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世界的化学会社が取り組む、プラスチックのリサイクル

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典が英語のニュースをご紹介します。

記者:Darrel Moore @ Circular
URL:https://www.circularonline.co.uk/news/canadian-trial-sees-blockchain-plastic-tracking-step-closer/
掲載日:8月6日

ニュース内容

カナダのブリティッシュコロンビア州におけるパイロット事業「reciChain」は、ブロックチェーンを使用して、プラスチックのライフサイクルの延長、リサイクルの奨励、廃棄物の削減、資源効率の向上に貢献することを目指している。これは、カナダにおけるプラスチックの循環性分野で、従来の概念及び政策の対話レベルから具体的な解決策への移行の第一歩といえる。

この取り組みには、ドイツの総合化学会社BASFを中心に多様な企業が関与している。仕組みは、マーカーを備えたブロックチェーン・ソリューションを使用。これにより、流通データの安全な共有を可能にすると同時に、バリューチェーン全体でのプラスチックの分類、追跡、監視を改善する。バリューチェーン上の関係者は、「トークン」または「プラスチッククレジット」を生成でき、プラスチックが繰り返しリサイクルされるにつれて、取得価値が増加する仕組みとなっている。このようなクレジットシステムは、リサイクル性の高い製品を設計することにインセンティブを与え、循環経済の強化に貢献できる。

reciChainで使用される追跡技術では、プラスチック製品に独自の「化学バーコード」が付与される。デジタルツイン技術を使用し、バリューチェーン全体でのプラスチック追跡を可能にし、ユーザーが素材の生産に関する情報にアクセスできるようになる。

トークンエクスプレス社のひとこと

“reciChain”は、ドイツの総合化学会社であるBASFとDeloitteが中心となって進めているプロジェクトで、ブラジルのサンパウロにおいて既に実施されているパイロット事業を、カナダでも展開するもののようです。

BASFは総合化学会社なので、プラスチックのリサイクルが世界的な課題になってきた今日においては、その責任を負う中心的企業の一つといえます。BASFが公開している事業概要のプレゼンテーション資料や公開している動画を見る限り、会社の事業としてしっかりと取り組む意欲が見えてきます。

弊社がお客様のブロックチェーン事業についてお手伝いさせていただく際に、以下の3点が重要とお話ししますが、全て満たしている事業と言えます。

    • 会社のビジョン・ミッションに沿う、経営トップがコミットできる事業か
    • 社会課題や業界課題の解決に貢献する事業か
    • 課題解決において、ブロックチェーンが貢献する技術的要素が明確か

技術的な詳細は公開資料からは得られないですが、プラスチックの再利用においては、対象物とデータとの突合が大きなチャレンジになると思いますが、reciChainの資料においてはその点も解決の目処がたっているように見受けられます。

プラスチックの再利用が進まなかった理由の一つが、新しいプラスチック製品とリサイクル品とを比較した場合に、リサイクル品を使用するインセンティブが無かったことだというBASF。そのインセンティブ付けにブロックチェーンが一役かうという、いわゆる”Why Blockchain?”の動機付けもしっかりしています。今後の展開が楽しみな事業と言えます。

トークンエクスプレス株式会社では、国内外の持続可能な社会づくりに寄与する事業・プロジェクトの企画、構築、運用サービスを提供しています。ブロックチェーン技術に知見がありますが、その利用を前提とするものに限りません。
ご関心ある方は、お問い合わせページからお気軽にご連絡ください。

民間資金部門の世界代表たち、SDGs達成に公的機関の関与が必要と訴え

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

記者:Helen Avery @ EUROMONEY
URL:https://www.euromoney.com/article/b1mt277md62b5c/finance-ceos-urge-governments-to-step-up-esg-efforts
掲載日:8月5日

ニュース内容

持続可能な開発のためのグローバル投資家アライアンス(Global Investors for Sustainable Development alliance, GISD)は、持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の資金調達の一環として、公共部門の関与の強化を求める64の勧告(内42は全世界、残りはEU向け)を発表。以下に例を挙げる。

