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SDGs私募債とは?企業が活用できる資金調達方法を徹底解説!

トークンエクスプレス編集部

最近、CMや電車の広告でもよく見かけるようになったSDGs。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、世界全体が経済成長と環境保護などを両立させながら、持続的に成長していくことを目指す、国連によって定められた17の目標です。企業がSDGsを活用して資金調達できる方法があるのをご存じですか?

日本では、債券発行により調達した資金をSDGs達成に資する事業に使用するものを、一般的にSDGs債と呼びます。企業が資金調達の方法として利用できるのは、この「SDGs債」と「SDGs私募債」です。「SDGs私募債」は、特に中小企業がアクセスしやすい資金調達の方法です。私募債とは、少数の投資家や金融機関が直接引受する社債のことをいいます。証券会社を通じて広く一般に募集される公募債とは異なります。

本記事では、「SDGs私募債」の概要と日本・海外の事例、課題について解説します!

目次

  1. SDGs債とは?
  2. SDGs私募債とは?
  3. 企業がSDGs私募債を活用するメリット
  4. SDGs私募債発行事例
  5. SDGs私募債の課題と向かうべき方向性
  6. まとめ

1. SDGs債とは?

SDGs債とは、調達資金がSDGsに貢献する事業に充当される債券の総称です。プロジェクト型で、環境系のグリーンボンド、社会系のソーシャルボンド、双方対象にできるサステナビリティボンドなど、これらはまとめて、SDGs債に含まれます。

日本証券業協会によると、国内で公募されたSDGs債の発行額と発行件数は、2016年の450件から2020年の15,000件近くまで急増しています(2020年は1月~9月の起債分)。グリーンボンドに関して詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

日本国内で公募されたSDGs債の発行額・発行件数の推移
日本証券業協会「SDGs債の発行状況」(最終アクセス:2020年12月20日)

SDGs債の中でもソーシャルボンドは主に、独立行政法人国際協力機構(JICA)や独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)などの行政法人が多く発行しています。近年では民間企業も参入し始めており、2019年には交通インフラ分野の民間企業によってソーシャルボンドが発行されています。今後は、教育・ヘルス・インフラ分野を中心に、民間企業による発行が増えていくことが期待されています。

また、世界全体の債券(SDGs債に限らない)の中で日本が占める割合は、2017年以降一定して12%程度ですが、世界全体のSDGs債のうち、日本が占める割合は、2017年の1%から2019年の4%に増加するなど、日本の存在感は着実に増してきています。

SDGs債の規模

※参考資料
森川、國吉(2020)「SDGs債の普及に向けて」日本証券業協会

2. SDGs私募債とは?

SDGs私募債は、その性質から「内容型」と「寄付型」の2つに分けることが出来ます。2つの性質を併せ持つタイプもあります。

内容型寄付型
調達資金の使途限定(SDGs達成に貢献するような事業型、エコ認証等を取得している企業の運転資金・設備投資)非限定(SDGsに貢献するか否かは問わず運転資金や設備資金に利用可能)
SDGs達成への貢献方法調達資金で実施される事業自体が貢献債券発行手数料の一部を、SDGs達成に貢献する活動を実施する別の団体等へ寄付
SDGsのグローバルスタンダードな債券×
金利の優遇
※実際に私募債を募集している銀行等のWebサイトの情報より弊社作成。

内容型

公的認証を得ている企業に対して「エコ私募債」発行

みずほ銀行北陸銀行福井銀行南都銀行などは、環境配慮に取り組む企業を対象に、通常の私募債より発行条件を優遇する「エコ私募債」または「グリーン私募債」を発行しています。対象は適債基準を満たし、かつISO14001エコアクション21等の公的認証を得ている企業です。ISO14001、エコアクション21とは、ともに、環境マネジメントシステムの種類です。

調達した資金の使途は、銀行によって異なりますが、グリーンプロジェクト以外でも運転資金や設備投資に使える場合があります。環境に配慮した活動のためにプロジェクト型で発行する場合もあります。この場合、性質は上述のグリーンボンドと似ていますね。

寄付型

寄付型では、債券を発行する企業から、銀行が受け取る手数料の一部をSDGs達成に資する活動をしている団体に寄付や寄贈を行います。日本ではこのタイプの商品が主に、SDGs私募債と呼ばれています。

