ビジネス管理ツールとしてのESG、その課題と対策

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

メディア:MINING REVIEW AFRICA
URL:https://www.miningreview.com/environment/esg-harnessing-this-vital-business-management-tool/
掲載日:7月6日

オピニオン内容

    • 事業投資および事業管理における環境、社会、企業統治(ESG)側面の勘案は、既に確立したアプローチと言えるだろう。環境面、安全面、持続可能性に関する要素を事業報告に盛り込むことは新しいことではない。そうした非財務的情報の報告要請は1990年代には存在し、1960年代には社会的責任投資の一部として組み込まれていた。以前と異なるのは、ESGに関連するリスク/機会とその財務的価値が、ビジネス管理のツールとして認識されていることだ。重要なことは情報が適切に経営層に理解され、企業内で対応されるかどうかである。すなわち、理解しやすい情報の提示と解釈が重要であり、情報の受け手について発信側が理解する必要がある。
    • 多くの場合、ESGレポートは遅行指標のみを使用する。また、使用されている指標の階層が多すぎるか正しくないため、重要な要素が隠されてしまう。これに対応するには、①ESGレポートの発行者が、情報の受け手に合わせて発信する情報のコントロールをすること、②ESGレポートにおいて常に新しいトレンドとリスク指標を組み込むこと(結果として動的な指標管理となる)等である。これらを常に認識しつつ、ESGレポートの内容を絶えず見直し、継続的に進化させる必要がある。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 本日ご紹介した記事は鉱業分野のメディアに掲載されていたものです。鉱業分野はESGの観点でリスクの大きい産業と言え、記事の中にあるとおり、歴史的にも早い段階から持続可能な開発に関する情報開示に取り組んできたようです。
    • 本日の記事はESGに関する情報発信の実務面について詳述しており、特にESGレポートが社会とのコミュニケーション手段であること(そのため受け手に合わせた発信がひつようであること)、用いる指標が遅行指標となりがちであること(ESGの枠にとらわれずに先行指標の観測、発信が求められること)の重要性を説いています。
    • 弊社としても記事の主張に全く同意します。一方で、実務でそれを行うのは発信者側の負担も大きく、発信者側においてその発信関連業務が合理化され、一定程度自動化されていることが必要だと考えます。
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ESG投資熱は社会変化の証か?オーストラリアの古代遺跡爆破が試金石

本記事では、弊社の最近の考えをご紹介します。

世界最大手資源会社による故意の遺跡爆破事件

あまり日本で報道されていなかったと思いますが、世界トップクラスの資源メジャーであるリオ・ティント社が、先月5月24日、オーストラリアの先住民アボリジニが神聖視する、起源46,000年前の洞窟を、鉄鉱石採掘の規模拡張のためにダイナマイトを使って爆破したという事件が起こっています。現場はJuukan Gorgeと呼ばれる2つの洞窟からなる遺跡で、CNNの報道によれば、数万年にわたって継続的に人間が居住していた痕跡がみられるものだったそうです。

関連外部記事
リオ・ティント、先住民の洞窟遺跡爆破し謝罪 豪西部の鉄鉱石開発で
メディア:CNN
掲載日:6月2日

リオ・ティント社は、爆破された地域を管理するアボリジニ団体に対して精神的苦痛をもたらしたことについて謝罪したものの、同事業の実施については2011年以降「包括的かつ相互的な合意」が結ばれており、正当なものであるという立場です。

国際経済資本と地域社会の対立は、外部者には意見しがたい

私はこの事件に関して報道でしか知ることができないので、現時点ではいかなる立場も取ることができません。というのも、企業活動とその現場に根差す地域社会との関係というのは、どちらも正当性を主張し、経緯も長く複雑である場合が多く、外部者が一時の報道内容に基づいて意見することが的外れとなる場合が多いからです。一般に国際的な大企業は経済的体力があり、地域社会はそれがないために、前者が悪者になることが多いですが、第三者から見てよりフェアなのがどちらかという点においては、内部者しかうかがい知ることができませんし、判断できません。

ESGとの関係で、まず注目されるのは投資ファンドの動向

一方で、その企業に投資している投資ファンドたちは、内部者になりうる存在と言えます。少なくともESG投資の理念に理解を示す投資ファンドは、投資先の企業が今回のような社会との関係に疑義を持たれる行動をとった場合、出資者たちを代表して調査を行い、自らの立場を明確にする必要があると思います。