データ標準化の必要性

持続可能性に関するデータについて、低品質、一貫性の欠如、結果論の傾向、質の違いにより比較不可能であること等を指摘。持続可能性に関する指標を調和・標準化し始めない限り、SDGsやパリ協定の目標に到達することは不可能。特に、サプライチェーン全体で、データの共通性、透明性、一貫性を確保する必要があるとしている。

グローバルレベルでの取り組みの必要性

EUは持続可能な金融の開発及び規制の分野では世界的なリーダーである。しかし、定義と規制の乱立を回避するため、EUでの取り組みをグローバルレベルで採用できるよう提言。官民の連携強化、SDGsのためのブレンディッドファイナンスファンドの設立も提案。

政府

各国政府は、47兆ドルを超える市場資産規模に及ぶ公共資産の所有者(中央銀行、公的年金基金、ソブリンウェルスファンドなど)であり、より大きな説明責任があり、パリ協定やSDGsとさらに連携させる必要があると指摘。

金融商品

金融商品に関して、SDGs全体にわたるよう多様化し、債券発行の増大を推奨。「持続可能性にリンクされた手段」、「グリーンボンドの基準と原則をプロジェクトファイナンス市場に推進すること」等が含まれる。測定可能で標準化され、KPI に裏打ちされ、成果にリンクした製品の増加を期待。

トークンエクスプレス社のひとこと

GISDとは、国連主導で昨年秋に発足した、グローバル企業のCEO30人で構成される協議体です。バンクオブアメリカ、シティ、サンタンデル、スタンダードチャータード、UBS、アリアンツ等の世界的な金融機関の代表を含みます。

SDGs達成に向けて、世界中の民間資金部門の代表となることが期待されて発足したGISDですが、本日の記事を読む限り、早々に瓦解を始めているようです。民間資金部門がSDGs達成に向けて自分たちができることからやっていこうというスタンスではなく、発足後1年弱で公的部門の関与を求める勧告を行うなどということは、自らの責任の放棄と言えるでしょう。新型コロナウイルス感染症という新要素の登場によって、参加企業たちのSDGsへのモチベーションが下がっているか、そもそも参加者が共有する共通の目的を見いだせなかったか。

いずれにせよ、2030年のSDGsの達成に向けては、かなり暗いニュースと言えると思います。

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ESG投資をめぐる動向、横断的調査の結果(OMFIF)

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

記者:Funds Europe
URL:https://www.funds-europe.com/news/momentum-builds-for-esg-investment-survey-finds
掲載日:8月3日

ニュース内容

BNYメロン社及び公式金融・金融機関フォーラム(Official Monetary and Financial Institutions Forum, OMFIF)が委託した調査によると、世界の公共投資家の90%以上が特定のESG(環境、社会、ガバナンス)投資ポリシーを実施しているか、またはそれらを開発中。

投資家はリスク調整後のリターンの可能性があるため、ESG基準を採用する動機がある。しかし、不十分なデータやESG投資戦略の影響と非財務パフォーマンスの測定の困難さなど、大きな障壁に直面している。

この調査は、ESG投資に関して25項目質問しており、27のソブリンおよび年金基金(運用資産4.72兆ドル(4兆ユーロ))から回答を得た。

調査結果

    • 世界の公共投資家の51%が、ESGの導入または組織内での統合の障壁として不十分なデータを挙げた。
    • 世界の公共投資家の30%は、既存の投資義務は持続可能な投資と両立しないと述べた。
    • 中央銀行の38%はこれを具体的な問題として挙げた。中央銀行の義務と持続可能性をどのように融合させるかについての議論が続いている。
    • 世界の公共投資家の77%が投資プロセスにESGを導入。
    • 世界の公共投資家の42%は、ESG投資プロセスの一環として、最も一般的な方法であるネガティブスクリーニングを採用している。

