米食品メーカー、コーヒーのサプライチェーン可視化と社会課題解決へ

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典が英語のニュースをご紹介します。

記者:RACHEL WOLFSON @Cointelegraph
URL:https://cointelegraph.com/news/jm-smucker-uses-ibm-blockchain-to-trace-coffee-beans-for-1850-brand
掲載日:7月15日

ニュース内容

    • アメリカの食品メーカーJM Smucker Company社(Smucker’sとして有名)は、消費者が、コロンビアのコーヒー豆を生産地から工場、輸出業者、輸入業者までのコーヒーの歩みを直接追跡し、コーヒー農家を支援できる機会を提供すると発表。これらの情報はブロックチェーン技術を用いて、不変の台帳に記録され、サプライチェーン全体の説明責任を高め、製品の信頼性を確保する。
    • 同社は、農業のサプライチェーンにおける透明性と持続可能性の向上に取り組むスイスの企業Farmer Connectとパートナーシップを結び、IBMのブロックチェーン技術を活用して、Smucker’sの1850コーヒーブランドのコーヒー豆を追跡する。消費者は、各コーヒーの袋張り付けられているQRコードをスキャンすると、コーヒーの栽培、加工、輸出の場所、およびローストの場所に関する情報が提供されるウェブサイトにアクセスできる。このシステムは、Farmer Connectのモバイルアプリ「Thank My Farmer」を使用している。
    • コーヒーは、価格が大きく変動する商品で、2014年の高値以降、農家に支払われる価格は70%急落。一部の国では、生産コストが販売益を上回ることもある。コーヒー農家に支払われる価格は、Cマーケットの価格(訳者注:アラビカ種のコーヒー豆が取引されているニューヨークのマーケット。世界中のコーヒー豆の取引価格の参考値として使用される。)に基づいている。ここ数年コーヒーのC価格は農家の生産コスト(0.80〜1.10ドル)を中心に推移。つまり農家にほぼ利益がないことを意味する。
    • Smucker’s 1850コーヒーを購入した消費者は、このような状況下にあるコロンビアのコーヒー生産者とその家族を支援するFarmer Connectプロジェクトへ寄付することもできる。学校での清潔な飲料水、小規模農家のためのコーヒー苗、地元の学校のための学用品を提供するプロジェクト等を支援できる。

トークンエクスプレス社のひとこと

ブロックチェーンを用いたサプライチェーンの見える化、それによる生産者情報の提示までは、世界にいくつか取り組み事例が見られてきた昨今ですが、そこで可視化された情報を用いて社会課題にアプローチするという取り組みは一歩進んだものだと感じます。

コーヒー産業というのは洒脱なイメージがありますが、実際には特に農業生産側において多くの課題が指摘される産業です。ブロックチェーンという技術を用い、まず一般に課題が知られる土壌を作り、その課題解決の事業につなげていくというアプローチは、今後広まっていくのではないでしょうか?

トークンエクスプレス株式会社では、国内外の持続可能な社会づくりに寄与する事業・プロジェクトの企画、構築、運用サービスを提供しています。ブロックチェーン技術に知見がありますが、その利用を前提とするものに限りません。
ご関心ある方は、お問い合わせページからお気軽にご連絡ください。

ベトナム初、ブロックチェーン上に学士号を発行

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典がフランス語のニュースをご紹介します。

出典元:AUF
URL:https://www.auf.org/nouvelles/actualites/premiere-universite-vietnamienne-delivrant-des-diplomes-de-licence-par-la-technologie-blockchain/
掲載日:7月14日

ニュース内容

    • 7月11日、ベトナムのホアセン大学は579名の卒業式を開催し、ベトナムの大学で初めて正式にブロックチェーン上に卒業証書を発行した。
    • ホアセン大学(UHS)は、ブロックチェーンによる学士号の正式発行を行うため、2019年3月からフランコフォニー大学協会(AUF)の支援を受けて実験プロジェクトを実施した。UHSはあらゆる種類の卒業証書、証明書、またはトレーニング証明書をブロックチェーン上で発行するために、フランスのスタートアップBCdiplomaが提供する改ざん不可能なソリューションの恩恵を受けている。これらの卒業証書、証明書の保有者は、永久的に有効なURLを受け取る。
    • 卒業証書の発行における新興技術の適用は、農業、教育、公衆衛生分野における実際の問題に対する具体的な解決策を提供するための、応用研究を行うことを目的としたUHS戦略の一部である。このため、UHSは、2019-2020年度に発行されたすべての学士号を対象にすべく、BCdiplomaとの実証試験範囲を広げてきた。

