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ESGの「E」環境を徹底解説!【評価項目事例付き】

トークンエクスプレス編集部

「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「企業統治(Governance)」に関する取り組みや情報の開示に積極的な企業へ優先的に投資を振り向けるESG投資。その中でも環境に関する取り組みは、なんとなくイメージがしやすいのではないでしょうか?

しかし、実際に自社で取り組もうと思っても、どこから始めればよいのか、取り組みを誰にどのようにアピールするべきなのか、実践的なレベルまで落とし込むとなると意外と難しいのではないでしょうか。

せっかく取り組んでも、ESG格付機関には評価されづらい内容であったり、評価されうる内容なのに、見せ方のせいでうまく伝わらない可能性もあります。

この記事では、そもそもESGの「E」環境とはどのような内容なのか、先進企業の取り組みや格付機関が実際に使用している評価項目を通じて解明し、企業が取り組む際に具体的にどうすればよいのかを考えていきます。

目次

  1. ESGの「E」環境の定義・種類
  2. 「E」環境の位置づけ
  3. 「E」環境の取り組み事例
  4. ESG格付機関が使う評価項目の事例
  5. まとめ

1. ESGの「E」環境の定義・種類

「E」環境が指すもの

まず、ESGにおける「E」環境は、自然環境を指します。企業活動が自然環境に与える影響と、それによって生じ得る企業活動へのリスクを推定し投資判断に勘案することが目的です。

環境に良い取り組みというと二酸化炭素の排出量削減が一番初めに思いつく項目かと思いますが、ESGで評価される項目は多岐にわたり、気候変動だけでなく、大気や水の汚染、原材料やエネルギーなど資源の利用方法、生物多様性などがあげられます。

代表的なカテゴリ分け

自然環境への影響とそのビジネスリスクを測るのには、様々な切り口がありますが、代表的なガイダンスや報告基準の環境に関連する部分をご紹介します。

ISO 26000(社会的責任のガイダンス規格)

6.5 環境
  6.5.3 汚染の予防
  6.5.4 持続可能な資源の利用
  6.5.5 気候変動緩和及び適応
  6.5.6 環境保護・生物多様性及び自然生息地の回復

GRI Standards

3. 環境
  301 原材料
  302 エネルギー
  303 水と廃水
  304 生物多様性
  305 大気への排出
  306 廃棄物
  307 環境コンプライアンス
  308 サプライヤーの環境面のアセスメント

2. 「E」環境の位置づけ

ESGとは

おさらいですが、ESG投資とは、「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「企業統治(Governance)」に関する取り組みや情報の開示に積極的な企業へ優先的に投資を振り向ける投資手法です。逆に、このような投資を引き付けるためには、これら3分野に配慮して経営するESG経営が必要になります。

そもそもESG経営が、労力をかけて取り組むに値するのか、なぜ拡大しているのか、ESG投資の規模はどの程度なのかについてはコチラの記事で解説 しています。

「E」環境に関する世界の潮流

アセットマネージャーの優先順位

ESG情報を投資判断に利用するといっても、実際にアセットマネージャーは、ESGそれぞれの項目をどのように勘案しているのでしょうか?
米資産運用大手で、資産運用にかんする調査でも有名なRussel社の調査(日本を含む世界中のアセットマネージャー400名に対して毎年実施)によれば、ここ3年間を通じてガバナンスを最重要視しているアセットマネージャーが8割以上と、最も多いことが分かります。
しかし、環境分野についても、着々と増加しており、2018年時点では5%であったのが、2020年になって13%まで増加しています。

2020 Annual ESG Manager Survey のデータに基づき筆者作成。

TCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース)提言

ESGの3分野の中でも、「E」環境は、上記のように多様なカテゴリにまたがっており、千差万別な取り組みがなされている分野と言えるでしょう。取り組みが多いからこそ開示方法も様々あり、情報開示する企業にとっては悩みの種のひとつです。

環境の中でも、気候変動に関しては、世界統一の開示基準としての地位を確立し始めているものとしてTCFD提言をあげることが出来ます。

TCFDとは、「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures) 」のことです。これは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)が、産業主導型タスクフォースとして設立しました。

ESG投資の目的は、前述のとおり、そもそも地球環境や人権など社会課題解決が第一目的ではなく、あくまで投資する側にとってリスクになる要素を避ける、あるいはリスク低減を企業に促すことです。このTCFDの設立目的は、まさに、投資家、貸付業者、保険会社などが、各企業の気候変動関連リスクを理解するうえで役立つような、気候関連財務情報開示方法を開発することでした。

