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国連PRIが初めて、ESG賛同企業リストから5つを除名

紺野 貴嗣

ESG投資を推進する国際連合(国連)。
その推進方法は、責任投資原則(Principles for Responsible Investment, PRI)と呼ばれる6つの原則を掲げ、それに賛同する企業にはこの原則への署名を依頼する、というものです。署名した企業名は、PRIのウェブサイトにて名前とその概要が掲載されます。

国連が推進するPRIは、ESG投資という考え方の大きな裏付けになっています。ESG格付は世界中で無数に生まれていますが、PRIの署名者は、その中で一番基本的なESGスクリーニングの方法ともいえます。

そのPRIにおいて初めて、署名者リストからの除外という措置が行われました。4つの資産運用会社と、1つの資産保有会社が、署名者から除外されたとロイターは報じています。

関連外部記事
Exclusive: Five groups ousted from U.N.-backed responsible investment list
(5つのグループは国連が推進する責任ある投資家リストから除外された)
記者:Simon Jessop @Reuters
掲載日:9月28日

このことは、ESGの歴史において一つ象徴的な事件だと言えます。その理由を、本記事でご紹介していきます。

目次

  1. PRIはESGのはじまり
  2. 金融業界のESG意識の変化とPRI運営
  3. ESG投資の存在感増による事業会社への影響
  4. まとめ

1. PRIはESGのはじまり

そもそもESG投資という概念は、2006年に国連がPRI(責任投資原則)を提案したことに端を発しています。当時、国際連合事務総長であったコフィー・アナンが金融業界に対して提唱し、現在でもガイドライン的な位置づけとなっています。

機関投資家にとって、ESG投資へ踏み出す最初の一歩とも言える行動がPRIへの署名です。署名した機関投資家やアセットオーナーは、その全資産について、PRIの原則に従って運用していると表明したことになります。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も委託先運用会社にPRIへの署名を促しています。

ちなみに、PRIへの署名に際しては、年会費を支払うことが求められます。

2. 金融業界のESG意識の変化とPRI運営

金融分野として存在感を増すESG投資

上述のように、ESG投資を行っている表明の方法として金融機関がまず行う行動の一つがPRIへの署名ですが、ESG投資への資金流入が増加し続けている中で、PRI署名者が真摯にESG投資を行っているかという点に対する投資家たちからの視線が、厳しさを増しています。

ここ10年程度をみても、ESG投資への注目度は高まる一方です。ESG投資残高は2018年時点で約31兆ドルに達するとされ、2012年の13兆ドルと比較して2.3倍に達しています。直近では、新型コロナ感染症の猛威の中で、さらにESG投資への資金流入が強まっています。

ESG投資への資金流入が増加する要因としては、もちろん環境、社会、ガバナンスに配慮する企業に投資すべきという倫理感の高まりもあるでしょうが、実際には、ESG投資の方が、そうでない投資よりも中長期的なリターンが大きいのではないかという、投資リターン上の優位性を考える人が増えた、ということがあるでしょう。この「ESG投資の方が中長期的に有利だ」という仮説は、それが正しいとする学説も、正しくないとする学説も存在します。しかし、両論存在することで必ずしも誤りではなさそうだ、という観点から、ESG投資に対する資金配分を増やしている投資家も増加しているようです。

PRI署名者は本当にESG投資を真摯に行っているか

上記のような状況において、PRIに署名しているにもかかわらず実態は金銭的利益優先でESG投資を真面目に実施していない金融機関が存在した場合、PRIの信用を損なうのみならず、ESG投資市場全体の信頼を損なう可能性があるため、PRIも冒頭にご紹介したような、署名者の除外という措置を取らざるを得なくなったのです。

すなわち、冒頭にご紹介したニュースは、ESG投資が、国連も含めてムーブメントをつくろうとしていた時代から、一つの金融の分野として存在感を持つ時代、信頼性が確保されるように関係者間で協調すべき時代に移行したことを表しているのです。

3. ESG投資の存在感増による事業会社への影響

ESG投資に対する認識が、以前よりシリアスになってきたことによって、金融機関から投融資を受ける立場である事業会社にはどのような影響があるでしょうか。

直接的には、ESGの取り組みが不十分と市場に見なされた企業の株価は、業績のみから期待される株価水準に到達しなくなります。実際にそうした事例が起きており、以下の記事では、ブラジルに本拠を構える多国籍企業である食肉生産加工業者のJBS S.A.の事例をご紹介しています。

ESG的に問題があるとみなされやすい業種に属する企業は特に要注意です。例えばファスト・ファッションなどは大量生産、大量消費、生産地での劣悪な労働環境等のイメージがつきやすいため、ESG側面での配慮を経営の重要事項として取り組んでいることを外にきちんとアピールしなければ、株価の低迷は一時的なものではなく中長期的なものになりかねません。

4. まとめ

この記事では、2020年9月の国連PRIの署名者の除外というイベントについてご紹介の上、それが暗示するESG投資の金融業界での存在感の増加を指摘しました。また、ESG投資が存在感を増すことによって、事業会社にどのような影響があるかも、端的にご紹介しました。

ESGへの意識の高まりは、金融業界の中だけに閉じたものではなく、世界全体で発生していることです。一般社会での意識の高まりが金融業界を変え、その投資先である事業会社たちの行動も変えつつあります。

事業会社の経営者におかれては、自社と、環境、社会との繋がりを見つめ直し、自社の企業統治(ガバナンス)の状況を常にチェックしながら経営しなければならない時代になりました。それは新たな経営上の負担のように感じられるかもしれませんが、実際にはそれを味方につけて自社の価値向上につなげることも可能です。

ESG配慮をしながら自社の価値向上につなげるためには

社会的価値の見える化と、その拡大による企業価値向上のための具体的な打ち手をご提案できる、トークンエクスプレス株式会社にご相談下さい。

(2020年9月29日初稿リリース)
(2021年2月23日更新)

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