トークンエクスプレス社のひとこと

学位データにおけるブロックチェーン利用について、ベトナムで実装例がでてきました。フランスのスタートアップBCdiplomaがサービスを提供しているとのことですが、BCdiplomaのウェブサイトに行くと、他にも既にいくつか、フランスやメキシコ等の大学がBCdiplomaのサービスを用いて卒業証書等を発行しているようです。

本日ご紹介した元記事のページを見ると、紙ベースの卒業証書の授与の様子が写っているので、ブロックチェーン上の卒業証書は、紙の卒業証書の補完的位置づけで発行されているようです。とするならば、大学としてはブロックチェーン上で卒業証書を発行するリスクはかなり低いといえます。今後多く現れるであろう卒業証書のブロックチェーン上の登録サービスのなかで、どの業者にお願いしようか、大学が選択する時代も間もなくやってくるでしょう。そのような中で、フランス語圏の大学ネットワークであるフランコフォニー大学協会(AUF)と組んでフランス外の大学にも既にサービスを提供しているBCdiplomaは戦略的な先行者と言えます。

関連記事①
仏リール大学とEMリヨン経営学大学院、学位証明のブロックチェーンを開始
(本ブログ4月2日記事)

関連記事②
ブラジル、偽学位証書に対抗するブロックチェーンを開発

(本ブログ3月22日記事)

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中国北京市は自治体によるブロックチェーン活用でリードする意気込み

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典が英語のニュースをご紹介します。

記者:ELIZA GKRITSI @TechNode
URL:https://technode.com/2020/07/16/beijing-unveils-plan-for-blockchain-based-government/
掲載日:7月16日

ニュース内容

    • 7月16日、中国首都・北京市政府が、むこう2年間で「プログラム可能な行政(Programmable Government))を実現するための、145ページも及ぶ実行計画案を発表。今後どのようにブロックチェーン技術を適用・活用するかについての詳細を北京市が発表したのはこれが初めて。
    • この計画の目的は、電子政府のためのブロックチェーンベースの統合された枠組みを構築し、政府機関と企業間のデータ共有を促進し、組織横断および地域横断のコラボレーションを可能にすること。さらに、北京市が分散型台帳技術の開発と応用に関するグローバルハブにもなりたいと考えている。
    • 政府は声明内で、140もの政府サービスがブロックチェーンを既に使用していると述べた。例えば、企業間のデータ連携、新型コロナ感染症対策等。
    • 市は民間部門のイノベーション支援も計画。ブロックチェーンのスタートアップを支援するための資金「タレント・トレーニング・システム」も開設。
    • 以前、中国においてブロックチェーン、特に暗号通貨は疑いを持って見られていた。しかし、10月、習近平が演説でブロックチェーンを称賛して以来、中国におけるブロックチェーン技術の扱いが逆転。北京は、ブロックチェーンに基づく公式戦略を発表する中国の11都市の1つである。

トークンエクスプレス社のひとこと

昨年10月に習近平国家主席がブロックチェーン技術の振興を図る考えを示し、それに呼応する形で中国の地方政府が積極的にブロックチェーン技術活用を模索しています。北京については今月に入ってから特に英語、フランス語の報道が多く、本ブログでも取り上げてきました。

関連記事①
北京市、ブロックチェーン産業奨励のため新しい2カ年計画を発表
(本ブログ7月6日記事)

関連記事②
中国の裁判所、資産保全のための”電子シール”にブロックチェーン利用
(本ブログ7月11日記事)

ブロックチェーンを国家として推進していくという習主席の意思の表明により、各地方政府がしのぎを削ってブロックチェーン活用の模索をしています。国のトップがひとこと発するだけで、地方政府を揺さぶり、その周辺にいる民間企業の振興が期待される構図は、中国のような国のダイナミズムだと感じます。