トークンエクスプレス社のひとこと

国連が提唱したESG投資の概念が10年以上の時を経てここまで世の中に浸透していることに感動を覚えます。(「世界の公共投資家の77%が投資プロセスにESGを導入」)

ご紹介した記事のアンケート結果にもありますが、ESG投資を真剣に考える際の障壁が不十分なデータという指摘はよく言われるものです。注意すべきは、「どのようなデータがあれば十分と言えるか」という点についても、具体化されていないケースが多いことです。

ESG投資が金融業界に受け入れられるために、投資先がもたらす金銭的価値以外の価値を、金銭的価値に影響するものとして勘案するという考え方を持っております。ESG課題は多岐にわたりますので、「多様な事案を金銭的価値に結び付けるデータ」が不可欠ですが、そのデータも多様なものとなります。

盛り上がりを見せるESG投資が、この先も金融業界において主要な考え方の一つになっていくのか、もしくはブームが過ぎ去ってしまうのか。その分水嶺は、こうしたデータの「発見」の有無にかかっていると感じます。

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“責任投資” とブロックチェーンの利用可能性

本記事では、弊社の最近の考えをご紹介します。

最近、金融系や資産運用系のメディアでも目にすることになったESG投資(環境面、社会面、企業統治面に配慮を見せる企業に投資する考え方)ですが、この考え方を国連は、責任投資原則(Principles for Responsible Investment)という名前で提唱し、世界中の企業に賛同・署名を呼び掛けています。

以下の外部記事においてはそのESG投資の更なる普及に際して、投資の社会的または環境的影響に関する信頼できるデータが欠如している点を挙げています。

関連外部記事
仮想通貨よりも有望なESG投資でのブロックチェーン利用
記者:Lee Robertson @ Octo Members Group
掲載日:8月3日

上記の記事は、そのESG投資のための信頼できるデータの確保に、ブロックチェーンが有用であると訴えるものです。ブロックチェーンが持つ、ブロックチェーン上の情報の耐改竄性や、サプライチェーンの上流から下流までの複数の企業が共同でデータを管理できる点などは、客観的に信頼できるデータの保存手段として有用と言えるでしょう。公共のデータベースを提供できる点が、ブロックチェーン技術の強みだからです。

ESGに配慮した経営を行いたい企業は、そうしたブロックチェーンが提供する「公共性」を積極的に活用することで、自身の取り組みの信頼性を獲得することができます。

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米国大手IT企業主導の標準化組織、炭素排出量トークン標準化へ

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典が英語のニュースをご紹介します。

記者:Leo Jakobson @ Modern Consensus
URL:https://modernconsensus.com/technology/interwork-alliance-tokenize-carbon-emissions/
掲載日:7月29日

ニュース内容

    • 非営利のブロックチェーン業界団体であるInterWork Alliance(IWA)が炭素排出量取引プログラムで使用できるブロックチェーン・トークン(訳者注:価値を表象するデータ単位)の基準を制定するワーキンググループ設立を発表。企業が多くの地球温暖化削減計画で使用される炭素排出クレジットを売買しやすくすることを目指している。そのため、特定のブロックチェーンのトークン規格ではなく、任意のプラットフォームで機能するトークンの基準制定を試みている。
    • 太陽光発電や植林イニシアチブなどのグリーンプロジェクトからカーボンオフセット・クレジットを購入できるようにするプログラムは多くあるが、2015年のパリ協定第6条が炭素市場の創設を決定し、はるかに重要性が増した。
    • IWAは、ERC-20(訳者注:ビットコインに次ぐ規模のブロックチェーン”Ethereum”の規格の一つ)等のブロックチェーン・プロトコルではなく、温室効果ガス削減市場に固有の、中立的なトークンの標準に取り組んでいる。IWA規格は、さまざまな業界間、国家間での炭素市場の作成と運営を容易にすることを目的としている。
    • 6月に設立されたIWAは、各プログラムのトークンの「価値」がどこでも等しくなるようにすることを目的として、トークンを補完する認証基準を作成する予定。IWAのメンバーには、アクセンチュア、マイクロソフトなどのブロックチェーン技術を扱う企業や、Digital Asset、Chainlink等の業界企業が含まれる。