特に、地方銀行の取り組みの場合、地域に根差した活動をしている教育機関や地方行政、医療機関などに寄付されるケースが多いです。

銀行によって、多少の寄付額割合の差や寄付先の選定方法の違いはありますが、比較的一般的なものとしてりそなグループのSDGs推進私募債を例にご紹介します。

出所:りそな銀行「SDGs推進私募債」(最終アクセス:2020年12月20日)

こちらのSDGs推進私募債の商品においては、企業がまずはじめに、銀行に対してSDGs私募債発行の希望を伝え、寄付先を指定します。りそな銀行の場合、寄付先は12の研究・教育機関、開発援助機関、スポーツ推進団体などの中から企業が選ぶことができます。その後、企業は私募債の発行を受け、手数料を銀行に支払います。

りそな銀行は、2018年6年からCSR(Cooperate Social Responsibility:企業の社会責任)私募債の発行を開始し、2019年から名前をSDGs私募債に変更し、継続しています。2019年6月から11月の間に600以上の企業が、りそな銀行にてSDGs促進私募債を発行しました。

横浜銀行は、2018年から神奈川県と協定を結び、SDGs私募債の発行額の0.1%を県関連団体のSDGs推進に資する取り組みに寄付しています。2019年12月の寄付では、2019年4月から9月までの発行総額59億3000万円の0.1%にあたる593万円が神奈川県内の5団体に寄付されました。

横浜銀行のSDGs私募債発行企業一覧はこちらからご覧いただけます

3. 企業がSDGs私募債を活用するメリット

企業がSDGs私募債を活用するメリットは主に3つあります。

  • イメージ向上
  • 長期かつ安定的な資金の確保
  • 節税効果

イメージ向上で人材確保、地域との繋がりも強化

SDGs私募債を通して、教育や医療分野等の団体を支援することで、自社のSDGsに取り組む姿勢を広くアピールすることができます。さらに、地方銀行の多くは地元の団体を寄付対象にしているため、地元での知名度向上や地域との繋がりを強めるきっかけになります。

また、SDGsに取り組むことで優秀な人材の確保にも繋がります。デロイトの2018年ミレニアル年次調査によると、若者世代(ここで言うミレニアル世代とは、1983年1月から1994年12月の間に生まれた人を指します)と雇用主の間の優先課題に大きな乖離があると言います。企業は収益の創出や効率性を優先している一方で、ミレニアル世代は健康や福祉・教育などの地域社会課題の改善は企業の重要な役割だと考えています。つまり、企業がSDGsなど社会の改善に取り組んでいるかどうかが、若者世代が求職活動をする際の判断基準となり得るのです。

※デロイトトーマツ「2018年デロイトミレニアル年次調査」より抜粋

その他、日本企業がSDGsに取り組むメリットについては、こちらの記事をご覧ください。

長期的な安定資金確保

私募債の発行年限は、2020年12月現在、2~7年としている金融機関が多いです。(保証の有無等によって異なります。)金利も固定されているため、安定資金を確保することができます。

節税効果

京葉銀行のWebサイトによれば、社債発行費は発行年度に営業外費用として一括処理する方法と、繰延資産に計上する方法を選択可能のため、節税効果を期待できるとされています。(念のため各社にて税理士等に確認なさることをお勧めします。

4. SDGs私募債発行事例

それでは、実際にどのような企業がSDGs私募債を利用されているのか、日本国内と海外の事例を見ていきましょう!

SDGs私募債と他の取り組みを合わせ、投資家・消費者にアピール!

横浜銀行は、2018年からSDGs私募債を取り扱っており、これにより多くの企業がSDGs私募債を発行してきました。

※<はまぎん> SDGs私募債~未来へ~は、2020年7月に新規取り扱いを終了しており、現在はSDGs医療・福祉応援私募債に切り替わっています。

発行企業一覧を見ると、株式会社AOKIホールディングス、ワタミ株式会社、株式会社ヨコハマ・フーズなど有名企業や地元神奈川県と繋がりの強い企業が見受けられます。では、SDGs私募債発行企業は、私募債をどのように活用し、消費者や他の投資家に対してアピールしているのでしょうか?