本日ご紹介した記事は、以前本ブログで7月6日に扱った記事とは異なり、地方政府が、地元のブロックチェーン産業を振興する「サポーター的役割」に留まらず、自らの行政チャネルにおいてその適用を行っていくという意思表明です。ブロックチェーン産業側からみれば、大きな実証実験の門戸が開かれつつあると見えるでしょう。

北京市が選定したという12のブロックチェーン適用分野には、空港国際物流の情報管理や港の通関手続きや、不動産登録等の行政サービスにおけるブロックチェーン活用、企業横断で活用できる請求書発行・管理システムとしての提供等、まだ世界で模索中の例が多く含まれています。こうした分野は、先に標準規格を作った国、自治体、企業が、後から参加する主体と比べて多大な先行者利益を得る分野です。

国家の大号令のもと多くの機会が生まれ、地方政府も企業も一体となって事例を積み上げ、標準化していってしまう勢いは、恐るべきものです。

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ブロックチェーン技術、ケニア農村部での電力取引をアップデート

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

本日は、海外有識者のオピニオンをご紹介します。

有識者:LEOPOLD OBI & FAUSTINE NGILA @ Daily Nation
URL:https://www.nation.co.ke/kenya/business/technology/blockchain-technology-boost-power-access-1762064
掲載日:7月14日

オピニオン内容

    • Hivos East Africa(環境と再生可能エネルギーのNGO)と地元のテクノロジー企業Bithub社は、共同でブロックチェーン技術を用いたスマートグリッドソーラーテクノロジーを用いて、ソーラーパネルを所有する村人が余剰電力を隣人に売却できるシステムを、ケニア共和国の村でパイロット実施中。
    • ブロックチェーン技術を用いて、このマイクログリッドシステムを通じた配電、購入に関する全データを記録・保持しハッキングまたは変更操作を防止。すべての売り手と買い手はシステムに登録され、このミニグリッドは、監視コンピューターに接続される。電話で短いコードをダイヤルすることにより、販売あるいは消費したした電力量、1か月の売上金額、消費金額を確認できる。
    • ユーザーは大きな資本コストなしでクリーンエネルギーにアクセスできるようになる。農村地域全体にとって電力アクセスが向上。ブロックチェーン技術で太陽光発電をトークン化を自動化できるため、ユーティリティの必要性を否定し、低価格を実現。本パイロット事業が成功すれば、同モデルをケニア人の70%が住む農村地域に応用可能。
    • ブロックチェーンベースの電力市場では、すべての電力生産主体が、全生産電力に紐づけられたデジタルIDを受け取る。エネルギーと石油の規制当局がエネルギーの規制を集中管理している現況とは対照的に、システムは分散化され、不当な電力価格の変動、カルテルによる汚職および管理ミスなどを最小限に抑えることが出来る。
    • 大規模な電力アクセスギャップがあるアフリカにおいて、ブロックチェーンを用いた電力共有を可能にするモデルは、農村経済を開拓するための最も潜在的なソリューションといえる。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 電気は蓄電池等を活用した貯蔵も可能ですが、ロスが大きいため、生産された瞬間に発電場所の周囲に存在する需要を満たし、その価値の提供分を別の形で回収することができると理想的と言えるでしょう。別の形での回収というのは、電力料金としての収入などです。大きな系統であれば当然ながらそうした仕組みが備わっていますが、アフリカの農村のソーラーパネルといった極小の発電設備でもそうした仕組みを、一定の信頼性のある形で、ブロックチェーンを使って提供可能だという記事です。
    • アフリカの農村で個人が設置するソーラーパネルなど極めて小規模なものですから、ブロックチェーンを用いた仕組みといっても、電力提供量の記録機能以上のものにはならないと考えられますが、もう少し大きな規模で考えると社会へのインパクトがある可能性を感じます。すなわち、数メガワット規模の村落規模の発電設備、もしくは数十メガワット規模の町レベルの発電設備等での電力取引が記録でき、その取引実績に基づいて利用料金の支払いや社会生活上のサービスの提供等が行われると、積極的に発電事業を営もうとする主体が現れる可能性があります。その動きが広がっていけば、中央集権的な電力市場に対する分散型の電力市場が、時間をかけて形作られていくかもしれません。
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スリランカ中央銀行、ブロックチェーンベースのKYCに向け前進

