ESG投資に不可欠、格付機関3社+αを徹底解説!

ESG徹底解説シリーズ第2弾へようこそ!
第1弾の記事「ガバナンスとは?ESGの”G”ガバナンス(企業統治)を徹底解説! 」もご覧ください。

ESG経営ESG投資について調べていると格付機関がキーになっていることに気が付くと思います。

現在、世界全体では31兆ドル日本でも231兆円(2018年時点)がESG投資に資金流入しています(Global Sustainable Investment Report 2018, GSIA)。ESG投資というシステムを支える根幹ともいえる、ESG評価とそれを付与する格付機関についての知識は、今後ビジネスパーソンにとって必須と言えるでしょう。

この記事では、

      • 主な格付機関はどこか?
      • 各格付機関はどのようにESG評価をおこなっているのか?
      • 各社のESG評価の結果は、どのように確認できるか?【事例で解説】

という疑問にこたえていきたいと思います。

この記事は、格付機関を説明することを目的としているため、そのシステム自体の問題点には触れません。ESG格付の課題について詳しく知りたい方は以下の記事へどうぞ!

「ESG格付」「ESGランキング」の課題とESGコンサルタント

目次

  1. ESG格付とは?
  2. 主要なESG格付機関3社事例+α
  3. まとめ

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1. ESG格付とは?

ESGとは?

ESGの「E」は「環境(Environment)」、「S」は「社会(Social)」、「G」は「企業統治(Governance) 」をそれぞれ意味しています。

財務面だけでなく、これら3分野へ配慮して経営することをESG経営と呼びます。機関投資家や個人投資家のあいだで、ESG評価の高い企業に投資をふりむけるESG投資が注目を集めています。

ESGに格付機関が不可欠な理由

ある投資家が、ESG評価が高い企業に投資したい!と思っても、実際にどの企業どんな取り組みをしているのか、個別に調べるのは大変な作業です。個別に調べるのは効率が悪いですし、限界があります。

加えて、例えばESGの「E(環境)」への取り組みも、プラスチック包装などを使用する最終消費財の企業と、SNSサイトのようなテック企業では、取り組み方法もその影響も全く違い、直接比較が難しいですね。

このような業種による差異の調整等を通して、多様な企業を同じ尺度で点数付けする格付があると便利です。そこで、投資家が簡便に投資判断にESG要素を取り入れることができるようにするツールとして、ESG格付が開発されたのです。

いまのところESG評価の共通基準は存在せず、各格付機関が、独自の評価方法や分析方法、情報網を使って、格付評価を付し、格付結果を公開したり販売したりしています。

ESG格付と信用格付の違い

格付と聞くと、信用格付を思い浮かべる方もいるかと思います。投資家がそのポートフォリオ構成を検討する際に参考にするという意味でESG格付と信用格付は同じ機能を持っています。しかし、格付結果の利用方法が違います。

信用格付は、債券等の投資先リスクの高低を、様々な要件から「意見」として格付会社が評価するものです。リスクと利回りは基本的に相関していて、高リスク高リターン(格付では低評価)低リスク低リターン(格付では高評価)です。投資家の投資への姿勢によって、どの評価の債券を購入するかが決まってきます。

ESG格付では、基本的にESG評価高い企業がリスク低い「良い」投資先と考えられています。ここでいうリスクは、高リターンとセットになっている訳ではありません。ESG格付結果が、信用格付の結果と同様にAAAやCCCと表示される場合もあるので、誤解しないようにする必要があります。

信用格付とESG格付は、その方法においては共通する部分もあり、実際に、信用格付を提供する大手機関が、ESG格付にも参入しているケースが多いです。本記事でご紹介する格付機関もルーツが信用格付機関であるものが多いです。

ESG格付は利用されているのか

それでは、投資家は実際に投資判断の際にESGを考慮にいれているのでしょうか?

Russel Investment社が行った、全世界(含む日本)のアセットマネージャー400名対象のアンケート調査 では、75%PRI(責任投資原則)署名という形で、ESG要素投資判断に取り入れることを表明しています 。さらに、アセットマネージャーの42%MCSIという格付機関の評価を、37%Sustainalyticsの評価を利用していることが明らかになりました。各機関については次の章でご説明します。

別のESG評価の利用方法として、インデックスファンドの運用における活用があります。インデックスファンドとは、一定のルールに基づいて計算された「指数」と同じ値動きをするように運用される投資信託のことです。ESG投資を行いたい投資家からみれば、ESGの観点から問題がない、もしくは優れたESG経営をしている企業群に投資をしてくれる投資信託があると便利です。その投資家の需要にこたえるために、ESGの観点も取り入れた投資信託が多く組成されていますが、その銘柄選定においてESG格付 が利用されます。

例えば、日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立法人) が2018年以降、S&Pダウ&ジョーンズのS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数シリーズ 、MCSIのジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 及び日本株女性活躍指数(WIN) 、FTSEのBlossom Japan Index の指数を順次採用 しています。

S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数は、東証一部上場企業全社のうち、同業種内で炭素効率性が高い(「温室効果ガス排出量/売上高)が低い)企業と二酸化炭素排出量などに関する情報開示を行っている企業の投資比重(ウエイト)を高めています。MSCIは、MSCIジャパンIMIを構成する企業のうち、時価総額上位500銘柄を親指数とし、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数では、ESG格付結果に基づいて総合的に選別(252社)したり、日本株女性活躍指数(WIN)では、性別多様性指数 を個別に評価した結果をもとに銘柄選別をしています(208社)。FTSEの場合は、FTSE All World Japan Indexの構成銘柄509社のうち、ESG評価結果と業種を勘案して総合的に指数を構成しています(149社)

2. 主要なESG格付機関3社事例+α

この記事では、もともと信用格付を提供していた大手で、ESG格付に参入したような格付機関をご紹介しますが、AIなどのテクノロジーを利用してまったく新しい方法でESG評価 を提供する新しい会社もあります。
ESGにおけるAI技術の利用について詳細を知りたい方は下の記事 もどうぞ!

ESG投資で存在感を増すAIの事例

MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)

沿革・一般

アメリカ合衆国。1998年設立。金融サービス業全般。MSCI指数(世界70ヵ国以上の株式市場をカバー)を、多くの機関投資家や投資信託がベンチマークとして採用している。米大手資産運用会社BlackRockも採用 。ESG評価の付与実績は18年前から。

格付方法

情報源は、政府やNGO等のデータ、企業自身の公開情報、メディアによる報道、企業への聞き取り調査。37のキー・イシューについて、リスクの大きさ(リスク・エクスポージャー)と管理体制の2つの視点から(相対値ではない)絶対的点数を付与。産業カテゴリ(インダストリー)ごとに、考慮するキー・イシューや重み付け(ウエイト)が異なる。同じ産業カテゴリに所属する企業の中での順位によって相対的評価を7段階で付与(AAAからCCCまで)。

格付結果の公表状況

2800社以上の企業のESG格付 について、総合評価及び一部個別評価結果をWebサイト上で公開。各指数 の構成銘柄については、総合評価と重み付け(ウエイト)を公表。MCSIのジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄はESG総合評価及びウエイトを、日本株女性活躍指数(WIN) では、構成銘柄の性別多様性スコアとウエイト を公表。

MSCIのWebサイト 上で、銘柄コードあるいは企業名を入力するとESG格付 が表示されます。

例えばSONYと入れてみると、「ソニー(銘柄コード:6758)」のESG評価AAAと経年変化が表示されます。さらに、同じ家庭用耐久消費財業界カテゴリに所属する企業27社のなかで、上位4%に位置していることが分かります。家庭用耐久消費財業界で重要視されているキー・イシューのうち、「コーポレートガバナンス」及び「化学物質安全性」については緑(平均以上)、労務管理、疑義のある資源調達、「電気電子機器廃棄物」については黄色(平均的)、サプライチェーンにおける労働基準については赤(改善の余地あり)に分類されていることが分かります(2020年10月28日アクセス時点)。