トークンエクスプレス社のひとこと

本日ご紹介したInterWork Alliance(IWA)には、2020年6月2日に立ち上げられた新しい団体で、米国の大手IT企業(マイクロソフト、IBM、アクセンチュア等)、ブロックチェーン専門テック企業に加えて、World Economic Forum(WEF)や、Nasdaq等の企業も含まれています。インターネットの黎明期には、特に米国のIT企業たちによる熾烈な「標準化」競争が行われましたが、IWAに参加しているメンバーが米国を代表する企業たちを含んでいることを鑑みると、ブロックチェーンが生み出すトークン(価値を表象するデータ単位)の標準化競争においては、個別企業同士の争いではなく、最初から米国、中国、欧州等の国家レベルの標準化競争となりそうな様相を呈しています。

記事中にもありますERC-20は、トークンの規格としては現状最も普及したもののひとつですが、どこかの企業、または企業群が主導するものではありません。支持者が多いから、最も普及しているという、ブロックチェーンらしい「在野」の規格と言えます。一方のIWAは大企業たちが連合を組んでいるものです。IWAはブロックチェーンの種類にかかわらず利用できる標準を作るとしていますが、既にERC-20の規格でサービスを提供している企業としては、IWAの動きから目を離すことはできないでしょう。そうした意味で、IWAの誕生は、ブロックチェーンの世界に、資本の論理が本格的に介入してきたことを示すものだといえます。

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オーストラリアの地方政府、ブロックチェーン等の規制緩和に意欲

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典が英語のニュースをご紹介します。

記者:Sebastian Sinclair @Coindesk
URL:https://www.coindesk.com/australian-state-treasury-proposes-flexible-regulatory-reform-for-blockchain
掲載日:7月26日

ニュース内容

    • オーストラリアのニューサウスウェールズ州(NSW)の財務省は、ブロックチェーンやその他の新興技術の規制改革を模索している。NSW財務省は、州財政の管理、政策提言、ガバナンスフレームワークの開発、業界分析とアドバイスの提供を担当している。
    • 7月に発表されたNSW財務省発行の報告書では、ブロックチェーンのような技術の活用において遅れをとることに対する州政府の懸念が表明されている。新興技術に関する規制を更新する必要性があり、規制当局が技術の発展に追いつく必要があることを認めた。
    • 社会の変化、技術の進歩、および経済状況に直面する業界のリスクを監視する従来の規制モデルではなく、財務省は「結果ベースの規制アプローチ(outcome-based regulatory approach)」を推奨している。このようなアプローチは、新興技術を用いることにおける企業側の「柔軟性」がある。改革の加速は、新興技術関連企業の制遵守コストの5%削減をもたらし、州経済に40億ドル相当の利益をもたらす可能性があると財務省は示唆している。

トークンエクスプレス社のひとこと

ニューサウスウェールズ州は、オペラハウスで有名なシドニーを州都とする州です。国家ではなく州の単位で新興技術の規制の緩和が検討されているというのは、地方の主権の確立という観点で日本も見習える部分があると感じます。

興味深いのは、記事中に出てくる「結果ベースの規制アプローチ(outcome-based regulatory approach)」という単語です。恥ずかしながら私は初めて聞いた言葉ですが、少し調べてみるとカナダ政府のカナダ食品検査庁(Canadian Food Inspection Agency)が、食品安全に係る規制の一部に結果ベースのアプローチを適用しているようで、その概念を解説しています。

関連外部記事
Outcome-based Regulations Policy
カナダ食品検査庁

上記のサイトにおいて、結果ベースの規制アプローチの例として、カナダ食品検査庁は、食品工場の床に設置しなければならない排水口の数を規制する代わりに、水が溜まった状態ができることそのものを規制する、というものを示しています。