TCFDは2017年6月に、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する下記の項目について開示することを推奨する提言を発表しました。

現状では、任意開示ですが、EU圏を中心に、中国等でも、気候関連情報の開示義務化 への動きがみられます。フランスでは2016年12月末以来 、エネルギー移行法第173条で、上場企業、銀行や機関投資家等の、気候関連の情報開示が義務付けられており、当該内容をTCFD提言に連動させることも検討されており、ESG情報の中でも、環境、気候関連の情報開示基準としての地位を確立していると言えます。

TCFD提言の4分野
  1. ガバナンス(Governance)
    a) 気候関連のリスクおよび機会についての取締役会による監視体制
    b) 気候関連のリスクおよび機会を評価・管理する上での経営者の役割
  2. 戦略(Strategy)
    a) 組織が識別した、短 期・中期・長期の気候関連のリスクおよび機会
    b) 気候関連のリスクおよび機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響
    c) 2℃以下シナリオを含む、さまざまな気候関連シナリオに基づく検討を踏まえて、組織の戦略のレジリエンス
  3. リスク管理(Risk Management)
    a) 組織が気候関連リスクを識別・評価するプロセス
    b) 組織が気候関連リスクを管理するプロセス
    c) 組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理にどのように統合されているか
  4. 指標と目標(Metrics and Targets)
    a) 組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスクおよび機会を評価する際に用いる指標
    b) スコープ1、スコープ2および当てはまる場合はスコープ3※の温室効果ガス(GHG)排出量と、その関連リスク
    c) 組織が気候関連リスクおよび機会を管理するために用いる目標、および目標に対する実績
    ※サプライチェーン排出量(スコープ1,2,3)に関しては、こちらを参照

3. 「E」環境の取り組み事例

それでは、実際に、企業はどのようにESGのE「環境」に取り組めばよいのでしょうか?実際に良い評価を得ている企業の事例を通して探ってみましょう。

環境評価で定評があり、上述のアセットマネージャーが参考にする情報でも上位にあげられるCDPトリプルA評価 (「気候変動」「森林」「水セキュリティ」の全3分野でAリスト入りすること)している企業の中から、海外企業と日本企業を1社ずつの具体的な事例として、ダノンと花王を見ていきましょう。
CDPがトリプルA評価を付している企業は、全世界で10社しかありません。

CDPによるトリプルA評価を得た企業10社(2020年版)


海外事例

ダノン(Danone) (フランス)

ダノンのESG評価

仏食品大手のダノンは日本でもヨーグルトで知られています。Danoneは後述するCDPによる評価で、トリプルA評価を得ています。MCSIによるESG評価もAAAで、食品業界に関係する環境分野のキーイシュー4種のうち、3つをLEADER(緑)、1つをAVERAGE(黄)という評価を受けています(2020年7月時点 )。

MSCIによるダノンのESG評価

ダノンは、地球温暖化カテゴリの「製品カーボンフットプリント」、自然環境カテゴリの「水資源枯渇」及び「責任ある原材料調達(環境)」はLEADER(緑)評価、廃棄物管理カテゴリの包装材廃棄物がAVERAGE(黄)評価を得ています。

ダノンの環境関連情報開示方法
年次報告書

ダノンの年次報告書2019(p.18-19)では、気候変動、環境再生型農業、水資源保護への責任(Water Stewerdship)、循環型経済の4項目について、独自に設定した目標とその2019年時点での達成状況を分かりやすく数字であらわしています。

この項目立ては、特段どこかの機関が設定した分類法に従っているわけではありません。ダノンが独自に自社に関連が深く、貢献できる、するべき分野を設定したのでしょう。「水資源保護への責任」は、現行頻繁に用いられている用語としては、「水利用」や「水資源管理」がありますが、スチュワードシップという利用に責任を伴っていることを示す用語を使っていることが特徴的です。数年後にはこの用語法が当たり前になっているかもしれませんね。

※Danone Annual Report 2019より抜粋。
データブック

年次報告書には、大まかな目標達成状況だけを記載していますが、別に詳細なデータを公表しています。

「追加的」 財務情報データ(extra financial data, 一般的にESG情報を指す言葉であるnon financial data と言わないところにも哲学を感じます)は25ページに及ぶPDFファイルで、1-8ページは環境関連データを記載しています。こちらは、それぞれ小項目について、単位や2018年実績との比較、目標年と目標数値、第三者機関による保証有無、GRIスタンダードなどの国際規格との対照などを記載しています。