格付結果の購入方法

MSCIでより詳細なESGデータを購入するには、MSCIにお問い合わせ する必要があります。(MSCI Tokyo インデックス関連の問い合わせ先 Index queries: +81 3 5290 1555、被格付企業による問い合わせ先: +81 3 5290 1560)

FTSE Russell

沿革

ロンドン証券取引所(LSE)の子会社。以前は、FTSE4Good指標という名称であったが、現在はFTSE Russell’s ESG Rating。

格付方法

350のインディケーターに対する採点に基づき、14のテーマスコア(各テーマにつき10-35のインディケーター)を設定。テーマスコアに基づきESGの3分野のスコア及び総合スコアを付与。すべて0-5の絶対評価。

格付結果の公表状況

ESG関連インデックスの構成銘柄のみ総合評価及び該当インデックス内でのウエイトが公表。FTSEのBlossom Japan Index の構成銘柄はこちら から。

格付結果の読み方

例えば、MSCIではAAAに分類されていたソニーは、FTSEでは3.9の評価が付されています。FTSEのBloosom Japan Indexで、ソニーは3.4%のウエイトを占めているようです。構成銘柄の表(PDF)では銘柄コード順に並んでいるので、探すときの手がかりにしてみてください。

格付結果の購入方法

FTSEは現在、各Index商品を構成している会社の総合評価しか公表していません。各社の詳細や、Index商品に入っていない会社のデータへアクセスするには、購入 する必要があります。必要なデータ量によって金額が異なるので、FTSEにお問い合わせする必要があります。(FTSE Tokyo + 81 (3) 4563 6346)

Sustainalytics

沿革

本社はオランダ。1992年設立。Morningstar系列。STOXXやMorningstarの株価指数作成に活用されている。

格付方法

「リスクへのエクスポージャー(Exposure、リスクの大きさのこと)」と「どの程度リスクを管理できるか(Management)」を勘案した総合評価を0-100でレーティング。0-10ほぼリスクなし、10-20が低リスク、20-30が中リスク、30-40が高リスク、40以上を重篤なリスクと分類。「管理可能にもかかわらず管理できていないリスク(Management Gap)」も勘案。ストライキやリコール等企業業績にとって「重大なリスク」となりうる項目(Controversy Rating)も随時モニタリングし勘案。

格付結果の公表状況

Webサイト上で総合評価、一部詳細を公開。Exposure(高・中・低)とManagement(強・平均・弱)の3段階評価、同じ産業カテゴリ(インダストリー)に所属する企業内で何番目か、過去の「重大なリスク」となりうる項目の重度を5段階で表示。産業カテゴリ毎にリスト表示も可能。

格付結果の読み方

例えば、ソニーでは、総合評価が13.4低リスクで、同じ耐久消費財業界では203社中7番目。業種混合の13,182社中では469番目にリスクが低い企業と評価されています。類似企業数社とも比較してくれます。日本企業だと、パナソニックが38.4と高リスクに分類されています。

「リスクへさらされている度合(Exposure)」は低・中・高の3段階のうち、低に分類され、「リスクを管理している度合(Management)」についても、強・平均・弱の3段階のうち、強に分類。さらに、ESG項目のうち、ソニーにとって重要(マテリアル)だと認識されているのはコーポレートガバナンスや人的資本などであることも分かります。

最後に、ソニーの「重大なリスク」になり得る過去の出来事のうち、最も重大な出来事でも中程度のリスク(5段階中2番目)であったことが左側に示されています。競争原則に反し、顧客にとって不利になるような事案、サプライチェーンの社会的側面として、従業員の人権が問題になるような事案などが過去にSustainalyticsによって捕捉されていることも分かります。

格付結果の購買方法

Sustainalyticsは、Webサイト上でもかなり詳細な情報を提供していますが、より詳しいデータをAPIなど様々な形態で提供しています。(Sustainalytics Tokyo (+81) 3 4510 7979)

その他の格付機関8選

CDP

2000年設立。イギリス拠点。上記3社と違い、営利企業ではなく国際NPO環境面に特化。各社に送付したアンケートへの回答結果を用いてレーティング。質問項目はすべて公開 。気候変動、水資源、森林保全の3分野についてAからDマイナスの8段階でランク付け。環境面では非常に影響力を持つ。世界525機関投資家運用資産額約96兆ドル)がCDPの、温室効果ガス対策等の情報開示を進めるイニシアチブに賛同。2019年時点で、世界8,400社(内日本企業356社)が回答し、回答企業の時価総額は全世界の時価総額5割を超える。CDP自体はインデックス商品を持たないが、STOXXがCDPのA評価企業で構成される指数を設定している。回答結果は年次レポートで公開。
例えばソニーは、最上クラスのA分類(CDP気候変動レポート2019:日本版 )。

Refinitiv

トムソン・ロイター系。400以上のデータポイントから70種類以上のKPIを算出。環境、社会、ガバナンスの各スコア算出後、ESG不祥事を勘案後、総合評価算出。スコアは0-1で、格付は、A+からD-まで12段階。格付 結果はWeb上での一般公開は無。情報源は、企業自身が発表する情報に加え、NGOや報道機関提供の情報、取引所の開示情報。更新は年に1回。

Bloomberg

他の格付機関が、内容をもとに評価しているのに対し、ブルームバーグESG開示スコアは、情報を開示しているかどうか自体を評価するBloomberg ESG disclosure socreを提供。スコアは一般非公開。既存プラットフォーム「ブルームバーグターミナル」上にESG評価結果 表示機能が追加

ISS-Oekom Corporate Rating

ドイツ拠点。800以上のインディケーターからESGの各ピラーを評価 。各インダストリーでキー・イシューを5つ選定。同じ産業カテゴリに所属する他企業との比較でレーティング。2格付は、A+からD-まで12段階。

Robeco SAM Corporate Sustainability Assessment

スイス拠点。評価結果一般非公開。E「環境」5項目、S「社会」9項目とED「経済」(Economic Dimension)9項目の3分野で評価。一般的にG「ガバナンス」に含まれる項目は、ED「経済」に含まれる。

Vigeo Eiris Sustainability Rating

フランス及びイギリス拠点。330のインディケーターから、41のサブセクターを評価。セクター毎に関連性に応じて重みづけし、6分野(環境、地域社会への貢献、ビジネス行動、人権、ガバナンス、人事)にグループ化。総合評価は、A-Eの5段階評価。評価結果を用いて銘柄構成する指数も作成。評価結果は非公開 。

EcoVadis CSR Rating

フランス拠点。情報源は企業自身の公開情報、オンラインアンケート回答結果に加えて、NGOや政府機関、CDPの評価結果等を利用。4分野(環境、社会、倫理、持続可能な調達)21項目で評価。産業カテゴリによって、21項目のうちどの項目を評価するかが異なる。4分野の重みづけは、産業カテゴリ及び企業規模に応じて異なる。総合評価結果は0-100で表示。

RepRisk

スイス拠点。1998年設立。情報源は、公的機関の公開情報及び利害関係者インタビュー。企業自身が発信する情報は分析対象外。AI及び機械学習を取り入れて格付を構成。主要顧客はAllianzJP Morgan Asset Management。総合評価はAAAからDまで10段階。企業ごとの評価結果表示のサンプル はこちら。

3. まとめ

いかがでしたでしょうか。
様々な格付機関が、それぞれ独自の方法で企業のESG要素評価格付していることが分かっていただけたでしょうか?
結果を一部公表している機関も少しですがあります。ぜひ自社や取引先企業の評価結果を確認してみてください。