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典がフランス語のニュースをご紹介します。

記者:NICHOLAS SAY @Coin.24
URL:https://coin24.fr/actualites/le-sri-lanka-designe-des-entreprises-pour-travailler-sur-le-systeme-kyc-base-sur-la-blockchain/
掲載日:7月13日

ニュース内容

    • スリランカ中央銀行は、概念実証段階にあるブロックチェーンベースの本人確認(Know Your Customer, KYC)システム開発のための開発業者を絞り込んだ(開発者のショートリストを作成した)。昨年、スリランカ中央銀行は、銀行のセキュリティと詐欺防止を強化するために、ブロックチェーン技術を同国の銀行システムに統合したいと述べていた。現在、中央銀行はどのようなタイプのプラットフォームを開発できるかを発表しようとしている。
    • 同行のD.Kumaratunge理事によると、国内外の36社がプロジェクトに参加し、国内2社、国外1社が選ばれた。KYCとは、銀行口座を開設したい潜在的な顧客について、彼らが誰であるかを確認することを可能にする検証プロセスである。KYCのプロセスには、本人確認書類の確認、公共料金の支払履歴、顔面および生体認証等が含まれる。従来、このプロセスでは大量の書類確認と人的な作業が必要で、ブロックチェーンを使用することでKYCの手順を簡素化することができる。

トークンエクスプレス社のひとこと

本日ご紹介した上記の記事にて、「ブロックチェーンを使用することでKYCの手順を簡素化することができる。」と記載がありますが、これは少し言葉足らずです。KYCの手順そのものがブロックチェーンによって簡素化できるわけではなく、「同一の人物のKYCを複数の金融機関が別々に何度も行う手間を、ブロックチェーンで共有化されたデータを用いれば、一度で済む。」という意味だと思います。すなわち、Aさんに銀行口座を提供しようとする金融機関Xがあったとして、スリランカの別の金融機関YがAさんのKYCを既に実施していてその情報がブロックチェーン上で共有されていれば、金融機関XはAさんのKYCを実施する必要がない、もしくは簡素化できるという意味でしょう。

ブロックチェーンを用いたKYCというのは、実は日本ではすでに実証実験が実施されています。(下記関連外部記事ご参照)

関連外部記事(ニュースリリース)
ブロックチェーン技術を活用した本人確認(KYC)高度化プラットフォーム構築の実証に係る報告書を公表
発信者:デロイトトーマツコンサルティング
掲載日:2018年7月13日

メガバンク三行や主たる証券会社が参加し、金融庁、日銀もオブザーバーとして参加したこの実証実験は、ブロックチェーンのKYC実務への活用が技術的に実施可能であると認められつつも、利用者の需要が大きくない見込みや利用者に利便性の面でメリットが少ない等の考えが示されています。KYCの法整備がしっかりしている日本においては、そこと折り合いをつけつつブロックチェーンを適用しようとすると、劇的なメリットが見いだせない、ということのようです。

スリランカのKYCに関する法制度について存じ上げませんが、既存の法制度に改善の余地がある国では、メリットを作りやすいかもしれません。

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ブロックチェーンが貢献しうる、政府腐敗の対策5分野

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

本日は、海外有識者のオピニオンをご紹介します。

有識者:Rachel Davidson Raycraft & Ashley Lannquist @World Economic Forum
URL:https://www.weforum.org/agenda/2020/07/5-ways-blockchain-could-help-tackle-government-corruption/
掲載日:7月13日

オピニオン内容

ブロックチェーンは、耐改ざん性、永続的なデータベースと記録保持の特性によって、世界中の民主的ガバナンスと持続可能な開発に重大な影響を与えることができる。具体的には、透明性、説明責任、市民の関与の向上という価値を提供できる。