結果ベースの規制アプローチというのは特に目新しい考え方ではないと感じますが、長い間積み上げられてきて形成されている規制体系には、「合成の誤謬」が生じている可能性があり、新しい技術の出現を契機として一回規制体系をリセットする必要性を訴えるのには、耳目をひく考え方かもしれません。

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米国労働省の年金基金運用新規制:規制反対派の意見(SSGA)

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

記者:Attracta Mooney @Financial Times
URL:https://www.ft.com/content/128c5c92-203b-4a87-8f53-315b23018f9a
掲載日:8月1日

ニュース内容

    • 世界で3番目の規模を誇る資産運用会社ステイト・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(State Street Global Advisors, SSGA)は、米国労働省が提示した、年金資産の運用における新たな規制案を批判し、何百万人もの人々の退職所得を危うくしかねないと主張している。(訳者注:年金基金の運用受託者が、純粋に金銭的要因のみに基づいて投資判断を行うべきという考え方に基づく、労働省による規制の強化案。ESG投資商品の組成の条件が厳しくなるとされる。)
    • 「ESG要素の考慮は、良いビジネス慣行であり、(投資先となる企業の)長期的財務パフォーマンスの肝となるものです。我々の顧客のために、長期投資によって得られる価値を追求します。」と、SSGAのLori Heinel女史は言います。
    • SSGAは、インパクト投資(社会貢献の目的をもって行う投資)とESG側面を勘案した投資(気候変動や高額な役員報酬の支払にかかる潜在的財務リスクを考慮した投資)を、労働省が混同しているのではないかと懸念している。その上で、SSGAは、労働省の提案する新規制案は、年金基金運用における「不確実性と法的リスク」を増加させるものだと主張する。
    • 7兆ドル(約740兆円)以上の資産を取り扱う約3,000もの銀行、保険会社、年金基金、およびその他金融機関を監督するニューヨーク州政府金融サービス局は、労働省の新規制案が適用されれば、労働者の退職後所得保証は、守られるよりもむしろ毀損されるだろう、と警告する。

トークンエクスプレス社のひとこと

米国の保守-リベラル対立の局地戦の様相を呈する、年金資金運用に関する労働省の新規制案ですが、その対決の過程で行われる議論を見ると、ESG投資という、国連主導で始まったムーブメントの課題が整理されている感じます。

関連記事
米国労働省の年金基金の投資規制提案、トランプ政権の意図か
(本ブログ6月27日記事)

本日ご紹介した記事において、SSGA側(ESG投資推進派)は、ESG側面を考慮した投資こそ、受託者責任のある年金資金運用者が長期的なリターンを獲得するために実施すべきもの、という立場で、金銭的に定量化ができる部分のみで投資判断を行うことはその責任を全うしないものである、という立場です。

特にSSGAによる興味深い指摘は、「インパクト投資(impact investing)」と「ESG配慮型投資(ESG integration)」を混同すべきではない、というものです。日本においては、この2つを明示的に区別する必要がある場面はまだ登場しておらず、区別が曖昧なまま用いられている例も散見されます。

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ESG投資の旗手が直面:アルゼンチンの債務交渉

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外のニュース(原典英語)をご紹介します。

記者:Peter S. Goodman and Daniel Politi @The New York Times
URL:https://www.nytimes.com/2020/07/31/business/argentina-debt.html
掲載日:7月31日

ニュース内容

    • 米国のブラックロック社(訳者注:2020年6月末時点で7.32兆ドル(約789兆円)を運用する、世界最大の資産運用会社)の創業メンバー兼会長・CEOのローレンス・D・フィンクは、利益がすべてではない、進歩的な資本主義の先駆けとして自身をブランディングしている。投資においては、環境と社会の保護を重視していると標ぼうしている。
    • ブラックロック社が購入したアルゼンチン国債が、5月末に債務不履行に陥った。アルゼンチン政府は、660億ドル(約7兆円)相当の債務免除を求めており、フィンク氏は、自身が標ぼうする「Stakeholder Capitalism(ステークホルダー資本主義)」と伝統的な資産管理者としての義務との板挟みにあっている。アルゼンチンでは新型コロナウイルス感染症が経済的不況の悪化を助長し、貧困は急増しているが、ブラックロック社は政府が提案した和解に反対し、他の債権者を結集してそれを拒否している。
    • フィンク氏は、民主党大統領候補のバイデン氏が大統領になった場合の財務長官候補として2年前に報道された人物で、主要な米国の企業の経営者たちに、社会、雇用、環境面に配慮した経済活動を行うように呼び掛けたこともある。なお、ブラックロック社が管理する投資の3分の2は、世界中の労働者の退職後の貯蓄で構成されている。