取引先のESG評価が高い場合、将来的にサプライチェーン内にいるあなたの企業へ、ESG要素へ取り組むことを要請してくるかもしれません。逆に低い場合も、今後改善していく取り組みの中で、取引先へも改善要請があるかもしれません。

ESG格付は、その評価基準の統一が叫ばれつつ、なかなか進んでいないのが現状です。ESG格付で高い評価を得るために経営戦略を寄せていく必要はありませんが、自社の経営方針持続可能なものにしていくための取り組みが、きちんと格付機関からも評価されたらいいですよね。そのために、主要な格付機関がどのように評価を付けているのか理解しておくことは重要です。

ESG格付の課題について詳しくはこちらの記事もどうぞ。(再掲)

「ESG格付」「ESGランキング」の課題とESGコンサルタント

ESG格付を上手く経営に活かすには…

ご紹介したとおり、ESG格付は格付機関ごとにバラバラに実施されています。そのため、ESG格付を経営に有利に活用しようとするときには、ESGの概念を自社の文脈で解釈し、格付にとらわれずに「社会的価値」を追求することが近道と言えるでしょう。そのためには、経営レベルがコミットする一貫した戦略が必要です。トークンエクスプレス株式会社はその具体的な打ち手をご提案できます。ご関心ある方はぜひ「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバナンスとは?ESGの”G”ガバナンス(企業統治)を徹底解説!

ガバナンスという言葉を聞いたことがありますか?

聞いたことはあるけれど、実際に何を意味するのかわからない、定義はわかるけれどガバナンスを改善するとはどうすればいいのかわからない、という人が多いのではないでしょうか?

環境Environment)」、「社会Social)」、「ガバナンス企業統治)(Governance)」へ配慮している企業に積極的に投資するESG投資の流行によって、ガバナンスという言葉を耳にする機会が増えてきたと思います。

この記事では、

      • そもそもガバナンスとは何か?
      • ESG投資において、ガバナンスをなぜ改善するべきなのか?
      • 「ガバナンス」の指標にはどんなものがあるのか?

という疑問にこたえていきたいと思います。

目次

  1. ガバナンスとは?
  2. ESG投資とは?注目されている理由は?
  3. ESGの中でガバナンスの位置づけ:日本企業はこれから本格化?
  4. 「ガバナンス」の評価項目事例
  5. まとめ

*******************************************

1. ガバナンスとは?

一般的なガバナンスの定義

ESG投資における「ガバナンス(企業統治)」の詳細に入る前に、簡単にガバナンスという言葉についてみていきましょう。

ガバナンス(英語ではGovernance)とは、Governという「統治する、支配する、管理する」という動詞から派生している名詞です。知事のことをgovernorといいますね。同じ語源です。

ガバナンスは意味が広く、人が集まってできている集団・組織の統治、支配、管理の意味で使われます。組織内では、どのような方法であれ、個々人の動きを統率しなければいけません。統率が取れている状態のことを「ガバナンスが効いている」などと表現したりします。

企業におけるガバナンスの定義

企業の文脈では、経営者や取締役会、株主など、企業内の様々なグループについて、その権利役割責任定める枠組みを提供するものを、ガバナンスと呼びます。

ちなみに、企業におけるガバナンスは、コーポレート・ガバナンス企業統治)とも呼ばれ、日本証券取引所グループ(JPX)は、

“会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み“

と定義しています。

参照資料:
JPX「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~ 」2018/6/1

“ガバナンス” と “コンプライアンス” の違い

似た概念としてコンプライアンスという言葉がありますが、違いは何でしょうか?
コンプライアンスは、法令順守と訳されることが多いですが、企業が法律や社会的規範に違反しないこと、規則を守ることを意味します。
ガバナンスは、企業が法律を順守する違反しないような管理体制をつくることを指します。つまり、ガバナンスがしっかりしていれば、おのずとその企業はコンプライアンス違反を犯さないという関係になります。

参考資料:
ガバナンスとコンプライアンスの定義と活用法
情報ガバナンス研究室、2018/11/15

2. ESG投資とは?注目されている理由は?

ESG投資の「G」は今日のテーマの「ガバナンス企業統治)(Governance)」です。残りの「E」「S」はそれぞれ「環境Environment)」、「社会Social)」を意味しています。

財務情報だけでなく、これら3分野へ配慮して経営することを「ESG経営」と呼びます。今、機関投資家や個人投資家のあいだで、ESG評価の高い企業に投資をふりむける「ESG投資」が注目を集めています。

ESG投資が注目される理由

ではなぜESG投資が注目されるのでしょうか?いくつか挙げられますが、主要なものは下記3点でしょう。

リスク低減

ESGの3分野に取り組むと、経営における様々なリスクが低減し、長期的な成長が担保されると言われています。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義成長の持続性など優れた企業特性を持つと考えられているからです。

財務リターン

ESG投資の財務的リターンについては諸説あり、一般的な投資と変わらない という研究結果もあれば、高いリターンを得られるという研究もあり、まだ評価が定まっていないのが現状です。

経済的利益以外への関心の高まり

しかし、パンデミックの後押しも受けて、企業が経済的利益さえ追求していればよいという風潮はすたれ、今後、企業の社会的責任への関心がどんどん強まっていくと考えられています。その先駆けとして、ESG投資が注目されているのです。

ESG投資の市場規模、日本における流行の兆し

注目されている、流行していると言われても漠然としていますよね。具体的に数字や公的機関の動きをみていきましょう。

ESG投資の市場規模、通常投資との比率

世界におけるESG投資の市場規模は、欧州及び北米を中心に、かなりの勢いで伸びています。Global Sustainable Investment Alliance(GSIA, 世界持続的投資連合) によれば、2018年のESG投資総額世界約31兆ドルと2016年比で34%増加 しています。 日本では231兆円で2016年時点から306%増で、後追いで増加傾向が加速していると言えます。
2018年時点で、投資額全体ESG投資占める割合は、オーストラリア/ニュージーランドで63.2%、欧州及びカナダで50%前後、米国でも25.7%になっています。日本では2016年の3.4%から18.3%へと2年間で約15ポイント上昇しています。

日本では2018年からGPIFが採用

日本におけるESG投資の火付け役は、年金積立金管理運用独立法人(GPIF) といえるでしょう。GPIFが2015年に「責任投資原則(PRI) 」に署名したことで流れが変わりました。

GPIFは実際、2018年以降、S&Pダウ&ジョーンズのS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数シリーズ 、MCSIのジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 および日本株女性活躍指数(WIN) 、FTSEのBlossom Japan Index の指数を順次採用し、パッシブ運用としてそのポートフォリオに組み入れています。

金融庁が機関投資家の行動規範にESG要素の勘案を導入

加えて、金融庁も機関投資家へ、非財務情報をしっかりと把握することを求めています。2017年には『責任ある投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」を改訂 し、機関投資家に、投資先企業のESG要素を含む非財務情報等の状況を的確に把握することを義務付けました。

このコードの副題が、「投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために」となっていることからもわかる通り、財務的リターンのみで投資先判断をすることは時代遅れになりつつあります。金融庁は今年2020年3月に同コードを再改訂 し、持続可能性(サステナビリティ)への配慮について更に踏み込んで言及しています。

このように、今後の流れは、確実にESG投資に向いていると言えます

3. ESGの中でガバナンスの位置づけ:日本企業はこれから本格化?

「ガバナンス」を最重要視する投資家は約8割

Russel社の調査結果で、82%投資家が自身の投資判断において、「ガバナンス」を最も重要視していることが明らかになりました。この調査では、日本を含む世界中のアセット・マネージャー400名を対象にアンケート調査を実施しています。
「環境」が13%(2019年比4ポイント増)、「社会」が5%(2019年から変化なし)で、新型コロナウィルスの流行により、「社会」の重要性が高まってきた と言われるにも関わらず、ガバナンスが他を大きくつきはなしてトップを占めています。

2020 Annual ESG Manager Survey のデータに基づき筆者作成。

「ガバナンス」が「環境」「社会」に比べて後回しにされやすい理由

投資家がガバナンスに注目しており、企業にその改善期待があることはご理解いただけたと思います。とはいえ、「企業を健全に経営し不正などのリスクを避ける」といわれても、イメージがわきにくいと思います。具体的には「何」をすればガバナンスが改善されたといえ、ESG的に評価されるのでしょうか?