腐敗は、ブロックチェーンだけで防ぐことはできず、法的枠組みおよび構造と組み合わせる必要がある。特に必要となるのが、一貫した法執行機関、正確な情報入力、適切な技術的ノウハウ、協力的な政治家、および社会的善意である。一方で、実装コストや拡張可能性、十分な情報を得ていない政策立案者等は障壁となりうる。

(1)公共調達、(2)土地所有権登録簿、(3)デジタル投票、(4)企業所有権レジストリ、(5)助成金支給の5分野における政府腐敗への対策にブロックチェーン技術導入をもって取り組んだ場合の、それぞれのメリットとその限界を以下に記述する。

(1) 公共調達

《メリット》ブロックチェーンベースのプロセスは、改ざん防止トランザクションの監視を容易にし、スマートコントラクトで客観性と均一性を向上可能。トランザクションとアクターの透明性と説明責任を強化。

《限界》ブロックチェーンプラットフォームへのアクセスが容易であるほど、悪用に対する脆弱性が高まる。攻撃は、システムに無用または悪意のある情報を溢れさせる。また、オフラインで共謀、贈収賄等が発生し続ける場合、ブロックチェーンベースの腐敗防止の実効性が薄れる。

(2) 土地所有権登録簿

《メリット》ブロックチェーンベースの土地登記簿は、個人が自分の土地への権利を明確に証明できる、安全かつ分散化され、公に検証可能で不変の記録システムを提供できる。

《限界》土地登記が存在しない、不完全であるような国では、ブロックチェーンベースの土地所有権登記簿が機能する前に、これらの情報を収集、クリーニング、デジタル化するプロセスを経る必要がある。

(3) 電子投票

《メリット》ブロックチェーンによって分散性、透明性があり、暗号化され不変性を確保することで、選挙の改ざんを最小限に抑え、民主的プロセスへの信頼と参加を高めるのに役立つ。

《限界》サイバー攻撃やその他のセキュリティの脆弱性が問題。投票操作、紙の証跡消去、または選挙の混乱を引き起こす可能性がある。顔認識などの生体認証を使用する場合、有権者の識別で偽陽性・偽陰性が起こりうる。

(4) 利益関係にある企業所有権データベース

《メリット》利益相反と犯罪活動を追跡するため、利益関係にある企業所有権に関するデータベースが開発されているが、改ざん防止機能があり、広くアクセス可能なブロックチェーンベースのものは、非常に高い透明性を提供できる。

《限界》企業所有権データベースは一般的ではなく、他の関連データベースは適切な検証システムを欠いている。包括的で検証可能な企業所有権に係るブロックチェーンベースのデータベースの採用には、政治家、弁護士、銀行、および大企業からの賛同が必要だが、彼らは必ずしも賛同していない。

(5) 助成金の支払い

《メリット》ブロックチェーンは、人々の信頼を向上させることができる。助成金の授与、支払い、および管理に関与する主体の数削減、プロセス合理化、コスト削減等につながる。

《限界》受給者がブロックチェーンベース助成金の支払いを管理するのは困難。技術に精通していなかったり、リソースが不足でシステムを使用できなかったりする場合、助成金の支払いプロセスから差別または除外される可能性がある。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 政府の腐敗というのは様々なパターン・経路がありますが、そのなかでブロックチェーンが対策に貢献しうる5分野についての記事です。基本的にはデータの改ざんや不透明性が腐敗の温床になりうる分野が挙げられているといえます。
    • 耐改竄性のあるデータベースや情報の透明性の向上そのものは、そのデータベースの管理者が社会的信用を有しており、かつ、しっかりとした業務遂行のプロセスを定めていれば、従来型のデータベースでも問題なく実現できる可能性を持っています。問題は、政府の腐敗を管理するためのデータベースの管理者が民間企業である場合、そうした情報を管理するに足るほどの社会的信用を当該企業が保持することができず、かといってそれほどの信用を持つ主体は、腐敗の被監視主体である政府くらいしかいない、という点です。
    • ブロックチェーンの、特定の管理主体を持たずともデータ管理を行うことができる仕組みが、まさにここに活きてくることになります。特定の管理者がいないということは、特定の管理者がいる場合よりも、システムとしての信用力を持ちうる、ということです。
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ブロックチェーン、アフリカ児童労働の撲滅への挑戦