トークンエクスプレス社のひとこと

記事が示唆するところでは、フィンク氏のESG配慮姿勢は見せかけのものであると言わんばかりの論調ですが、私としては、的外れで、ひねくれた悪意のある記事だと感じます。

問題は、ブラックロック社がアルゼンチンの国債を購入したこと、そして債務不履行が起きて債務救済に協力するかしないかという決断を迫られメディアに面白がられるところにまで追い詰められたことにあります。すなわち、このような状況に至るまでの同社の決断、打ち手(の不足)にこそ課題があり、資産運用会社としての純粋な経営能力上の問題なのです。直面している選択肢だけをみてESG配慮に対するパフォーマンス(の不足)を非難するのは、表層的であり、いたずらにESG投資のイメージを貶めています。

アルゼンチンの国債が大きなリスクを持つことは長年の常識ともいえることですし、そのリスク-リターンを見たうえでブラックロック社が国債を購入した際に、ESG的な判断があったとは思えません。純粋な金融判断だったでしょう。ことここに至ってESG配慮をもって債務救済をするしない、ではなく、過去の同社の判断プロセスをこそ批判すべきなのです。

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スイス、”クリプトバレー”の挑戦と未来

本記事では、持続可能な社会づくりに関する議論やブロックチェーン活用等について、原典がフランス語のニュースをご紹介します。

メディア:investir.ch
URL:https://www.investir.ch/2020/07/quel-avenir-pour-la-crypto-valley/
掲載日:7月9日

ニュース内容

    • スイスは、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン関連の多くのスタートアップ発祥の地だが、今はコロナウイルスの影響を受けている。しかし、スイス連邦政府は、クリプトバレーの企業を支援することに消極的なようだ。スイスのブロックチェーン関連スタートアップは戦略を再考する必要がある。
    • ツーク州は、数年前から多くのスタートアップを魅了し、その地は”クリプトバレー(Crypto Valley)”と呼ばれている。起業家は、同国における柔軟な立法と財政の枠組みを高く評価している。例えば、同国は、暗号通貨に関連する上場金融商品(Exchange Traded Products(ESP))を受け入れた最初の国の1つだ。またクリプトバレーは暗号通貨に関するものだけでなく、ブロックチェーン分野のスタートアップも多い。
    • 当該産業の集積がある中で、スイス連邦当局がクリプトバレーの企業への支援を拒否することは驚くべきことだ。破産社数は憂慮すべきものとなるだろう。スイスブロックチェーン連盟が2020年3月に実施した調査によると、調査対象企業203社のうち約80%が倒産の危機に瀕している。50の主要企業のうち、1年後も生き残っていると見通しているのは半分に過ぎない。一部の企業は、(クリプト企業向け支援ではなく)スタートアップ向け支援の恩恵を受けるだろうが、予算額は不十分だ。
    • コロナウイルスの流行は、ブロックチェーン技術の有用性を大きく実証してきた。医療データ管理、資金調達、薬物提供における適用は、効果的であることが証明されている。ブロックチェーンへのこの新たな関心を通して、クリプトバレーは自身を再発見し、その手堅さを世界に示すときだ。