この想像しづらさが、ESGの他の2分野である「環境」や「社会」に比べて、ガバナンスが後回しにされがちである理由のひとつだと思います。ESG経営に積極的な日本の大企業の経営者でも、「ガバナンス面では何に取り組んでいますか?」という質問には、返答に窮してしまうことがあります。

ESG総合評価は☆☆☆なのにガバナンスのみ課題ありとされる大企業3社

ESG要素の開示に積極的に取り組み、とても高い総合評価を受けている日本企業はいくつかあります。
しかし、その中でもガバナンスだけは低い評価を受けている企業があります。以下に、総合評価は素晴らしい(FTSE及びMSCI)にも関わらず、残念ながらコーポレート・ガバナンスだけ評価が低い企業の例をご紹介します。(MSCIのみ個別評価を一般公開)

銘柄コード 企業名 FTSE総合評価 MSCI総合評価※※ MSCIコーポレート・ガバナンス※※※
9437 NTTドコモ※※※※ 4.2 AAA
6367 ダイキン工業 3.9 AA
8267 イオン 3.7 AA

FTSEの総合評価 は、0-5の絶対評価。評価結果は2020年6月時点。
※※MSCIの総合評価 は、同じ業界に属する企業との相対評価でCCC, B, BB, BBB, A, AA, AAAの7段階相対評価。評価結果は2020年6月時点。
※※MSCIのコーポレート・ガバナンス評価は、緑、黄色、赤の3段階絶対評価。評価結果は2020年10月アクセス時点。
※※※※NTTとの合併発表前の情報。

いかがでしょうか?誰もがよく知る大企業ですが、このあとご紹介する評価指標ではガバナンス体制に課題ありとされてしまっています。

コーポレート・ガバナンスは、企業の体制そのものです。変更するのに多額のお金はかかりませんが、組織が大きくなればなるほど、利害関係者の調整が難しいのでしょう。逆に言えば、「E」や「S」の改善に大々的にリソースを割くことが出来ない比較的中規模の企業にとっては、経営層の決断さえあれば取り組むことが出来る、ねらい目の分野とも言えるのです。

実は取り組みやすい?客観的な指標で示しやすいガバナンス

次の章で見るガバナンスの指標は、委員会などの組織の設置、人事や報酬に関係するものが多いです。経営者さえやる気になれば、取り組みやすく、結果が出るのも早く、客観的な数値でも示しやすいという利点があります。

例えば、「社外取締役の割合」「女性幹部の割合」といったものは、●%という数字が1つ出てきて、解釈の余地がありません。「幹部の報酬の計算方法の開示」も、経営者がやると決めれば今すぐにできますね。

例えば「環境」では、「CO2排出量の削減」が分かりやすい指標の事例です。これに取り組むには、サプライチェーンの洗い出し、どの段階でどれだけ削減できるかの調査、実際に削減するプロジェクトを企画・実行など、着手してから結果がでるまでに数年、十数年単位で時間がかかる可能性があります。特にこれまで対策をとってこなかった企業がいきなり取り組むにはハードルが高く、結果が出るまでにより長い時間がかかってしまうでしょう。

もちろん時間がかかるからといって取り組まなくてよいわけではありません。その対応策として、「環境」や「社会」の比較的時間がかかる項目を改善する取り組みと並行して、「ガバナンス」で結果を出し公表することで、自社がESG経営に積極的に取り組んでいることを早期効率的アピールすることが出来ます

4. 「ガバナンス」の評価項目事例

避けては通れないESG格付

それでは、実際にESG投資を引き付けるためには具体的にどんな項目を改善すればよいのでしょうか?
それを知るためには、ESG格付とは何か、どのような格付機関がどのように各企業のESG評価をつけているのかを理解する必要があります。

ESG格付とは

投資家が、ESGの各分野に積極的に取り組んでいる企業に投資をふりむけたいと思っても、個別企業の取り組みをいちいち調べることは出来ません。そこで、ESG格付機関が登場します。主に財務情報に基づく企業の信用格付を行っている会社が、ESG格付という別の格付体系を用意し、企業の取り組みをそれぞれの評価軸にもとづいて評価しています。その評価結果は公表あるいは販売され、その格付に基づいたインデックス投資商品も存在します。

ESG格付機関とは

日本にもESG格付を実施している機関はありますが、基本的には欧米大手信用格付会社が、ESG格付に参入し、その結果を用いたインデックス投資商品などを販売しているのが現状です。

ESG評価結果は信用できるのか

上述の通り、各格付機関が、独自の手法でESG評価を付与します。計算根拠自体は公開されていることも多いですが、計算のもとになるデータの収集は、機械的なものもあれば、担当者によるインタビューなど主観が入る手法もとられています。
複数の格付機関の評価結果を比較し、結果が6割程度しか相関していない とする調査もあり、ESG評価手法の統一の必要性が叫ばれていますが、実現は長い道のりでしょう。

ESG格付の課題についてより詳しくは、こちらの記事参照 。

「ESG格付」「ESGランキング」の課題とESGコンサルタント

課題含みのESG格付、それのみを自社の取り組みの判断基準にするのは本末転倒ですが、各評価項目をみていくことで、自社ガバナンスの改善のヒントを見つけることはできます。

そこで本記事では、代表的な大手ESG格付機関が、「ガバナンス」項目を評価する際に実際に使用している小項目をご紹介していきます。

ESGの「ガバナンス」評価小項目例【海外の格付機関3社】

次の節で日本の格付機関の例もとりあげますが、やはり主流は海外の格付機関です。今回は、数多くある格付機関の中でも、GPIFが採用しているMSCIとFTSEに加えて、トムソン・ロイター系のRefinitivの3社が実際に利用している評価小項目をご紹介します。

FTSE

      • 腐敗防止
      • 企業統治
      • リスクマネジメント
      • 税の透明性

MSCI

      • コーポレートガバナンス
          • 取締役会構成(Board diversity):監査委員会独立性、取締役会出席率、報酬委員会独立性、多様性(性別)、独立した取締役会議長
          • 報酬(Executive pay)
          • オーナーシップと支配(Ownership and control):単年の取締役選任期間、持ち合い株、1株1議決権(OSOV)、ポイズンピル
          • 会計リスク(accounting):限定付き監査意見
      • 企業行動
          • 企業倫理(Business ethics)
          • 公平な競争(Anti competitive practices)
          • 租税回避(Tax transparency)
          • 汚職と政治不安(Corruption and instability)
          • 財務システムの安定性(Financial system instability)

Refinitive

      • 経営陣
          • 組織体制
          • 独立性
          • 多様性
          • 委員会
          • 報酬
      • 株主
          • 株主の権利
          • 敵対的買収への抵抗 (Tekeover defense)
      • CSR戦略
          • CSR戦略
          • ESG報告及び透明性

日本におけるランキング発表

日本独自の格付といえば、東洋経済社が発表しているCSRランキングESGランキング があります。しかし、この結果に基づいてインデックス・ファンドの構成が変わるわけではないので、影響力はそこまで高くないでしょう。

しかし、就職活動をしている学生などが参考にする 情報のひとつとなるので、優秀な人材を採用したい会社は、東洋経済が何をもとにESGスコアを算出しているのか知っておいて損はありません。