リオ・ティントに投資している投資ファンドたちがこの事象に対してどのように対応するか。それはその個別の投資ファンドのESG投資への真摯さを測る尺度になると同時に、ESG投資に関心を高める社会が、それらの投資ファンドに調査をさせ、結論を表明させるだけの熱意を持っているかを測る尺度になると思います。すなわち、ESG投資への昨今の熱が、真に社会の価値観の変化となるかどうかの試金石に、今回の事件がなりうると言えるのです。

トークンエクスプレス株式会社では、国内外の持続可能な社会づくりに寄与する事業・プロジェクトの企画、構築、運用サービスを提供しています。ブロックチェーン技術に知見がありますが、その利用を前提とするものに限りません。
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米国労働省の年金基金の投資規制提案、トランプ政権の意図か

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

記者: NICK JULIANO and CATHERINE BOUDREAU @POLITICO
URL:https://www.politico.com/newsletters/morning-sustainability-preview/2020/06/26/esg-investing-faces-new-regulation-489642
掲載日:6月26日

ニュース内容

    • トランプ政権は、環境面、社会面、企業統治面に配慮した投資(ESG投資)を行おうとしている年金基金の動きを阻止しようとしている。労働省は今週、「一般に受け入れられている投資理論に基づく有意な経済的考察」に基づく判断でない限り、年金基金マネージャーがESG投資を行わないよう、従業員退職所得保障法に基づく規制の更新を提案した。ESG投資を行う投資信託はより良いリターンを生み出しているにもかかわらず、この規制更新はESG投資の盛り上がりに冷や水を浴びせる可能性がある。
    • この提案は、石油、ガス、石炭企業への投資を促進するための政府の長期的な取り組みの一部であり、共和党の議員が化石エネルギー産業へ投資するよう主要な金融機関に圧力をかけているためだ。ただし、選挙前に(検討が)完了する可能性は低く、民主党の大統領候補のジョー・バイデンがもし勝利すれば、労働省の提案の成立は悲観視されることになるだろう。
    • ESG投資信託は現在、21兆ドルの米国の投資市場の1%未満しか占めていないが、投資リサーチ会社Morningstarによると、近年人気が高まっています。投資家は昨年ESG投資信託に206億ドルを投入し、2018年の以前の最高額の4倍になった。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 本日ご紹介した記事を掲載しているのは、POLITICOというワシントンDCをベースにする米国の政治動向を専門に取り扱うニュースサイトです。もともとリベラル系媒体として有名なワシントン・ポストの記者が2007年に設立したものだそうですので、本日の記事を読む際も基底にリベラル思想、反トランプ傾向があると見た方がいいでしょう。
    • 本日ご紹介した記事の関連内容は、一度本ブログでも扱っていますが、その時の引用元は投資関連ニュースのメディアだったので、このような解釈は紹介されていませんでした。

関連記事
米国労働省、退職金積立計画のESG投資活用状況を調査
(本ブログ6月19日記事)

    • 新型コロナウイルス感染症の広がりとほぼ同時に発生した原油価格の暴落により、最近ではESG投資の運用成績が優れているように見えますが、それが恒常的なモノかどうかには議論があります。年金基金のような、多くの人からの資金を預かる管理者が、少なからず主観が入り、経済的リターンとの関係性も合理的には説明しにくいESG投資に無批判に傾倒するようでは、その管理者が期待されている責任・役割を果たせているとは言えません。労働省がトランプ政権の意を汲んで化石エネルギー産業に便宜を図る意図で規制更新を提案しているのかはわかりませんが、大統領選挙が近づく中で、行政機関の一挙手一投足への注目度が高まっていく季節に入っていくのだと感じます。
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ESGとスタートアップ

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、弊社の最近の考えをご紹介します。

ESG投資は上場株式投資のイメージだった

ESG投資というのはこれまで上場株式に対する投資を前提に語られることが多かったと感じます。それはESG投資は初期には国連が旗を振り、責任投資原則という機関投資家向けのガイドラインを提示したなかで、ESG投資の概念を含めていたためです。機関投資家は上場株等への投資が主であることから、ESG投資と言えば上場株式への投資という前提イメージがあったものと考えられます。