トークンエクスプレス社のひとこと

スイスにおいてブロックチェーン関連企業が多く存在するということは、ブロックチェーン系メディアでも度々紹介されます。その産業が今、困難な状況にあるということが本日ご紹介した記事の趣旨ですが、果たして新型コロナウイルス感染症の広がりがその原因かどうかは疑問です。ブロックチェーン関連ビジネス界隈では、持続的に収益をあげられるビジネスモデルの探索がまだ途上であり、目ぼしいものですと暗号資産取引所、コンサルティング、受託開発あたりではないでしょうか。

IT技術が発展し、ウェブ会議が普及した現在であっても、新しい産業が急激に発展するためには、地理的な集積も重要であると私は考えます。それは、知見の共有、人的ネットワークの構築、資金の流通等の観点で、地理的に近いことが産業の発展に有効なためです。

合理的でないビジネスを無理に生き長らえさせる必要はないですが、産業の集積と発展を促す政策は、黎明期のブロックチェーン産業にとっては必要です。

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気候変動に偏りがちな環境問題、生物多様性も重要

本記事では、社会的インパクトと経営管理等について、海外の有識者のオピニオン(原典英語)をご紹介します。

記者:Billy Nauman @ Financial Times
URL:https://www.ft.com/content/100f0c5b-83c5-4e9a-8ad0-89af2ea4a758
掲載日:7月29日

オピニオン内容

    • 森林やサンゴ礁を含む生態系への被害は、世界経済に多大な影響を与えると予測されている。環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)への投資が金融業界全体に広まっているが、ESGの「E」は気候変動を緩和する試みとほぼ同義語となっている。しかし、気候だけでなく生物多様性の損失や生態系の破壊に起因する重大な財務リスクを注視する必要がある。
    • 世界自然保護基金(WWF)によると、森林、草原、サンゴ礁などの生態系への損傷、およびそれに伴う生物多様性の損失により、2050年までに世界経済が約10兆ドル損失する可能性がある。損失は、作物収量と漁獲量の減少、洪水やその他の自然災害のリスク増大に起因する。
    • 投資家や企業は、自然界から得られる利益に値段を付けることにたびたび失敗する。それは主にデータと測定基準の欠如に起因する。気候変動は、「二酸化炭素(CO2)換算」など温室効果ガス排出を定量化する標準方法があるが、生物多様性に関しては、同様の測定基準がない。
    • 私たちは生態系の生物多様性からさまざまな方法で恩恵を受けているが、これらの利益にお金を払っていないため、価格を設定する習慣がない。現在、マイクロソフトなどの企業や、国連環境計画の金融イニシアチブ(UNEP FI)などの組織が、人間や企業が自然界から受ける価値を定量化するプロジェクトを立ち上げている。また、UNEP FIは、英国やスイスの政府、WWFなどと協力して、自然関連の財務情報開示に関するタスクフォース策定を発表しており、今後、自然の価値設定や財務関連の指標設定が進んでいく可能性がある。

トークンエクスプレス社のひとこと

何かを評価する際、特に複数の選択肢の比較を不特定多数に示す必要がある場合に、定量化された指標が必要になります。この指標化において、金銭価値は、万人に価値を伝えるために有効な指標です。

気候変動においては、温室効果ガス排出量、特に二酸化炭素の排出量がその比較検討によく用いれられます。これは、さまざまに存在する事業のほとんどで二酸化炭素を排出するため、各事業が気候変動に与える影響を比較するのに二酸化炭素の排出量が便利だからです。

本日ご紹介した記事のテーマである「生物多様性」については、そうした指標が今後出てくるでしょうか?

私は、生物多様性全般を横断的に評価する指標を定めるということが意義のあることなのか、疑問に感じます。生物多様性においては、その課題も多様であり、各課題の重要度、解決策の甲乙の付け方も多様であるといえます。こうした場合には、指標もそれを利用する個々人の価値観によって大きく異なる可能性があります。

生物多様性においては、横断的な指標を用いることよりも、各課題に対して問題意識を持つ人たちに「刺さる」個別指標を、わかりやすく「デリバリーする」ことが重要であり、そのための「情報開示の標準化」の方が重要だと考えます。

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