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SDGsモニタリングとは?経営上必須のKPI設定と開示のカギ

トークンエクスプレス編集部

最近CMでも耳にするようになったSDGs (Sustainable Development Goals, 持続可能な開発目標)。多くの企業がコーポレートサイトにカラフルな目標別のロゴを掲載しています。

しかし、「SDGsを経営に取り込む」といった場合、現在の自社商品や取り組みをSDGsの各項目をあてはめ、統合報告書を作成してESGスコア等の評価を最大化することではありません。

SDGsへしっかりと取り組んでいることを示すためには、各目標への既存事業当てはめ、ロゴの掲載では不十分です。自社本業のどの部分をどのように改善することでSDGs達成に貢献するのか、目標設定、モニタリング、情報開示、フィードバック獲得、目標見直しなどのサイクル体制の確立が必要です。

本記事では、モニタリングに焦点を当てて解説していきます。

そもそもSDGsに取り組むメリット、参考になる取り組み、資金調達の方法等については、下記の記事をご参照ください。

目次

  1. モニタリングとは?SDGs達成と経営をつなぐツール
  2. SDGsモニタリングの事例
  3. SDGs経営のためのKPI設定・モニタリングのポイント
  4. SDGs Compassにおけるモニタリング
  5. まとめ

1. モニタリングとは?SDGs達成と経営をつなぐツール

モニタリングとは?

「モニタリング」は、「何かを検知するために特定の期間において状況を注視」すること、とケンブリッジ辞書に記載されています。

釈迦に説法かもしれませんが、モニタリングという用語は、例えば事業の進捗を管理することで、早期にアラートを把握し、必要な対策をスピーディーに講じることで、事業が計画通りに実施され、完成するよう監理する場合に使用されます。

モニタリングは、何らかの目的を達成するために、必要な情報を指標化し、それを定期的にチェックすることを言い、目標達成のためには必須と言えます。事業に限ったことだけではなく、介護のケアマネジメントなどの場面でも使用され、目標達成が必要なものすべてに対して行われるものです。

したがって、モニタリング自体はSDGsにのみに限ったことではなく、広く事業等の目標までの進捗等を監理するために行われます。

SDGsにおけるモニタリングの必要性

SDGsにおけるモニタリングは、目標達成のためだけに効果があるわけではありません。
目標設定、モニタリング、結果の公開を通じて、投資家やNGO等マルチステークホルダーとのコミュニケーションが可能となります。

  1. 投資家とのコミュニケーション
    本質的にSDGsを取り入れた経営戦略では、SDGsが示す長期的なビジョンで自社がどのように貢献できるかを示し、それがKPI(Key Performance Indicator, 重要評価指標)として企業活動に落とし込まれています。このKPIの達成状況をモニタリングすることで、目標達成までの道のりを前進しているか、確認しながら企業はゴールを目指します。
    長期的ビジョンにおける経営戦略を見せることで説得力が増し、投資家からの理解を得られる可能性が高くなり、資金調達に有利になる場合もあります。詳細については、こちら弊社の記事に記載しています。(SDGs私募債とは?企業が活用できる資金調達の方法を徹底解説!SDGsに取り組む中小企業向け、金融による後押し

  2. NGO等とのコミュニケーション
    モニタリング結果を公開することでNGO等のマルチステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、SDGsにおけるトレンドを自社の経営にいちはやく取り込むことができます。
    一般的に社会課題に対する問題や企業による地球環境のサステナビリティ(持続可能性)への対応要求は、NGO等の動向から端を発する場合が多いと言われています。
    ただ日本企業の場合、NGO等からの要求に対して「アドホック」的に対処している印象があります。ある社会課題が自社のオペレーションや企業価値に影響があることを「突然」NGO等から知らされ、後手後手でそれに対応しなければならない場合があります。地球環境のサステナビリティに対する意識向上がさらに見込まれる状況下、そうした指摘への対応が後手にまわることは、企業経営にとってもコスト増となり、リスクになります。

    表面的にSDGsに取り組むと、NGO等から「SDGsウォッシュ」と指摘を受け、ブランドを棄損することも想定されます。SDGsウォッシングの類型として以下が挙げられており、その中で開示不足という類型があります。「なんとなくSDGs」で流れにのってホームページに載せていると、あとから「SDGsウォッシュ」として認定されてしまうということもあるかもしれません。もし指摘された場合には、自社のレピュテーションに影響があることは明らかです。
SDGsウォッシング5類型

このような状況を回避するためにも、モニタリング結果の公開、そしてNGO等の外部団体とのレポートを通じたコミュニケーションが重要となってきます。
SDGsのモニタリング公開により、目標達成のためのモニタリングのみならず、NGO等とのコミュニケーションを通じた潜在的なリスク低減、トレンドの把握による新たな経営戦略の可能性の発掘ができるようになるのです。