ESG投資と類似の言葉:インパクト投資

ESG投資と類似の言葉として、インパクト投資という言葉もあります。こちらは「金銭的リターンを追求しつつ、同時に、地球環境問題の改善や社会経済システムの向上に向けたインパクトの創出を意図して行われる投資活動」と定義することができます。(参考:上場株式投資におけるインパクト投資活動に関する調査報告書(2020年3月、ニッセイアセットマネジメント株式会社))

ESG投資とも概念的に重なる部分がありますが、ESG投資が環境面、社会面、企業統治面に関して正しく配慮している企業に投資するという考え方であるとすれば、インパクト投資はより積極的と言えます。すなわち、社会課題の解決において波及的な効果をもたらすような事業を実施する企業に対し、その社会的インパクトの創出という目的をもって投資するもの、と言えるでしょう。

このインパクト投資という言葉は、途上国開発等の文脈で用いられることも多く、未上場株式等の未公開市場における投資のイメージが強かったですが、最近では上場株式投資を前提としたインパクト投資が急速に拡大しているようです。(参考:前出の報告書)

ESG投資の認知拡大により、スタートアップ領域へ浸透か

上記のように、これまでは大まかにESG投資は上場株式、インパクト投資は未上場株式、といったイメージがありましたが、新型コロナウイルス後にESG投資のパフォーマンスが比較的よかったこともあり、ESGという言葉がより広く認知されてきました。ESGという言葉が広まれば広まるほど、スタートアップ領域でESGに配慮した投資を行うファンドも出現・増加してくるでしょう。実際、米国の著名なベンチャーキャピタルである500Startupsは、最新のファンドではESGポリシーを設定して投資判断を行っていくようです。

ESG投資、インパクト投資等、類似の言葉が氾濫しがちなこの分野ですが、より広く認知を得た言葉が、いろいろな境界を乗り越え、社会的インパクト評価の標準的手法等を含め、業界標準を形成していくことでしょう。

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米国証券取引委員会(SEC)議長、ESG各要素の個別比較を呼びかけ

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

発信元:Banking Exchange
URL:http://m.bankingexchange.com/compliance/item/8297-sec-chairman-calls-for-esg-issues-to-be-considered-separately
掲載日:6月22日

ニュース内容

    • 米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission, SEC)の議長は、環境面、社会配慮面、企業統治面(ESG)の各要素を単一の指標に混ぜ込むと、「不正確な」投資分析になる可能性があると警告している。SECのジェイ・クレイトン議長が、先月、規制当局の資産管理諮問委員会の会議でコメントした。あわせて、実績のあるアクティブなポートフォリオ・マネジャーにこのトピックへの関与を求めた。
    • SECは、投資家、株式発行者およびその他の市場参加者に呼びかけて、ESG要素の開示要請に関するヒアリング等を開始する予定だ。これはSECの投資家諮問委員会の小委員会が求めたもので、同委員会はESG投資がもはや「おまけ的」な概念ではなくなってきたため、投資家の意思決定の基礎となる信頼できるESG情報を必要としている、という立場だ。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • ESG評価を構成する各要素が、企業をそれぞれ別の側面から評価しており、それらを一緒くたにしてしまうと出てくる結果が意味をなさないものになる、ということは、ESG評価について少しでも関心のある方は既知の事実だと思います。しかし、米国の証券取引委員会という「権威」がこのような事実を一つ一つ確認していくことは重要です。
    • ESG評価は、数値化が難しいものを数値化し比較できるようにするという行為です。それを利用する投資家からすれば、ESG評価の利用目的が「比較」にありますので、なるべく労せず比較できる仕組みがほしいです。そのニーズを突き詰めていくと、ESG評価が単一の指標にまとめられてしまうという事象が起こります。しかし、それでは、持続可能な社会づくりに役立つ投資を促すというESG評価の目的から乖離してしまう。
    • 大切なのはバランスで、個社における多様なESG側面の取り組みの優劣を、一定程度パッケージで評価できるシンプルさをもちながら、必要であれば個別具体的な側面だけでも比較できる開示の仕組みが求められています。そして、最も良いバランスがどこにあるかの判断軸は、投資家側からみて意図どおりの投資先に投資をすることができて、社会全体で見てもより多くの人が投資されるべきと思う企業に対して投資が集まっている状況といえるでしょう。
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米国労働省、退職金積立計画のESG投資活用状況を調査