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典が英語のニュースをご紹介します。

記者:Kelly Cromley @ Cointrust
URL:https://www.cointrust.com/market-news/blockchain-firm-circulor-aims-to-minimize-child-labor-in-africa-desires-to-join-hands-with-tesla
掲載日:7月12日

ニュース内容

    • ボルボ(スウェーデンの自動車メーカー)及びトタル(フランスの石油メジャー)の各ベンチャーキャピタル部門は、ブロックチェーン技術で追跡することにより児童労働削減を目指すスタートアップ、Circular社へ出資。
    • Circularは自動車メーカーがバッテリーに使用されているコバルトや自動車の製造時に断熱材として使用されるマイカ(雲母)を追跡。マイカは、責任ある調達に関連する費用が非常に高い。例えば、ロシアで責任をもって調達されたマイカに比べて、ひどい労働条件で子どもがマダガスカルで採掘したものははるかに安く手に入れることができる。それらは責任ある自動車メーカーにとっては許容できないリスクにあたる。
    • この投資で、Circularは機械学習アルゴリズムを強化。アルゴリズムをトレーニングし、航空写真から労働者が子供が大人かを区別できるようにするシステムを構築する。
    • Circular 社は、Ethereum(ETH)でのソリューションの最初のプロトタイピングの後、Hyperledger Fabricに移行した。同社CEOジョンソン氏によれば、「私たちが非公開のブロックチェーンを採用する理由のひとつは、サプライチェーンの透明性に慣れていないターゲット顧客からの偏見が原因。2年半ほど前に私たちが話していた潜在的な顧客の多くは、商業上の機密性を維持するような方法でパブリックブロックチェーンを構成する方法を知らなかった。」
    • Circular社は、さらにフォード、テスラ、GMへと顧客基盤を拡大する意向。すでにCircular社へアプローチしてきている交渉中のバッテリー製造会社・工場が数多くある。

トークンエクスプレス社のひとこと

自動車業界がブロックチェーンに対して関心を寄せ具体的にプロジェクトを実施する流れが加速しています。本ブログでも度々それをとりあげてまいりました。

関連記事①
仏ルノーの20のブロックチェーン・プロジェクト
(本ブログ5月28日記事)

関連記事②
IoTが普及する中で重要度を増すブロックチェーン
(本ブログ3月18日記事)

興味深いのは、各社、ブロックチェーンの活用目的がさまざまであるという点です。

例えば、フランスの自動車会社ルノーは、ブロックチェーンを「自動車産業の未来のための変革ベクトル」と位置づけ、自動車業界の効率性、生産性、反応性(の向上)を約束する技術と評価して、約20ものプロジェクト群を開始しております。トヨタは、顧客の情報管理における活用に注目しています。本日ご紹介したボルボの事例は、サプライチェーン内に非社会的な調達先が含まれてしまうリスク低減のために、ブロックチェーンを含む先端技術を活用しようという狙いです。

このように同じ産業にあっても多様な活用方法が見いだされることはブロックチェーンの活用ポテンシャルの大きさを表しており、同時に自動車産業が抱えるサプライチェーンの広大さも示していると感じます。

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ブロックチェーン、ESGをより意味のあるものにするか?

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

本日は、海外有識者のオピニオンをご紹介します。

有識者:Sean Stein Smith @ Forbes
URL:https://www.forbes.com/sites/seansteinsmith/2020/07/08/blockchain-could-be-the-key-to-making-esg-reporting-more-meaningful/#13c4d4a339d2
掲載日:7月8日