※参考資料
モニターデロイト(2018)「SDGsが問いかける経営の未来」日本経済新聞出版

2. SDGsモニタリングの事例

ユニリーバ社

欧米のサステナビリティ企業は、世界的なアジェンダが大きく叫ばれるようになる前段階からその兆候を把握し、主体となっているNGO等とコミュニケーションを取り、社会課題に対して先行して対応しているように見えます。

ユニリーバもそうした企業の一つといえ、同社の報告書をご紹介します。ちなみに、同社は、PwC社のFTSE350での企業報告書2017にて1位を受賞しています。
同社はビジネスプランとして2010年に「ユニリーバ・サステナブル・リビングプラン(以下、「USLP」)」を価値創出モデルとして策定しています。これは環境負荷を減らしつつ、同社の事業を成長させる事業戦略として作成されており、3つの分野「すこやかな暮らし」「環境負荷の削減」「経済発展」の分野で9つのコミットメントと50以上の数値目標を設けています。
進捗状況は毎年公開され、時代の要請に合わせてコミットメントや達成すべき項目・数値が見直されています。なお、選定されたUSLPに関係する指標は、独立した第三者(PwC社)による限定的保証を受けています。

(出典:ユニリーバUSLP

同社の統合報告書によると、経営層がNGOや政治家とのコミュニケーションを行い、そこでの指摘等を事業モデルの変革に反映させているとのことです。このように、サステナビリティに関する情報や政治動向を早期に把握し、マテリアリティ特定や経営戦略の作成・見直しに活かしています。

また、企業責任委員会がUSLPの進捗、達成状況だけではなく潜在的なリスクをモニタリングしています。つまり、この委員会が目標達成までのモニタリングと、同社のレピュテーションに影響するようなトレンドの変化等を察知し、適切なコミュニケーション方針の作成や、コミュニケーションにより得た情報を経営戦略へフィードバックしています。
また同社では、USLPの状況だけではなく、GRI Indexによる指標等についても公開しています。

帝人株式会社

帝人では、社会課題と同社の強みが交わる「環境価値ソリューション」「安心・安全・防災ソリューション」「少子高齢化・健康志向ソリューション」の領域に関連した売上を75%以上にすることを目標とし、5つのマテリアリティを特定し、KPIを設定しています。 
KPIのモニタリング状況は、統合報告書に公開されており、この報告書はGRIスタンダードを参考に(GRI Indexの公開はない)、財務的指標と同程度の重みを持たせています。

出典:帝人グループ「統合報告書2019

マテリアリティの特定の際には、外部有識者にNPO法人を含み、コミュニケーションを実施しています。とはいえ、外部有識者からは更なるバックキャストによる経営戦略策定について指摘されているようです

3. SDGs経営のためのKPI設定・モニタリングのポイント

バックキャスト(逆算)の発想

SDGsはバックキャスティング(逆算)をして企業の経営戦略に取り込む必要があります。すでにSDGsが解決を目指す課題は明示されています。SDGs時代にマッチした経営を実践するためには、現状で自社できることで対応するということだけではなく、SDGsの世界観にマッチした企業経営への変容、つまり、企業活動の土台ともなる経営モデル全体の再構築が必要です。具体的にいうと、2030年にSDGsの課題が達成されている世界はどのような世界で、その世界において自社はどのような技術、サービスを社会に提供しているかという視点から経営戦略をバックキャストの発想で組み立てる必要があります。
国連は、SDGs策定時に、取り組む主体がバックキャスティングで目標設定が可能となるよう、包括的で野心的な目標を提示し、モニタリングと評価方法について定める手法を採用しています。
したがって、SDGsに取り組むということ自体が、バックキャストによる戦略立案、KPIの設定、そしてそのモニタリングを意味します。

企業価値の向上という視点で取り組む課題を特定→KPIの設定

SDGs時代において、自社の経営戦略上どのような課題に取り組むかを特定するかは、その課題が自社の企業価値の向上あるいは棄損に影響を与えるかどうかで判断する必要があります。
詳しい特定方法は、こちらの弊社記事「マテリアリティ(重要性)とは?企業価値向上にマテリアルな課題を見つける方法」に記載しています。
バックキャストで自社の経営戦略を見直し、取り組む社会的課題、目標を設定し、KPIに落としこむ。言い換えると、目指す世界にどのように到達していくかを設計します。