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

記者:Mark Schoeff Jr. InvestmentNews
URL:https://www.investmentnews.com/labor-department-gathers-information-retirement-plans-use-esg-funds-194176
掲載日:2020年6月17日

ニュース内容

    • 米国労働省は、いくつかの退職金積立計画を調査している。それらが投資決定において、環境面、社会面、企業統治面に配慮した投資(ESG投資)を、どのように勘案しているか把握するためだ。
    • 同省従業員福利厚生管理局のニューヨーク支部は、退職金積立計画のメニューの中にESGをテーマにしたものを含むいくつかの退職金積立計画に問合せを行った。調査は、計画の運用者が経済的利益に関連しないESG目標を達成するために投資収益を犠牲にしたり、投資リスクを増大させたりしていないか確認することだ。
    • ESG投資はますます人気を高めており、それに伴い規制当局の注目も高まっている。米国証券取引委員会(Securities Exchange Commission, SEC)は、ESG投資戦略を提供している投資顧問の開示の正確さと妥当性を調査していることを明らかにした。また、SECの投資家諮問委員会は最近、ESG投資の開示の義務付け規制において、SECが世界的なリーダーになるべきという勧告を可決した。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • 6月18日付けの日経新聞の金融経済面でも取り上げられていましたが、盛り上がるESG投資において金融当局がどのような立場を取るべきか、欧米では具体的な動きが出ています。

関連外部記事
ESG評価会社が乱立 欧米当局が聴取、規制も検討 世界600社、ばらつく基準
(日本経済新聞、6月18日記事)

    • 本日ご紹介した記事は日経の記事に記載のある金融当局のみならず、退職金積立の監督を行う米国労働省においても調査が行われていることを伝えるものです。ESG投資は「投資」という人々の生活における基本活動の行動原則・価値観の変革を伴うものですので、金融当局の所掌範囲に留まらない影響範囲の大きさを持っていると実感させられます。
    • こうした規制当局の調査の開始は、その分野が成長し社会に影響を持つ規模になりつつあるということを示しており、今後の行方から目を離すことができません。特に、SECの投資家諮問委員会がその勧告内で言及している開示規制というテーマは、この業界に大きな影響を与えることでしょう。
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ESG投資で注目度の低い”G”、投資リターンは高い?

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

記者:Sam Benstead @ The Telegraph
URL:https://www.telegraph.co.uk/investing/shares/ethical-investors-ignoring-measure-boosts-returns/
掲載日:6月11日

ニュース内容

    • 環境面、社会面、企業統治面の要因を踏まえて株式やファンドに投資すること(ESG投資)が最近では一般的になっているが、多くの人が誤った要素に焦点を当てることで投資リターンを損ねている。
    • HSBCグローバルアセットマネジメントと世論調査会社のYouGovが2,000人を対象に実施した調査では、回答者の半数が投資の際に環境(E)要因に最も意識を向けたという。4分の1は社会面(S)が最も重要であり、企業の統治方法(G)が最優先事項であると答えたのは12パーセントに過ぎなかった。
    • しかし、投資マネージャーであるFederated Hermesは、最高の企業統治スコアの高い企業が、高い環境スコアを持つ企業よりも利益をもたらしていることを発見した。これは、”E”に最も注意を払う倫理的およびESG投資家が、”G”にさらに焦点を合わせる投資家に比べて、リターンを損なう可能性があることを意味する。
    • Hermesは、E、S、Gのスコアが高い企業はすべて、スコアの悪い企業よりも収益が高いが、企業統治スコアが最も高い株を所有していると、最悪のガバナンス対象の名前に比べて収益が毎月0.25パーセント高くなることを発見した。リターンへの影響は、社会的および環境的スコアの方が低かった。社会慣行が最も優れている企業は0.15パーセントポイント多く返したが、最も環境に配慮した株式は平均0.10パーセントポイントしか返していなかった。

トークンエクスプレス社のひとこと

ESGの3つの側面を比較した場合に、いずれの側面に注目して投資を行うことが最も高い投資リターンをもたらすか、という記事です。ESG投資の概念が今ほど盛り上がっていなかった2013年当時からESG投資に注目していた私としては、3つの側面それぞれの投資リターンの比較というのは考えたことがない視点だったので大変興味深い記事でした。