例えば「循環型経済」の項目には、製品パッケージ、産業廃棄物、製造パッケージ、製造食料廃棄、サプライチェーン上の食料廃棄のサブ項目に分けて、それぞれについて細かく5-7のデータを開示しています。

「製品パッケージ」のサブ項目では、ダノンが使用したプラスチック量(トン)や再利用・リサイクル・生分解可能なプラスチックの割合(%)が開示されている。2018年と比較すると、使用プラスチック量は749,000トンから800,000トンに増加し、リサイクル可能なプラスチックの割合も、87%から81%に減っており、2025の100%目標から遠ざかっています。しかし、実際にリサイクルされたプラスチックを製品パッケージに使用している率は、2018年の6%から10.6%に大幅増加し、2025年の25%達成目標に近づいています。

※Danone exhaustive extra financial data 2019 より抜粋。

その他、家電大手HP 社(米国)や食品大手Associated British Foods社(英国)も積極的に数字を開示しており、参考になるかもしれません。

日本事例

花王

花王のESG評価

花王もCDPでトリプルA評価を受けています。日本企業では花王と不二製油グループの2社のみです。MSCIからは、AAの評価を受けています(2020年7月時点 )。

花王が属する家庭用消費財業界で環境関連のキーイシュー3種のうち、製品カーボンフットプリントと原材料調達(環境)の2つはLEADER(緑)、パッケージ素材及び廃棄物については、LAGGARD(赤)評価を受けています。

MCSIによる花王のESG評価
花王のESG情報公開状況

花王は、自社のESG戦略を「Kirei Lifestyle Plan」と策定し2030年までの達成目標を掲げています。全225ページに及ぶ大著のプログレスレポートの中で詳説しています。環境分野(p.82-132)では、脱炭素、ごみゼロ、水保全、大気及び水質汚染防止の4項目で目標値、2019年実績を開示しています。

Kao Kirei Lyfestyle Plan Progress Report 2020 より抜粋(p.21)。

例えば水保全の項目を見てみると、「製品ライフサイクル全体の水使用量の推移」を、2005年の基準年、2015-2019年の実績値とともに示しています(p.121)。2016年にいったん水使用量が増加したものの、2017年以降順調に削減していっている状況が読み解けます。

花王も自社のマテリアリティを独自に設定し目標を掲げて報告していますが、上述の国際的に利用されている基準との対照表 を用意しています。これにより、国際的な基準を用いて採点している格付機関などが、必要情報を迷わず見つけることができます。

その他、不二製油グループ 住友化学キャノン もESG情報の開示に積極的ですので、参考になるかもしれません

4. ESG格付機関が使う評価項目の事例

海外と日本で、環境に関する取り組みが世界的に評価されている企業の取り組みと報告の仕方を見てきました。しかし、一般的な企業では自社で実際に取り組みを始めようと思っても、最初からここまで網羅的にできないですよね。
ここからは、実際にESG格付機関が、ESG評価を付すときに使っている項目を見ていきましょう。自社の活動に関わるが深く、取り組みをはじめる分野を見つけるヒントが得られるかもしれません。