モニタリング→開示→見直しのサイクル確立

SDGs時代の経営では社会課題を起点に他社と競合します。この競合を制するためにはスピードが求められます。そのため、モニタリング結果を検証し、速やかに事業にフィードバックできる体制が必要です。
急速に変化する社会に対応する課題を取り込む経営戦略をスピーディーに立てる必要があります。モニタリングの際に単純に目標までの数値を追うだけではなく、KPIの達成状況を分析するとともに、モニタリングの都度に収集した外部関係者からの情報等に基づく速やかな事業モデルの修正等を実施するための体制整備が必要です。
このように考えると、モニタリングは、目標までの達成状況を把握すると同時に、社会の潮流を定期的に自社の事業に反映させる役割を果たします

4. SDGs Compassにおけるモニタリング

SDGs Compassとは

企業がSDGsに取り組むときに参考にできるものとしてSDGs Compassがあります。これは、国連開発計画(UNDP)が発行しています。SDGsを企業の戦略の中心に据えるためのツールで、企業の事業にSDGsがもたらす影響も解説されています。SDGsは国連サミットで採択されたものなので、国連機関によって開発されたツールであるSDGs Compassを簡単にご紹介したいと思います。

SDGs Compassの5つのステップ

SDGs Compassの5ステップの詳細はこちらにゆずりますが、簡単にご説明すると、以下のような流れになります。

  1. SDGsを理解する
    SDGsについて知り、企業活動にとってSDGsがもたらす機会と責任を理解することが、SDGsを経営戦略に活かす最初のステップです。言われてみれば当然のことなのですが、周囲の雰囲気に流されて「なんとなくSDGs」に陥らないようにするためには、SDGsを知ることが大前提です。

  2. 優先課題を決定する
    優先課題を決定するために、まずバリューチェンをマッピングし、影響領域を特定し、その領域に対して企業が与えている影響を図るために指標を選択、データ収集します。SDGs Compassのウェブサイトに事業指標一覧が掲載されていますが、独自の指標を用いても構いません。データ収集が終わったら、その結果に基づき優先課題を特定します。

  3. 目標を設定する
    決定した優先課題から自社が対象とする範囲を決定し、KPIを選択します。ちなみに、この目標に関してはベースラインをどのように設定するか、相対的な数値を目指すのか、絶対的な目標とするのかで目標達成の可能性が大きく変わってくるので留意が必要です。
    目標設定の考え方として、アウトサイドアプローチが挙げられます。これは、世界的な視点から、何が必要かを外部から検討し、それに基づいて目標を設定することにより、企業が現状の達成度と求められる達成度のギャップを埋めていく方法を検討するものです。

  4. 経営へ統合する
    目標設定し、具体的なKPIを設けたあとは、それをどのように中核事業に取り込み、実施部門の業務に組み込むかが必要になってきます。
    企業においては、売り上げ目標、厳格な予算管理、熾烈な競争など取り巻く環境は決して優しいものと言えないでしょう。しかし、従来の企業活動、つまり環境などの持続可能性を二の次にした経営では、SDGsに注目する顧客から選んでもらえない可能性も最近では高まっています。そうした目線でSDGsを経営に統合するとなると、実際の企業活動の実施主体である営業部、管理部等全ての部門からの理解を得つつ、前に進めるしかありません。そのためには経営トップが主導するほかないと言えます。
    例えば、経営主導による部門横断型のプロジェクトとして立ち上げ、部門ごとに濃淡のある目標への関りへの度合いに応じた事業の進め方などを調整し、組織全体として監理し、企業のパフォーマンスに繋げるということが必要かもしれません。
    更に言えば、SDGsの解決に対して企業単体で果たせる効果は限定的であるため、経営者間でのコミュニケーションを通じて、企業間での共同取り組みなどもSDGsの達成には効果的と言えます。

  5. 報告とコミュニケーション
    報告に関しては、SDGsの12.6に「特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する」とされています。
    報告は、企業と外部の間の信頼形成や社会的評価を向上させるだけではなく、持続可能な意思決定プロセスを支援し、組織発展を即し、達成度を向上させ、投資を呼び込むためのツールになっています。
    SDGsにコミットする旨、設定した目標を公表し、定期的に達成状況を外部に公開することで、企業自身にとっても目標達成へのプレッシャーになります。仮に達成できなかったとしても、定期的な情報発信により企業活動の透明性が高まり、外部からの信頼を得ることができます

まとめ

SDGsに関する取り組みのモニタリング、特に経営への統合、目標設定、開示、フィードバックを通じた見直しという、モニタリングをツールとしたサイクルについてご説明しました。
いかがでしたか?モニタリングの価値を改めて見直すことによって、自社のKPIの設定や分析方法について新たな視点が得られたでしょうか。

ぜひ既存事業の各SDGs目標への当てはめではなく、事業戦略の中に位置づけて、企業価値の向上、あるいは棄損を避けるためのリスク管理として、SDGsに取り組んでみてください。

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