東洋経済CSRランキング評価項目

      • 中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念
      • ステークホルダー・エンゲージメント
      • 活動報告の第三者の関与
      • CSR
          • CSR活動のマテリアリティ設定
          • 担当部署有無
          • CSR担当役員の有無
          • 同役員の担当職域
          • CSR方針の文書化の有無
          • 国内外のCSR関連基準への参加等
      • 内部通報・告発
          • 内部通報・告発窓口(社内・社外)設置
          • 内部通報・告発者の権利保護に関する規定制定
          • 内部通報・告発件数の開示
      • 摘発・不正
          • 公正取引委員会からの排除措置命令等・他
          • 不祥事などによる操業・営業停止
          • コンプライアンスに関わる事件・事故での刑事告発
          • 海外での価格カルテルによる摘発
          • 海外での贈賄による摘発
      • 情報開示
          • 政治献金等の開示
          • 相談役・顧問制度の状況についての開示
      • 企業倫理
          • 企業倫理方針の文書化・公開
          • 倫理行動規定・規範・マニュアルの有無
          • 汚職・贈収賄防止の方針
      • 内部統制
          • 内部統制委員会の設置
          • 内部統制の評価
      • 関連部署の設置
          • IR担当部署の有無
          • 法令順守関連部署の有無
          • 内部監査部門の有無
      • 情報システム
          • セキュリティポリシーの有無
          • セキュリティに関する内部監査の状況
          • セキュリティに関する外部監査の状況
      • プライバシー・ポリシーの有無
      • リスクマネジメント・クライシスマネジメント体制
          • 基本方針
          • 対応マニュアルの有無
          • リスクマネジメント・クライシスマネジメント体制の責任者
          • BCM構築
          • BCP策定
          • リスクマネジメント・クライシスマネジメントの取り組み状況

※東洋経済公表資料より、カテゴリ筆者作成。

そのほかにも、点数をつけることが目的ではありませんが、経産省の「価値共創ガイダンス」 、東京証券取引所の「コーポレート・ガバナンスコード」 、KPMGの「日本企業の統合報告書に関する調査2019」 などが、ガバナンス改善に有用な視点をそれぞれ公開しています

まとめ

いかがでしたでしょうか。
まだ世の中に整理された情報が少なく、取り組もうにも何から手を付ければいいのかよくわからないESGGガバナンス(企業統治)について、格付機関が利用している小項目事例を紹介しました。自社の取り組みへの糸口を見つけられましたか?

格付機関からの評価の向上目的として経営改善を行うのは本末転倒です。そうではなく、自社の経営を持続可能なものにするという目的のために経営改善を行い、結果として、ESG格付機関から高評価を得ることが理想的です。あくまで持続可能な経営の実現のためのヒントとして、格付機関が使う評価項目を参考にしてください。

格付機関によって評価項目や手法がバラバラになりやすいESG格付の中でも比較的共通する部分の多いガバナンス」は、実は取り組みやすい分野だと言えるでしょう。ESGの視点をヒントにして、ぜひチャレンジしてみてください。

ガバナンス改善を収益に結びつけるためには…

ガバナンス改善は、企業の経営層(取締役会など)における改善です。重要なものですが、それだけでは収益は増加しません。収益向上には、経営層「現場」とのつながりの強化、および現場の業務オペレーション「見える化」強化も必須です。ガバナンス改善と同時に現場を強くし、経営層との距離を縮める。トークンエクスプレス株式会社はその具体的な打ち手をご提案できます。ご関心ある方はぜひ「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

 

 

 

 

 

 

グリーンボンド ― ESGにとりくむ企業の打ち手

ESG投資」という言葉を聞いたことがありますか?

ESG投資の「E」「S」「G」はそれぞれ、「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「企業統治(Governance)」の頭文字を意味しています。
ESGに配慮する企業に投資することをESG投資と呼びます。

この記事では、ESGのうち「E」(環境)に特化し、ESG投資を受ける企業の目線で、

      • どうやったらESG投資を呼び込めるの?
      • 具体的なESGの取り組み事例を知りたい!
      • ESG評価を上げるための、取り組みやすい方法はないの?

という疑問にこたえるため、「グリーンボンド」の発行という打ち手を、世界と日本の事例を交えてご紹介していきます。

ESG投資がこれから主流になるらしい・・・とは聞くけれど、漠然としていて自社ビジネスでどのように活かせばいいのかわからない、という方に読んでいただきたい内容です。

目次

  1. ESG投資とグリーンボンドの市場規模
  2. ESG経営としてのグリーンボンド発行
  3. 投資家は何を見ているのか?
  4. まとめ

*******************************************


1. ESG投資とグリーンボンドの市場規模

グリーンボンド(英語でもGreen Bonds)とは、環境配慮事業に使途を限定して発行する債券のことです。この章ではまず、ESG投資グリーンボンドそれぞれの市場規模はどれくらいなのか?今後の成長が見込めるのか?について説明します。

ESG投資の市場規模

少し前の2016年時点の情報になりますが、世界全体の投資額26.3%ESG投資に分類されています
2016年以降も順調に拡大してきたESG投資。新型コロナウイルス感染症の広がりでESG投資はさらに注目を集めていますので、世界的にこれからどんどん伸びていくでしょう。

では、なぜ世界でESG投資が流行し、急拡大しているのでしょうか?
そもそもESG投資とは何なのか、その魅力を少しだけ振り返りましょう。

ESGの各項目に真剣に取り組む企業、ESG評価が高い企業は、企業経営、事業運営における様々なリスクが低減するため、長期的な成長において優れた企業特性を持つと言われています。そうした企業に投資するESG投資は、長期的な経済的リターンが大きい投資と言われます。

欧米においては、新型コロナウイルス感染症流行前からESG投資は流行の兆しを見せていました。しかし、コロナ流行後においてその人気はさらに拍車がかかっています。
これは、ESG関連銘柄や投資商品が、他の一般的なものに比べて、新型コロナ流行に伴う値下がり、いわゆるコロナショックの影響が少なかった、とする調査結果が数多く発表されたためです。(ただし、ESG関連とそれ以外でパフォーマンスに差はないという、反対の調査結果もあります。)

ESG投資は長期的リターンが大きいという見方が、コロナショックの影響の少なさで裏付けられた、と考えた投資家が多かったのです。
そのため、ESG投資への資金流入は今後さらに増えていくものと考えられます。

新型コロナで見えたESG投資の強さ / 企業経営者は何をすべきか

グリーンボンド市場規模推移

日本国内のグリーンボンド発行件数・総額の推移 (2014-2019)

次に、グリーンボンドについてご紹介します。

日本国内の企業等が発行するグリーンボンドは、2017年頃から発行件数及び発行総額、双方について急激に伸びています。2019年時点で、58件、総額約8,232億円のグリーンボンド債券が発行されています。

グリーンボンド発行プラットフォームの情報をもとに筆者作成。

世界のグリーンボンド発行総額の推移 (2007-2019)

世界では、2013年頃から発行総額が徐々に増加しています。2019年時点では、総額2,575億米ドル (1ドル=105円換算で、約27兆円)のグリーンボンド債券が発行されています。

グリーンボンド発行プラットフォームの情報をもとに筆者作成。

ESG投資とグリーンボンド、どちらの市場もかなりのスピードで成長していて、今後も拡大を続けていること、企業にとっては無視できない資金獲得方法になっていくことを理解して頂けたかと思います

2. ESG経営としてのグリーンボンド発行

前章では、ESG投資もグリーンボンド市場も、かなりのスピードで成長していることを感じてもらえたかと思います。本章ではいよいよ、自社へESG投資を呼び込む手法としてのグリーンボンドを、より具体的に解説していきます。

      • グリーンボンドとESG経営の関係?
      • グリーンボンド発行の事例って?【事例6社紹介】
      • グリーンボンド発行のデメリットは?