各格付機関の特徴などは、こちらの記事で詳述 していますのでご参照ください。

格付機関の環境評価項目事例【海外】

FTSE
  • 生物多様性
  • 気候変動
  • 汚染と資源
  • 水使用
MSCI
  • 地球温暖化
    - 二酸化炭素排出
    - 製品カーボンフットプリント
    - 環境配慮型融資
    - 温暖化保険リスク
  • 自然環境
    - 水資源枯渇
    - 生物多様性と土地利用
    - 責任ある原材料調達(環境)
  • 廃棄物管理
    - 有害物質と廃棄物管理
    - 包装材廃棄物
    - 家電廃棄物
  • 環境市場機会
    - クリーンテクノロジー
    - グリーンビルディング
    - 再生可能エネルギー
Refinitiv
  • 大気への排出
    項目例)CO2排出量、廃棄物リサイクル率、危険廃棄物量、水質汚染、環境関連投資、排出量ポリシーの有無、排出量目標の有無、生物多様性への影響の報告の有無、排出権取引の有無、オゾン破壊物質量、石油等流出等
  • イノベーション
    項目例)環境配慮型商品の有無、騒音軽減関連商品の有無、認証取得木材の使用比率、有機関連商品の有無、農薬関連商品の有無、クリーンエネルギー関連商品の有無、水リサイクル等水効率関連商品の有無、赤道原則への署名、化石燃料からの撤退戦略の有無等
  • 資源利用
    項目例)環境専門部署の有無、水及びエネルギー効率向上に関するポリシー及び目標の有無、持続可能な包装に関するポリシーの有無、サプライチェーンを含んだ環境負荷削減努力ポリシーの有無、リサイクルあるいは再利用の水量(㎥)、サプライヤーや原材料調達選定時の環境要件(ISO 14000、エネルギー消費等)の有無、サプライヤーの環境パフォーマンス調査の有無等
CDP (※上述のTCFD提言に基づいた質問構成。)
  • 気候変動
    - ガバナンス
    - リスクと機会
    - 事業戦略
    - 目標と実績
    - 排出量算定
    - 排出量データ
    - 排出量内訳
    - エネルギー
    - 追加指標
    - 検証
    - カーボンプライシング
    - 協働
    - その他の土地管理影響
  • 森林
    - 現在の状態
    - 手順
    - 機会
    - ガバナンス
    - 事業戦略
    - 実践
    - 検証
    - 障壁と課題
    - サプライチェーン
  • 水セキュリティ
    - 現在の状態
    - 事業への影響
    - 手続き
    - リスクと機会
    - 施設レベルの水報告
    -ガバナンス
    - 事業戦略
    - 定量的目標
    - 相関とトレードオフ
    - 検証
    - サプライチェーン

格付機関の環境評価項目事例【日本】

東洋経済
  • 環境担当部署の有無
  • 環境担当役員の有無
  • 同役員の担当職域
  • 環境方針文書の有無
  • 環境会計の有無
  • 同会計における費用と効果の把握状況
  • 同会計の公開状況
  • パフォーマンスの開示状況
  • 環境監査の実施状況
  • ISO14001取得体制
  • ISO14001取得率(国内・海外)
  • グリーン購入体制
  • 事務用品等のグリーン購入比率
  • 原材料のグリーン調達
  • 環境ラベリング
  • 土壌・地下水の汚染状況把握
  • 水問題の認識
  • 環境関連法令違反の有無
  • 環境問題を引き起こす事故・汚染の有無
  • CO2排出量等削減への中期計画の有無
  • スコープ3
  • 2017年度の環境目標・実績
  • 気候変動への対応の取り組み
  • 再生可能エネルギーの導入
  • 環境関連の表彰歴
  • 環境ビジネスへの取り組み
  • 生物多様性保全への取り組み
  • 生物多様性保全プロジェクトへの支出額

まとめ

いかがでしたでしょうか?
世界的にも流行し、資金流入が加速しているESG投資ですが、実際に取り組みをはじめるには、どうすればよいのか分かりづらい部分も多いと思います。

本記事では、ESGの3分野の中でも「E」環境に着目して、どのような項目で、どのような開示基準があるのか、世界的にも高く評価されている企業の取り組み・開示事例を見ました。実際に大手の格付機関が利用している評価項目事例も詳しく見ていく中で、自社事業に関連が深く、取り組みを始められそうな項目は見つかりましたか?

格付機関が使う評価項目は、あくまで取り組みのヒントを得るためです。ダノンや花王のように、自社事業と社会課題の関わりを十分に分析し、独自に重要課題、目標を設定し、きちんと数値の推移が計測できるような体制を構築することが肝要です。

そして、取り組みの進捗状況を、既存の国際規格や基準と照合しやすいかたちで公表する必要があります。ダノンも花王も、独自の項目立てで報告書を執筆しつつも、対照表を用意していました。さらに、両者とも、全ての指標が順調に改善されていたわけではありませんでした。目標達成への道のりを、たとえ途中で指標が悪くなることがあっても開示し続け、外部に対する透明性を維持することが重要です。

まずはESG関連情報を開示すること、そして、きちんとした独自分析に基づいた戦略に従って取り組んでいることを公表すること、それ自体が投資家に評価され、投資家から選ばれる企業になり得る時代が到来しています。未来を見据えている会社であることをアピールする材料、つまり長期的な投資をひきだす判断材料になりうるのです。

環境への取り組みは、成果がでるようになるまで時間がかかるものも多いです。しかし、だからこそ自社事業が短期的に財務的利益だけでなく社会課題解決にも資するように再構築し、長期的な目で企業活動を応援してくれるようなESG投資を引き付けてみませんか?

企業が実利あるESG経営を行うには

ESG投資を引き付けるには、逆説的ですが、ESGを目的化しないことが大切です。知見と独自の視点を持つトークンエクスプレス株式会社にご相談下さい。

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