オピニオン内容

    • 環境、社会、企業統治(ESG)に関してのレポーティング需要は急速に増加。テクノロジーと持続可能性は必ずしも密接に関係しているわけではないが、暗号通貨の領域を超えて急成長しているブロックチェーンの台頭は、ESGレポーティングの改善に貢献できる可能性がある。
    • デジタル化及び自動化、それ自体は新しいトレンドではないが、ブロックチェーンはおそらく、過去10年ほどの中でこれらのトレンドの中で最も有力といえる。ブロックチェーンは、暗号資産市場が低迷しているにもかかわらず、財務報告及びさまざまな証明のツールとして急速に変化。持続可能性やコーポレートガバナンスへの注目も、新しい傾向ではない。しかし、どちらもゆっくりと着実に組織運営とレポーティングに浸透してきている。
    • ESGや他のサステナビリティ情報に関するレポーティングの課題は、グローバルに適用される統一基準がないこと。例えば、炭素排出問題に関するフレームワークやガイドラインは、確立しようとしても、激しい反発にあうことが多い。財務報告でいえば会計原則(GAAP)や国際財務報告基準(IFRS)という基準があるが、ESGにはないのである。ブロックチェーン技術がもつレポートフレームワークと標準化の適用で、透明性と一貫性を向上させ、この情報の有用性を高めることができる。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • ブロックチェーンが持続可能な社会づくりに貢献できる技術であるという上記有識者の視点は、まさに弊社の信念と近しいものであり、興味深い記事だと感じました。
    • 上記の記事は、大量の市場資金を持続可能な社会づくりのために活用させる可能性を持つESGレポーティングの標準化と、ブロックチェーンの活用を結び付けています。上記記事ではブロックチェーンを用いれば、システム上に構築する様式の強制力と、ブロックチェーン上のデータの可視性から、ESGレポーティングの様式の標準化が可能だという論旨です。
    • しかし、システム上でESGレポーティングにかかるフレームワークを構築することと、そのデータに可視性をもたせることは、ブロックチェーンでなくても、従来のデータベースでも可能なことです。この記事の説明振りだけでは、なぜブロックチェーンを用いる必要があるのかという、ブロックチェーン推進派がよく直面する厳しい問いに答えられないでしょう。
    • ブロックチェーンは、多様な主体がデータを共同で管理できる点に強みがある技術です。そのため、各社のESGレポーティング情報を特定の限定的な企業や組織ではなく、世界全体で共同管理することが合理的だと言える場合に初めて、ブロックチェーンの活用を前提としたESGレポート管理の議論が可能となると考えます。
    • ESGレポートとブロックチェーンの関係でいえば、その様式の標準化のための活用よりもむしろ、ESGレポーティングの根拠となる情報収集等において幅広くブロックチェーンの活用余地があると、弊社は考えます。
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チュニジアの政府機関、国内ブロックチェーンネットワークを開始

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典がフランス語のニュースをご紹介します。

記者:Hamza Marzouk @L’ECONOMISTE Magrébin
URL:https://www.leconomistemaghrebin.com/2020/07/08/tunisie-lancement-premier-reseau-national-global-blockchain/
掲載日:7月8日掲載

ニュース内容

    • チュニジアの主要なインターネット供給会社Tunisian Internet Agency(以下、「ATI」)とブロックチェーン企業Universa Hub Africaは、チュニジアで最初のグローバル・ブロックチェーン・ネットワークを7月7日に開始した。各社の責任者が、2018年11月に締結されたパートナーシップの結果を発表したが、協定継続の署名にチュニジアで新しい認定電子署名サービスを初めて使用した。
    • この初めてのサービス“MyDocuments.tn”はブロックチェーン技術に基づいていて、文書の電子署名を証明することができる。デジタル形式または紙に署名された文書を任意の組み合わせで管理する機能もある。受信者数に制限はない。これにより、作業手順の流動性と透明性が向上する。
    • チュニジアの国家ブロックチェーン・ネットワークは、Universa Hub Africaがもつ最新の技術を用いており、将来的にはスマートシティ、電子政府、市民中心のソリューションにも役立てる方針だ。
    • チュニジアは、世界で初めて全国的なブロックチェーンネットワークを持つ国になる。これは、完全に分散化したインターネットという新しい定義を与え、国のデジタル化プロセスに新しい視点を開くだろう。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 本日ご紹介したプロジェクトをリードする会社の一つであるTunisian Internet Agency(ATI)は、チュニジア政府の情報通信技術省の傘下にある組織です。そのため、ATIとブロックチェーン企業Universa Hub Africaとの協働事業というのは、政府機関が主導するプロジェクトということになり、記事中にあるとおり世界で初めて政府がブロックチェーン・ネットワークを提供する国になるかもしれません。
    • チュニジアという国は、2011年以降にアラブ地域の独裁政権たちが次々と民衆の蜂起によって打倒された「アラブの春」の発端になった国です。アラブの春が起こるまで20年以上も、ベンアリ大統領(当時)は秘密警察を用いて強権支配を行っていました。その後、アラブの春に見舞われた国々が混乱に陥ったり、強権政治が息を吹き返したりしているなかで、チュニジアは民主化が順調に進んでいると言われています。
    • チュニジアの政府機関が主導する今回のプロジェクトは、当面はデジタルか紙ベースかに関わらず、署名された文書の証明のためのブロックチェーン・サービスということですが、将来的に市民のためのソリューション提供も視野に入れているということで、10年弱前まで独裁国家だった国が民主化に向かう仮定でブロックチェーンがその実現をサポートするという構図は、見ていて感慨深いものがあります。