再生可能エネルギーを扱っているGPSSエンジニアリングは、2020年3月に<はまぎん> SDGs私募債~未来へ~を発行しました。プレスリリースによると、SDGs私募債で得られた資金は、主に持続可能エネルギー開発等に係る運営資金に充当されるようです。発行金額の0.1%相当を神奈川県のSDGs目標達成に取り組む団体に寄付しました。

これらの取り組みと合わせて、GPSSエンジニアリングはサプライチェーンマネジメントなどを行い、GRESBという不動産・インフラ投資の環境・社会・ガバナンス(ESG)配慮を測る年次のベンチマーク評価をする組織による「アセット評価」で、株式会社日本格付研究所JCRの評価でも、最高ランクの「Green1(F)」を取得しています。

このように、SDGs私募債を発行している企業の中には、自社の他の取り組みと合わせることで、環境・社会・ガバナンスの取り組みにおいて高い評価を取得し、投資家や消費者に広くアピールしている企業もあります。

海外の事例

アルファ・トレイン社(ルクセンブルク他欧州諸国)

アルファ・トレイン社は、グリーン私募債を発行し、燃料効率の良い電車のプロジェクト資金として使用しています。Alpha Trains Groupの一部であるAlpha Trains Finance S.A.は アルファ・トレイン社に対する債権引き受けを検討する際に、客観的な視点で評価するため、Sustainalyticsに審査を依頼しました。

審査は、グリーンボンド原則に則って、①資金の用途、②プロジェクト評価と選考過程、③資金のマネジメント、④報告、という4つの観点から実施されました。結果的に、Alpha Trainsの電気で動く電車の環境への効果が評価され、グリーン私募債が発行されました

5. SDGs私募債の課題と向かうべき方向性

SDGs私募債の再定義

日本で発行されているSDGs私募債と海外のSDGs関連私募債を比較すると、日本のSDGs私募債では、SDGsに貢献する団体への寄付や寄贈という形で独自に発展しています。この形態では、企業活動自体の直接的な環境・社会へのインパクトが見えにくい状況です。一方、海外のグリーン私募債では寄付ではなく、環境に良い技術を採用する企業に対して、事前評価を行った上で私募債を発行し、債権によって調達された資金で実施された事業の事後評価も行っています。

SDGs達成など、社会的に意義のある事業と債券を結びつける試みは、世界においても発展の途上にあります。SDGsの旗振り役である国連のUNDP(国連開発計画)は、SDGs債のガイドラインを策定中で、パブリックコメントを受け付けている状況です。このガイドラインでは、どのような事業を実施する場合に、SDGs債に該当すると判断するのかその基準、プロジェクト実行後の評価方法などが策定されています。

債券発行手数料の一部の寄付という形態での私募債がはたして、どの程度SDGs達成に貢献するのか、寄付の場合、寄付先の団体がどの程度SDGs達成に貢献したのかについて質的・量的評価が必要でしょう。

SDGsを本業に取り入れ、安定的な経営へ繋げる!

日本でもSDGs債の発行額が増えてきているように、社会課題の解決に資する事業への関心と投資意欲が高まっています。その際に、寄付・寄贈という形よりも、SDGsを本業に取り入れ、その事業がいかに社会的価値を生み出しているかのインパクトを数値化・分析するなど、見える形で投資家や消費者に示すことによって、さらなる資金調達と自社ブランドの安定に繋げることができます

まとめ

いかがでしたか?この記事では、近年増加しているSDGs債の中でもSDGs私募債に焦点をあて、その概要と日本・海外での事例を紹介しました。その際に、日本で一般的な寄付・寄贈という形ではなく、SDGs促進の取り組みを自社の本業に取り入れ、社会へのインパクトを目に見える形で示す方が、さらなる投資や消費者の関心を呼び込み、自社ブランドの安定に繋がると指摘をしました。

SDGs私募債を通した寄付・寄贈が決して間違っている訳ではなく、寄付先の教育機関・医療施設では多くの人に役立つ形で資金が有効活用されていると思われます。重要なのは、そうした社会的価値のある事業の社会へのインパクトが、第三者からみても、客観的に評価可能な形で、投資家や消費者に対して公開されていることです。そしてその評価を受けて、社会的価値のある事業への資金流入が積極的に促進される社会が望まれるところです。

SDGsの社会への浸透が進む今、こうした自社事業の社会的価値の見える化を行うことは、将来の自社の安定的経営への投資となります。

SDGsを実利とともに事業に取り込むには

事業の社会的価値を見える化、拡大し、経済的価値とするための具体的打ち手をご提案できる、トークンエクスプレス株式会社にご相談下さい。

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