という疑問に、こたえていきます!

グリーンボンドとESG経営の関係?

ESG経営で無視できないESG評価、その評価基準とは?

ESG投資を呼び込むためのESG経営の基準として「ESG評価」というものがあります。ESG評価が高い企業には、ESG投資が集まります。
では、ESG評価はどのような基準で評価されているのでしょうか?環境対策の点では、CO2排出量の削減などが最初に思いつくかもしれませんが、評価基準はそれだけではありません。

現在のところ、全世界でESG投資が成長しているにもかかわらず、どのようにESGに取り組む企業を評価するのかについての統一基準はありません。大手の格付機関が独自に決定して発表する評価に左右されてしまっているのが現状です。
しかも、格付機関はそれぞれの評価基準を公開しておらず、各機関の格付結果の相関性は6割程度にとどまるという研究もあります。
この現状を憂いて、統一された評価基準の必要性が叫ばれていますが、道のりは平坦ではないでしょう。

ESG投資の世界では「リンゴとオレンジ」の比較に苦労

グリーンボンドはESG経営の手法のひとつ

他方、グリーンボンドは、グリーンボンド原則に則って、様々な情報を公開しなければなりません。しかし、その原則さえクリアしていれば、何が「グリーン」なのかの定義プロジェクトの内容については発行者が自由に規定できることになっています。

そのため、グリーンボンド原則にのっとって設計し、環境面をアピールすることによって、以下のような幅広い分野のプロジェクトをグリーンボンドの対象にすることができます。

グリーンボンドとして認められるカテゴリ例
      • エネルギー
      • 建築
      • 輸送
      • 水管理
      • 廃棄物管理と汚染防止
      • 土地利用、農業、林業などの自然資産
      • 産業とエネルギー集約型の商業
      • 情報技術と通信(ICT)

上記に限らず、環境への負荷低減や環境にポジティブなインパクトを与えるような事業であれば、自社事業の中で自由度高く定義できるのです。

グリーンボンドは、企業がESGに取り組む手段として着手しやすい

上記のとおり、ESG投資にはまだ統一された評価・格付基準がありません
それに対して、グリーンボンドは、「グリーンボンド原則」というかなり細かい規則によって、その透明性を担保する仕組みが整っています。
投資家がESG投資をしたいと思っても、格付機関が発表する企業のESG評価を信用できない場合、既にある程度の信頼性が確立され、リターンも定義されているグリーンボンド債券の購入を選択する可能性は高いといえます。
あとで説明するとおり、手続き的なコストはかかりますが、正当に評価される手段が整っているグリーンボンド債券の発行は、企業経営者にとってESGを経営に取り入れる手段として手軽で有効なものだと言えます。

グリーンボンド発行は効率的?

グリーンボンド発行が、ESG投資を呼び込むための手段として取り組みやすそうであると感じていただけたでしょうか?
ここからは具体的に、国内外における発行事例グリーンボンドのデメリットを見ていきましょう。大企業だけでなく中小企業にとっても、グリーンボンド発行がESG経営の一つの打ち手として効果的・効率的であるとを感じてもらえるかと思います。

グリーンボンド発行事例

グリーンボンドの発行事例を調べると東京都の例がよく出てくると思います。しかし、国や地方自治体の事例は、企業にとってはあまり自社ビジネスへの応用が効きませんよね。
ここでは、企業によるグリーンボンド発行事例をご紹介します。

国内大企業による数十~百億円単位のグリーンボンド発行事例
    • 日立造船
      規模:50億円
      使途:CO2排出量の削減効果が認められるごみ焼却発電施設にかかる資材購入等の費用としての運転資金
    • 三菱地所
      規模:200億円
      使途:「東京駅前常盤橋プロジェクト」A棟建設に関連する支出
国内中小企業における数億円単位のグリーンボンド発行事例
海外事例
    • (米)Starbucks
      規模:5千万米ドル (2016年発行時)
      使途:スターバックスの環境・社会基準を満たしたコーヒー豆の調達、農家への融資等
      ※現在スターバックスは、グリーンボンドに代わり、サステナビリティ・ボンドを発行。
    • (仏)HSBC France SA
      規模:0.38億ユーロ
      使途:エネルギー効率関連事業(ボイラー、ラジエーター、給湯器、太陽熱、コージェネレーション、再生可能エネルギー等)

ひとめで環境対策とわかりやすい使途だけでなく、三菱地所の例のように、あるプロジェクトの環境対策関連支出だけに使うこともできます。スターバックスの例では、原材料の調達にすら利用しており、自社ビジネスの根幹に関わる支出も、設計の仕方次第ではグリーンボンドの対象にできることが分かります。

このように、資金使途は割と自由であること、さらには意外と小規模でもグリーンボンドを発行できることがお分かりいただけましたでしょうか?

グリーンボンド発行のデメリット

これまで、グリーンボンドのメリットをみてきましたが、デメリットはなんでしょうか?

まず、あたりまえですが調達した資金は調達時に計画した「グリーンプロジェクト」にしか使えません。そして、グリーンボンドの発行及び管理には追加コストがかかります。

グリーンボンドを発行するためには、上述したグリーンボンド原則(GBP)を遵守する必要があります。それには、事務手続きや、外部評価、外部報告などのコストがかかります。

ESGの取り組みを行っていることを簡単にアピールできるメリットとこれらのコストをどう判断するかで、グリーンボンド発行に手を付けるか分かれるところでしょう

3. 投資家は何を見ているのか?

ネガティブ・スクリーニング

ESG投資において、ESG投資の適格性を評価する統一基準はないと説明しましたが、それでは投資家はどのようにESG投資をおこなうのでしょうか。

ESG投資にはいくつかの基本的なアプローチはすでに存在します。
中でも、ネガティブ・スクリーニングは必ず行われるといっても過言ではありません。ネガティブ・スクリーニングは、たばこ、アルコール製品、ポルノ、ギャンブル、動物実験、化石燃料、原子力発電などに関連している場合に、投資対象外にするものです。
つまり、企業としては、どんなにESG対策に取り組んでも、上記要素がある場合にはESG投資を呼び込むのが難しくなってしまいます。

財務リスクとグリーンボンド

投資家目線では、気候変動による中長期的な財務リスクに対し、グリーンボンド投資を行うことでリスクヘッジにも繋がると考えられています。また、グリーンボンドは債券ですから、評価基準と投資リターンがはっきりしているため、ESG投資の中では納得感をもって投資しやすいです。グリーンボンドはプロジェクトベースで発行されるため、経済状況や株式市場との価格連動性が低いという考え方もあります。

したがって、分散投資によるリスク低減策としても有効と言えます。自身のポートフォリオの中長期的なリスクを抑えたいと思っている個人・機関投資家はグリーンボンド債券を積極的に評価するのです。

グリーンボンドを取り扱う際の留意点

グリーンボンドは取り組みやすいといいましたが、注意しなければならない点もあります。

グリーンウォッシュという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

実際は環境配慮型ではなかったり、調達資金が適正に環境事業に充当されていなかったりするグリーンボンド債券をグリーウォッシュ債券と呼びます。

軽視できないESG投資の「グリーンウォッシング」:韓国の事例

グリーンボンド原則の一部に定められている「グリーンボンドガイドライン」は自主的で、法的拘束力や罰則はありません
そのため、環境対策のための活動のための債券として募集しておきながら、実際にそうではない活動に資金を使うといった事例もでてきてしまいます。

自社がグリーンボンドを発行した場合、グリーンウォッシュをしていないと外部に示し信頼を得るためには、発行時の外部評価結果だけでなく、対象事業の進捗状況など、投資家が安心できる材料を、ウェブ上などで高頻度タイムリーに発信することが重要です。