ESG投資は、投資リターン重視の投資家視点で見れば、財務的側面以外の、しかし財務的影響を与えうるリスク要素を勘案した投資です。それは頭ではわかっていましたが、私の中のどこかに、ESGに配慮した企業そのものが持つ価値に対して「ファン」のような観点で投資を行うのがESG投資という先入観があったようです。

一方で、企業が考慮すべき財務面以外の経営要素は、環境、社会、企業統治のみであるかと言えばそうではないと考えますし、環境、社会、企業統治が相互に排他的な要素であるかと言えば、そうとも限りません。そういう意味では、ESGの三要素を切り出してそれぞれの投資リターンを比較するというのは、本筋ではない枝葉的視点、「投資テクニック」的考え方ともいえるのではないかと思います。

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香港におけるESG投資環境整備

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、弊社の最近の考えをご紹介します。

香港証券取引所の常務取締役兼COOの投稿

中国との関係の変化でメディアでも話題の香港ですが、”The Asset”という企業経営者向けのメディアに、香港証券取引所の常務取締役兼COOによる、香港のESG投資環境に関する記事が、6月8日付けで掲載されています。

対象記事
The coronavirus teaches Hong Kong businesses important ESG lessons
(新型コロナウイルスは香港企業に重要なESGの教訓を与えている)
URL:https://www.theasset.com/index.php/article-esg/40706/the-coronavirus-teaches-hong-kong-businesses-important-esg-lessons
掲載日:6月8日

彼女は記事内で、「2019年、香港の社会的状況からもたらされた混乱により、香港企業は大きな課題に直面した。その結果、多くの企業は、コミュニティ内における彼らの役割を認識し、適切な課題対応手順を確認しつつ、事業継続計画(business continuity plans)を更新した。それにより新型コロナウイルスへの対応能力が向上した。」と述べています。

香港証券取引所の上場企業のESG報告義務

記事の中で私が興味深いと感じた点は2点です。
一つは、2016年から香港証券取引所はすべての上場企業にESG報告を義務化しているという点。制度の詳細については、香港証券取引所のこちらのページに詳細が記載されています。その内容を見ると、環境、社会、企業統治面について、開示すべき項目(Subject areas)と、推奨される開示内容例が具体的に明記されています。

ESG報告は、社会とのコミュニケーション

もう一つは、上記のような具体的な規程を示している一方で、ESG投資においてマテリアリティ(Materiality, 財務面での実質的な影響度)はキーとなる要素だが、それを評価する一般的な手法は存在しないと認めている点です。その上で、香港証券取引所は、最近のルール変更によって、ESGの議論が企業の取締役会レベルにまで引き上げられ、リスクと機会が評価されたうえで、株主やその他の利害関係者に対して取締役会が責任をもって直接説明することを促している、としています。

私自身、ESG投資の本質は、企業と社会の多様な関係者とのコミュニケーションなのだと考えています。そのため、情報の開示がキーであり、さらにはその開示方法の標準化が最重要事項なのだと考えています。その観点で、行政に加えて、証券取引所もESG投資環境整備の最重要プレイヤーなのだと、本日の記事で再確認させてもらいました。

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格付機関によってESGレーティングが大きく変動する理由

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

有識者:Tracy Mayor @MIT
URL:https://mitsloan.mit.edu/ideas-made-to-matter/why-esg-ratings-vary-so-widely-and-what-you-can-do-about-it
掲載日:2019年8月26日

オピニオン内容

    • 企業の社会的責任に関する価値観を反映した製品を購入したい消費者、投資先の評判リスクを気にする投資家などの存在により、CEOの約80%が自社の社会への取り組みを示すことが重要であると信じている。そのため、ベンチマークとしての持続可能性の評価に注目している。ESG情報になんらかの形で依存している投資は約30兆ドル(約3,290兆円)に及ぶと推計され、2016年比で34%増加している。
    • 世の中には複数のESG評価格付機関が存在するが、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者チームは、同一の対象への評価において、それらの機関間でレーティングが大幅に異なることを発見した。具体的にはESG格付間の相関は平均0.61で、財務的な企業評価を行っているMoody’s、S&P間の相関が0.99であることと比較すると、かなり乖離があると言える。
      この原因として、以下の3つの要因が挙げられる。
    1. 評価対象範囲(スコープ)の違い
    2. 評価の「重みづけ」の違い
    3. 測定方法(評価対象指標)の違い
    • 上記の違いは、格付が異なる要因に対して、それぞれ36.7%、13.2%、50.1%の寄与しているということも明らかになった。こうした「違い」が発生しないように、オープンで透明な開示基準を確立し、評価の元となっているデータがアクセス可能であるように企業は努めるべきだと、MITは推奨する。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • ESG投資を行う方は、ESGを謳う投資信託にお金を預けるよりも、自ら投資先の取り組みなどに目を向けていただくとよいのでは、と本ブログで申し上げてきましたが、大きな機関投資家ならともかく、一般の投資家がそうした調査に時間とコストをかけることはできません。

