーンのブロックチェーン管理を実現するためには、その実現によってコストを上回る大きな便益を得る旗振り役が必要です。
    • 冒頭よりお話ししている「サプライチェーンの重要性」という観点でも、結局は「誰にとって重要なのか」という視点が存在し、それが、ある特定の社会にとって重要であるという場合は公的な機関が旗を振るでしょうし、ある特定の企業にとって重要であればその企業が旗を振るということになるでしょう。

関連記事
サプライチェーンでのブロックチェーン利用はどのように広まるか
(本ブログ4月16日記事)

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ビジネス管理ツールとしてのESG、その課題と対策

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メディア:MINING REVIEW AFRICA
URL:https://www.miningreview.com/environment/esg-harnessing-this-vital-business-management-tool/
掲載日:7月6日

オピニオン内容

    • 事業投資および事業管理における環境、社会、企業統治(ESG)側面の勘案は、既に確立したアプローチと言えるだろう。環境面、安全面、持続可能性に関する要素を事業報告に盛り込むことは新しいことではない。そうした非財務的情報の報告要請は1990年代には存在し、1960年代には社会的責任投資の一部として組み込まれていた。以前と異なるのは、ESGに関連するリスク/機会とその財務的価値が、ビジネス管理のツールとして認識されていることだ。重要なことは情報が適切に経営層に理解され、企業内で対応されるかどうかである。すなわち、理解しやすい情報の提示と解釈が重要であり、情報の受け手について発信側が理解する必要がある。
    • 多くの場合、ESGレポートは遅行指標のみを使用する。また、使用されている指標の階層が多すぎるか正しくないため、重要な要素が隠されてしまう。これに対応するには、①ESGレポートの発行者が、情報の受け手に合わせて発信する情報のコントロールをすること、②ESGレポートにおいて常に新しいトレンドとリスク指標を組み込むこと(結果として動的な指標管理となる)等である。これらを常に認識しつつ、ESGレポートの内容を絶えず見直し、継続的に進化させる必要がある。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 本日ご紹介した記事は鉱業分野のメディアに掲載されていたものです。鉱業分野はESGの観点でリスクの大きい産業と言え、記事の中にあるとおり、歴史的にも早い段階から持続可能な開発に関する情報開示に取り組んできたようです。
    • 本日の記事はESGに関する情報発信の実務面について詳述しており、特にESGレポートが社会とのコミュニケーション手段であること(そのため受け手に合わせた発信がひつようであること)、用いる指標が遅行指標となりがちであること(ESGの枠にとらわれずに先行指標の観測、発信が求められること)の重要性を説いています。
    • 弊社としても記事の主張に全く同意します。一方で、実務でそれを行うのは発信者側の負担も大きく、発信者側においてその発信関連業務が合理化され、一定程度自動化されていることが必要だと考えます。
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ブロックチェーン技術が「ディープフェイク」の拡散防止に貢献しうる

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

本日は、海外有識者のオピニオンをご紹介します。

有識者:Naveen Joshi @BBN Times
URL:https://www.bbntimes.com/technology/can-blockchain-prevent-deepfakes
掲載日:6月30日

オピニオン内容

    • ブロックチェーン技術を使って動画の信憑性を検証することで、「ディープフェイク」を用いたデマ情報の拡散を減らすことができる。ディープフェイクとは、説得力のある画像やオーディオ、動画を作成し、デマ拡散のために人工知能を使用すること、およびそれによって作成された動画コンテンツを指す。
    • ディープフェイクの一部は、それとわかるように完全に娯楽目的で作成されるが、悪意をもって本物であるかのようにみせることもできる。その拡散を防ぐために、ブロックチェーン技術を用いて、動画等の来歴を検証可能にすることは、対策のひとつといえる。
    • 例えば、最初の動画の発信元が、録画時に暗号化ハッシュを動画に割り当て、暗号で署名する。動画のアップロード、ダウンロード、編集等のすべての来歴を、発信元による検証を経たうえでスマートコントラクトに書き込む。ブロックチェーンの特質である不変性によって、一度入力されたハッシュ値は変更できない。そのため、各段階でハッシュ値をソースと比較し、データセット間に不一致があれば、動画が改変されたことを証明できる。これにより、動画の来歴とその完全性が保証され、トレーサビリティが向上する。
    • ブロックチェーンは、ディープフェイク識別のための取り組みを改善できるが万能な解決策ではない。AIのような他のテクノロジーと組み合わせて、ディープフェイクによって拡散された誤情報をより識別しやすくするツールを用意することは、対策のひとつとして有効といえる。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 先日ご縁をいただいて、目白大学メディア学部メディア学科の学生様に、弊社をオンライン訪問いただきました。そのときの様子はこちらの目白大学様のウェブサイトに掲載いただいております。その際に興味深かったのは、メディアに興味をお持ちの学生様たちに「持続可能な社会をつくるために、対処しなくてはならない社会的な課題として、何が思い浮かびますか?」と質問したところ、その答えが「フェイクニュースへの対応」だった点です。本日ご紹介した記事のディープフェイクは、フェイクニュースを構成する要素の一つですが、既に顕在化し、今後さらに人々を混乱させていく社会課題と言えるでしょう。
    • ブロックチェーンはその課題の一部分に対応する能力を持ちます。しかしながら、ご紹介した記事にもあるとおり、完全にディープフェイクを打ち破れるわけではありません。例えば、動画の発信元が悪意をもって偽の動画に暗号化ハッシュを割り当てた場合、事の発端からディープフェイク動画がブロックチェーン上で取り扱われることとなります。
    • ただ、その最初の発信元が、社会的信用を得ているメディアであり、そのメディアが信用を裏切りたくないインセンティブを十分に持つ場合には、その動画の拡散過程でディープフェイクにすり替えられるという可能性を低減させることができます。
トークンエクスプレス株式会社では、国内外の持続可能な社会づくりに寄与する事業・プロジェクトの企画、構築、運用サービスを提供しています。ブロックチェーン技術に知見がありますが、その利用を前提とするものに限りません。
ご関心ある方は、お問い合わせページからお気軽にご連絡ください。