報告書関連は年刊のことが多いですが、低コストで頻繁に発行できるプレスリリースなどを活用して情報を提供することで、よりタイムリーに自社の取り組みを評価してもらえます。
その際、うまくいっていない部分についても公開し、更新するたびに改善しているという変遷を見せることで、長期的目線で検討している投資家によりアピールできます

まとめ、もっと知りたい人は…

ここ数年で急拡大しているESG投資市場に流れている資金を、自社に取り込むための手段の一つとしてグリーンボンドを紹介しました。

ESG評価に比べて、使途とリターンがわかりやすいグリーンボンドは、環境対策を簡単に始めたい企業にも、ESG投資を行いたい機関投資家にとっても利用価値のある手段といえます。

もっと詳しく知りたい方には、以下のウェブサイトが有益です。

環境配慮を含む、事業の社会的価値を向上させるには

グリーンボンド発行においては、事業における環境負荷低減の見込みの算出や、既存の取り組みにおける効果の測定、およびそうした情報の合理的でわかりやすい開示が必要となります。トークンエクスプレス株式会社では、新たな業務負担なくそれらを実現する方法をご提案できます。ご関心ある方はぜひ「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

ESG投資で存在感を増すAIの事例

新型コロナウイルス感染症で、世界は大きく変化しました。

様々な変化の中で、世界の金融業界が注目しているのが「ESG投資」への急激な資金の流入です。

「ESG投資」という言葉を聞いたことはありますか?

ESG投資とは、投資対象がどれほど「儲ける力」をもっているかという視点だけでなく、環境(Environment)社会(Social)へいかに配慮した事業運営をしているか、組織運営の適切性(Governance)も考慮した投資のことを指します。

実は、このESG投資の世界的な盛り上がりは、日本企業、日本のビジネスマンにとっても大きなビジネスチャンスなのです。 このビジネスチャンスをつかむために知っておくべきことを、この記事でご紹介します。

カギは、ESG投資の裏にいる“AI”の存在です。

目次

  1. なぜコロナでESG投資に資金が集まった?
  2. ESG投資におけるESG格付の役割
  3. ESG格付で増加するAIの活用
  4. AIを活用したESG格付の事例
  5. AI活用が進む中で自社がESG高格付を得るための5つの打ち手
  6. まとめ

*******************************************

1.なぜコロナでESG投資に資金が集まった?

ESG投資とは?

ESG投資は、利益だけではなく、例えば以下の事項にきちんと配慮した経営ができている企業に投資しよう、というものです。

ESG投資の評価項目の例

      • 事業が地球環境に与える悪影響をなくそうとしている(環境配慮)
      • 事業が社会における不平等の低減に貢献するものである(社会配慮)
      • 経営陣に対し、多すぎない報酬基準を定めている(企業統治)

なぜコロナで資金が集まる?

ESG投資は、新型コロナ流行前から人気が高まっていましたが、新型コロナ流行によって、企業が従業員への疾病手当金を支給できるようにしているかや、適切な労働条件を提示しているか等が、ESG投資をおこなう投資家にとっての注目ポイントとなりました。こうした、企業が従業員との関係に適切な配慮を行なっているかは、「社会的配慮」として、ESGのSに含まれます。

参考資料:焦点:変わるESG投資、コロナで「E」より「S」が前面に
(REUTERS, 2020年5月19日配信)

新型コロナのなか、一部の投資家たちは、こうした従業員への配慮を行う企業に投資したい、と考えるようになり、ESG投資への関心が高まっています。

コロナ禍で好成績?

また、ESG投資が新型コロナ流行の環境下において、比較的好パフォーマンスを出した、という直接的な理由もあります。

例えば、米国ニューヨークのメディア”Pensions&Investments”によれば、本年4月1日時点での比較で、1年前からESG投資を行なった場合には、投資した額の4.3%の損失で済んだ一方、1年前からESG投資ではない一般的な投資を行なっていた場合には、7.0%もの損を出してしまったことになる、という試算を発表しています。

新型コロナで見えたESG投資の強さ / 企業経営者は何をすべきか

さらに、ESG投資に適格な企業は、一般的なリスク管理能力が高い、という認識が広まり、ESG投資は中長期的に良好なリターン(投資戦績)をもたらすと考えられるようになりました。

持続可能性に配慮した金融がパンデミック下で上手くいっている理由

こうした様々な理由から、新型コロナ流行開始以降、ESG投資への資金流入が急増しています。自社の株式の価格を上げたい、自社への投資に関心を持つ投資家を増やしたい、という企業は、ESGという切り口から、自社事業をとらえなおして外部発信していくという選択肢も有効になってきています

2.ESG投資におけるESG格付の役割

ESG投資の投資先を見つける方法

それでは、ESG投資とは具体的にどのような企業に投資を行うものなのでしょうか?

環境面(E)、社会面(S)に配慮した事業運営を行い、適切な経営を行なっている(G)企業を見つけるにはどうすればいいのでしょうか?

欧米の企業は、”ESG Report”や”Sustainability Report”といった名称で、自社のESGに関する取り組みを積極的に発信しています。

例えば、ESGの取り組みに積極的な、米国小売業大手Krogerは、もはやESGの取り組みは経営の主要な一部といわんばかりの、緻密で詳細なESGレポートを発表しています。

参考資料:Kroger 2020 ESG REPORT

日本企業も最近では、「統合報告書」「サステナブル・レポート」といった名称で、自社のESGの取り組みを発信する事例が増えてきています。例えば伊藤忠商事は、「三方よし」の価値観から、積極的に発信を行なっています。

参考資料:伊藤忠商事 統合レポート2020(オンライン版)

本来であれば、ESG投資を行う投資家は、投資を考えている企業がどの程度ESGにしっかりと取り組んでいるか、1社1社ウェブサイトをみにいって対象企業のESGの取り組みを確認するのが理想的です。

しかし、それをするのはとても大変ですよね?

さらに、ESGに詳しくない人がウェブサイトをみても、その企業が他社との比較において、ESG的にどれほど優れた取り組みをしているかすぐにはわかりません

こうした背景から、ESG投資においては、「ESG格付」と呼ばれる指標を用いて投資を行うことが一般的です。

ESG格付けとは?

ESG格付は、専門の格付業者が、各企業の発信情報を見たり、各企業に質問票を送ったり実際にヒアリングに赴いたりして、格付を決めています。

代表的な格付業者としては、例えば以下の業者が挙げられます。

ESG格付業者の例

      • MSCI(米国モルガン・スタンレー系)
      • RobecoSAM(米国S&Pグローバル系)
      • FTSE Russell’s(ロンドン証券取引所系)

格付けのもとになっている情報は主に英語!?

上記以外にも、多くのESG格付業者が存在しますが、残念ながら現時点では、世界の投資家が注目するのは、欧米の格付業者です。

したがって、英語で発信されている情報をもとに格付が行なわれているのです。

こうしたESG格付業者は、最近ではウェブ上からも、ESG格付に必要な情報を収集しています。したがって、ESG投資家からの自社への投資を獲得したい日本企業は、ウェブ上での英語での発信が重要です

3. ESG格付で増加するAIの活用

企業が発信する情報は古すぎる

ESG格付には多くのデータが必要です。

そうした情報を、格付対象企業が十分に開示していない可能性があります。(特にネガティヴな情報は開示される可能性が低いです。)

また、企業のESGに関する取り組みの公表は、年1回など、頻度が低い場合が多く、もっと頻繁に投資を行う投資家にとっては、最新のデータに基づいたESG格付のほうが利用しやすいのです。

そのため、ESG格付業者は、政府や研究機関NGOが一般公開している情報なども含めて広範な情報源から情報を集めます。インターネット上に情報が多数掲載される現在では、ESG格付業社は、インターネット上から多くの情報を収集します。インターネット上には、膨大な量の情報があるからです。