関連記事
パリ公証人組合、公証ブロックチェーンを紹介
(本ブログ7月12日記事)

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パリ公証人組合、公証ブロックチェーンを紹介

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典がフランス語のニュースをご紹介します。

記者:Christophe Auffray @Cryptonaute
URL:https://cryptonaute.fr/le-grand-paris-dispose-desormais-de-sa-blockchain-notariale/
掲載日:7月9日

ニュース内容

    • パリ公証人組合は現在、グランパリ(パリを21世紀の世界都市に変革する再開発プロジェクト)の専門家のために、Notarial Blockchain(以下、「公証ブロックチェーン」)を開発している。その立ち上げに伴い、ブロックチェーンへの新しいサービスの統合を監督する信用機関も設立される。この機関は、ブロックチェーン・アプリケーションのレビューを担当する戦略委員会によって運営される。TechNot 2019カンファレンスにおいて、パリ公証人組合は、そのプライベート・ブロックチェーンの第1版(Hyperledger Fabricを使用)を紹介した。
    • フランスの公証人にとって、ブロックチェーンは、証拠の作成・保存・返還を確実にするために特に成功した技術であり、公証人の職業の使用と価値に完全に対応する信頼性と不可侵性のすべての保証を与える。運用上の用途に関しては、公証ブロックチェーンは、2020年に大幅な見直しを行っているEspace Notarial(訳者注:既存のオンラインサービス)に相互接続している。このアプリケーションにより、調査の資料を管理し、個人的かつ安全にすべての関連文書を保存することができる。
    • さらに、このブロックチェーンは、非上場企業の株式の動きのトレーサビリティを保証する。このアプリケーションは、“レジストリ”と呼ばれ、現在開発中だ。これは、600万ユーロ以上の公証組合のイノベーション基金の支援を受ける。“レジストリ”の目的について、「投資家に関するすべての情報を統合することです。これにより、さまざまな株主を知り、すべての移転に従い、すべての企業の株主の網羅的なリストを通じてAGへの召喚を簡素化することができます」とプロジェクトマネージャーは説明する。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 不動産分野とブロックチェーンは、その資産の所有権の証明や、取引の管理、取引の小口化等において相性がいいと言われており、世界中で多くの実証試験が行われています。本日ご紹介したブロックチェーンの利用が期待されているという公証制度は、取引の前提になる文書の、真正性を担保する制度ですが、不動産の分野で活用される場面も多く、不動産売買契約、不動産賃貸借契約、金銭消費貸借契約等で活用されます。
    • パリの公証人組合によってブロックチェーンの活用が検討されているというニュースが大変興味深いと思うのは、「不動産×ブロックチェーン」というブロックチェーン技術の分野で注目されている取り合わせが、一見地味な、公証分野でのブロックチェーン活用という「入口」から実現する可能性がある点です。ブロックチェーンがこれまでにない価値を提供できるのは、本質的にはデータの保全、データベースの管理方法の部分であって、そこから考えると、不動産分野でブロックチェーンを活用したいなら、公証分野を押さえるというのは、地味だけれど避けては通れない一歩だといえます。
    • 問題は公証分野の方々がブロックチェーンの活用に対して関心を持つかという点であり、一般的には結び付きにくいことではありますが、パリではそのハードルを越えることができたということで、今後の展開に期待です。

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