関連記事
Facebookへの投資はESG投資か?
(本ブログ6月5日記事)

    • そのため、投資家はESG格付機関の格付を利用するのですが、上記記事に記載のとおり、その格付が「ぶれる」要因が多く存在します。格付の利便さは社会に必要だと思いますが、時間やコストをかける余裕があり、ESGテーマについて真摯に考慮の上投資先を決定したいという投資家のために、企業は格付機関に示したのと同様のデータ、情報を、投資家からアクセスしやすいように開示することが必要だと思います。
    • 一方で、各社各様にその開示の取り組みを行っても、閲覧者が必要な情報にたどり着くのは難しいままなので、開示フォーマットの標準化が必要でしょう。
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Facebookへの投資はESG投資か?

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

有識者:Chris Dastoor @ MONEY MANEGEMENT
URL:https://www.moneymanagement.com.au/news/funds-management/facebook-esg
掲載日:6月5日

オピニオン内容

    • 複数のESG投資ファンドでFacebookへの投資が行われていることは、投資家自身がESG投資ファンド内ポートフォリオを分析する重要性を再認識させる。ESGファンドは通常、タバコまたはアルコールの製造、ゲーム施設の製造または提供、武器または武装、ポルノ、武器用ウランの採掘、石炭およびオイルサンドの製造に関与する企業を無視するスクリーニング・プロセスを備えている。Facebookはこれらの要件のいずれかを破ることはないが、その行動は投資家が投資したかったことと倫理的に矛盾する可能性がある。
    • Facebook、Alphabet (Google)、Microsoft、Appleのような米国のハイテク企業は、ESGスクリーニング基準を遵守しながら高いリターンを提供したため、ESGファンドの人気のあるオプションになった。一方で、オーストラリア責任投資協会(RIAA)の最高経営責任者であるサイモン・オコナー氏は、ソーシャルメディア企業の行動は、一部の責任ある投資家によって詳細に調査され、その結果、攻撃的なコンテンツを公開および配布している、あるいは扇動的なコンテンツや不快なコンテンツに責任を負っていないという理由で、これらの企業をポートフォリオから除外することを決定した人もいるという。

トークンエクスプレス社のひとこと

    • ESG投資の手法には、投資しない条件を明確にするネガティブスクリーニングや、環境、社会、企業統治面で積極的な取り組みを行っている企業を調査し投資を行うポジティブスクリーニング等が存在しますが、ネガティブスクリーニングを主とする投資信託商品においては、そのスクリーニング対象となっていないテーマにて議論を呼ぶ企業への投資が行われている場合がある、という記事です。
    • 上記の記事において、ESG投資で人気のあった企業として代表的な米国IT企業の名前が挙げられておりますが、中には評価に悩んでしまうような、相反する側面を持つ企業もあります。例えばAppleは、自社が使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄う体制をとっているようですが、一方で、iPhoneはその登場の頃から、貴重な金属資源を原材料に使用していることと、毎年新製品を出して消費者に買い替えを促しているという点で、環境負荷の高さを指摘されてきました。Alphabet (Google)は、利用者の情報を利用しているという点でプライバシー問題を常に指摘されていますが、一方でGoogleが世界の合理化に貢献した事実は否定し難いところがあります。

関連外部記事
Apple、 再生可能エネルギーで 世界的に自社の電力を100%調達
2018年4月10日

    • こうした評価における判断基準は、個人個人の価値観、着目点による部分が大きいです。ESG投資にはいろいろなスタイルがあって良いし、投資信託を通じたESG投資も意義があると思いますが、意に沿わない投資にしないためには、投資家自身が投資先ごとに判断をしていく必要があると考えます。
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