膨大なネット上の情報を人力で分析しきれない

データを集めた後は、格付業社はそのデータを分析して、個別企業にESG格付を付与していくことになります。

しかし、ここで問題が発生します。

インターネット経由で集めた膨大なデータは、見るだけでも一苦労です。

また、その膨大で広範なデータが、個別企業のESG格付にどのように影響を与えるものか、人力で関連づけるのも大変です。

さらに、格付業社のスタッフが人力でそうした作業を行なった場合、ESG格付判定において、データの利用方法や格付方法の基準に、個人差、主観が含まれてしまう可能性があります。

格付は、全ての対象企業を、全く同じ基準とルールに基づいて付与されなければ使い物になりません。

インターネットを用いて大量のデータが収集できる今、ESG格付業者は、人手に頼ったESG格付業務から脱皮しなければならない状況になりつつあるのです

4. AIを活用したESG格付の事例

こうした状況の中、ESG格付において人の介入を無くし、人工知能”AI”を活用したESG格付を行う格付業者が登場しています。

事例1:Arabesque

Arabesqueは、バークレイズ銀行(Barclays Bank)から2013年に分社して誕生した格付会社です。

多様なデータ源から大量に情報を収集し、AIを用いて7,000を超える米国上場会社のESG格付を、毎日更新しています。

ArabesqueのESG格付の最新版は、サービスを購入しなければ入手できませんが、3か月前の格付であれば、Arabesqueのウェブサイトから閲覧することが可能です。

事例2:Truvalue Labs

AIを活用したESG格付で最も初期から取り組んでいるのは、Truvalue Labsです。

こちらは、その格付において機械学習と自然言語処理を使用して、12を超える言語のメディア出版物、NGOレポート、学術論文、政府機関が発行する報道資料や法的に開示が義務付けられている資料やソーシャルメディアなど、多様な情報源からデータを集めます。

興味深いのは、Truvalue Labsでは、格付対象となる企業から示される広報資料は、ESG格付に一切用いない点です。これは、企業が自ら開示するデータは、部分的で、バイアスがかかっているとTruvalue Labsが考えているためです

5. AI活用が進む中で自社がESG高格付を得るための5つの打ち手

このように人工知能”AI”を活用したESG格付が広がる中で、増加するESG投資の資金を自社に取り込みたい企業の経営者は何をすべきでしょうか?

ポイントは次の5つです。

      1. 自社の存在意義の中への、社会貢献の位置付け
      2. 社会への影響の、低コストなモニタリング体制整備
      3. 社会への影響に関する、日本語と英語での高頻度な開示
      4. 社会への影響に関する、公的機関や研究機関との協働
      5. 社会課題についての情報収集、自社事業の随時見直し

上記5つについて、一つ一つ見ていきましょう。

A. 自社の存在意義の中への、社会貢献の位置付け

これまで見てきたように、投資家の関心がESG投資に向かう中で、ESG投資を自社に取り込もうという企業は、既にESGの考え方を自社の経営方針に組み込み始めています。

ご紹介した伊藤忠商事も、セブンイレブンを展開するセブン&アイホールディングスも、消費財メーカーの花王も、自社の基本的な価値観や社是に結び付けてESGをとらえ、そうした発信をどんどん始めています。

こうしてみると大企業のお話かと思われがちですが、今後、大企業はその取引先にもESGの考え方を持つところを優先的に選択していくようになると考えられています。

実際、セブン&アイホールディングスは、「5つの重点課題」として、「お客様、お取引先を巻き込んだエシカルな社会づくりと資源の持続可能性向上」をかかげ、取引先にもESGの取り組みを求めていくことを示しています。

ESGは、主に格付会社がその評価指標を用意していますが、その評価の仕方は格付会社によってバラバラです。自社を格付会社の評価枠に当てはめていこうとして、表層的に取り組むのではなく、経営方針のまんなかに、社会への貢献をしっかり位置付け、自社が事業を通じてできることから考えていくというアプローチが、無駄が少なく、ESG的にも効果を上げやすい取り組み方です。

B. 社会への影響の、低コストなモニタリング体制整備

ESGの取り組みを行うにあたり、実務上の課題は、そのモニタリング(管理)のコストです。実際にESGに取り組むに当たっては、目標を定め、具体的打ち手を定め、評価指標を定めたうえで、指標をもとに進捗を管理しなくてはなりません。

これを本業と並行して行うことは、規模の大きくない企業にとっては大変なコストです。

対応策としては、通常業務の中で、手間なくESG関連指標を収集できる体制を、社内で整えておくことです。これは、ESG指標を定める際に、実務の業務プロセスをしっかりと見える化し、そのなかでコスト低くデータを取得できる指標を選ぶことで実現できます。

C. 社会への影響に関する、日本語と英語での高頻度な開示

ESG格付にAIが用いられ、インターネット上から常時幅広くデータが収集されていることを既にご紹介しました。

このような環境においては、自社のESGの取り組みを年に一回、パンフレットで紹介するだけでは、ESG投資資金を自社に取り込むための情報開示としては全く不十分です。

ESG格付会社の情報収集は日本語でも行われている可能性はありますが、できるだけ英語版も用意し、プレスリリースなどで高頻度に情報共有を行う必要があります。

このとき、あまり良い成果が出ていない場合もあると思います。

それでも頻度高く開示し、その成果が改善されていく様を開示していくことが重要です。

D. 社会への影響に関する、公的機関や研究機関との協働

ご紹介したTruvalue Labsは、格付対象の会社の開示情報はあえて利用せず、公的な機関の情報を利用するとしています。

こうした情報の客観性を重んじる格付機関が存在することを鑑みれば、ESG関連の発信をしっかり行う場合、第三者的立場を取れる協業先と組んでおくことが有効です。

課題先進国と言われる日本において、企業と一緒に公益のための取り組みを行いたいと考える公的機関は多く存在しますので、企業側でしっかりと取り組みの計画を立てれば、それに賛同し協業してくれる公的機関、研究機関は見つけやすいです。

E. 社会課題についての情報収集、自社事業の随時見直し

有名な社会課題には、少子高齢化や地方の過疎化などがあります。

そうした大きな課題に、一企業ができることは少なさそうだという意見をよく聞きます。

しかしながら、少子高齢化も地方の過疎化も、たくさんの社会課題の集合体であると考えるたらどうでしょうか?

実は企業が自社事業を通じてESG関連活動を行う際に一つの障壁となるのは、自社事業が、社会にもたらしている価値を見過ごしてしまいがちだということです。

大きな社会課題の解決に向けた貢献方法を具体的に考えると、自社の事業を違う角度から見るだけで、すでにESG活動と言えるものだった、という場合があります。

社会課題は「発見」されるものです。こうした「違う角度からの視点」を見つけるために、どのような社会課題が存在するのか、広く意識を向けておくことが重要です

まとめ

この記事では、ESG投資(環境面、社会面への配慮を行い、適切な企業経営を行っている企業への投資)が注目され、新型コロナ流行後にESG投資額が急増する今、そうしたESG投資の資金を自社に取り込みたい企業が何をすべきか、ご紹介しました。

特に、ESG投資においては、格付業者が企業に対して付与するESG格付がキー情報となっており、その格付において、AIが活用されている現状を、具体事例とともにご紹介しました。

記事内でお示しした5つの打ち手を通じて、ESG投資をめぐる資金の流れを、ぜひ自社の経営に取り込んでいきましょう!

社会的価値を用いた経営強化を行うには…

トークンエクスプレス株式会社は、「『社会的価値』を、ビジネスのチカラに。」をスローガンに、企業経営層向けに、社会的価値をもちいた経営強化支援サービスを提供しております。記事内でご紹介した5つの打ち手について、各社様の御事情に合わせた具体的な施策をご提案できます。ご関心ある方はぜひ「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。